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重く熱いアダプターに別れを スマート給電デバイスZoltはなぜ世界を変えるのか

2015年12月25日 07時00分更新

 熱が出て、かさばって、コードが邪魔なACアダプターだが、もしかしたらそろそろなくなる日が本当に近いらしい。不満を解消する米国発のハードウェア製品・Zolt(ゾルト)が日本でも発売予定となっている。

 Zoltはスマート給電システムを有した、充電ハードウェアガジェット。複数デバイスの充電機器を3つのUSBハブで同時に充電できて、サイズも小さく軽量。猛烈な熱を放つレンガブロックのような”ハードな充電器”が当たり前の海外では発売前から評価が高く、発売時にはウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズなどの大手メディアでも取り上げられていた。米国では発売から1週間で4500個を販売し、来年3月までの予約も含めて累計4万個の出荷を予定している。

たとえば3つ持っていた充電器を1つで代替できるのが最大のメリット。

 Zoltの開発・販売を手がけるのは米国カリフォルニア・サンノゼのパワーエレクトロニクススタートアップ・Avogy(アヴォジー)。次世代のパワーデバイスで期待されているGaN(窒化ガリウム)の半導体関連技術が同社の特徴だ。従来のトランジスタから劇的にコスト、サイズ、重量を削減しながら、電力変換システムの効率と信頼性を向上させるシステム、同社いわく「電力技術に革命を起こす破壊的な電力変換装置」の最初のステップとして世の中に出したのが、充電器のZoltらしい。

 開発をリードしたAvogyのDinesh Ramanathan(ディネッシュ・ラマナタン)代表取締役社長CEOは、「給電プラットホームで世界を変える。手始めはチャージャー(充電器)から」と語ってくれた。充電器がなぜ世界を変えるテクノロジーとなるのか。同社の野望をお届けしたい。

AvogyのDinesh Ramanathan(ディネッシュ・ラマナタン)代表取締役社長CEO。

軽く、熱くならず、しかも賢い充電器

 Zoltは7.6×3.3×3.3センチのサイズ、重さ約85グラムの八角柱のデバイスで、USBソケットが3点ついている。頂点に近い最上段のUSBはノートPC専用の充電専用で、残り2つのUSBでタブレットやスマートフォンの充電ができる。リップスティックサイズとリリースに記されているが、実物は日本で言うところのスティックのりサイズと言っていい。

 ポータブルサイズという点で注意してほしいのだが、Zoltは屋外で給電できるいわゆるポータブル充電器ではない。あくまで電源タップに挿して使う従来のACアダプターを代替するスマートな給電タップだ。

 さらに外見からは見えない最大の特徴は給電効率にある。ノートPCなどの大型給電も行いつつ、モバイルデバイスの充電も平行してできるのは、充電器自体が電力を自動で調整する”スマートチャージャー”であるためだ。

 「Zoltは各ポートで充電対応が分かれており、自動で優先順位を調節しているスマート充電器。最上段はPC専用のポートでここが65ワット、残り2つのポートが12ワットずつでの給電ができる。ただし、複数のデバイスを挿した場合は、合計が常に70ワットになるように自動で調整される」(ラマナタンCEO)

 たとえば合計で85ワットが必要な充電の場合、スマートチャージャーとして2・3段目となるモバイルを優先して、残りをPCに回す形となる。12ワットずつモバイル機器の充電を行っている間は、46ワットで最上段の給電が調整されるのだという。モバイルの給電が完了したら、最大給電ポートに自動で配分が行われる。下2つのUSBポートは、GoProやポータブルスピーカー、カメラなどにも対応できる。

 また、接続されたのがどのデバイスなのかを認識して何ボルトかを判断して充電している。技術的には、接続に使っているピンからデバイス側に送った信号によって、自動で専用充電器だと認識させているらしい。「たとえばDELL用のピンが刺さった瞬間に(給電される)PC側がZoltをDELLのチャージャーだと認識する仕組みをもっている。”もともと同梱されていた専用充電器”だと認識させている」

 重さ・体積もこれまでのアダプターと比べ、ともに約4分の1ほどとなっているZoltだが、「20数年変わらなかったアダプターを変える」と同社が意気込む本当の理由は電力消費の部分にある。

 ラマナタンCEOによれば、Zoltの電流の変換効率は約4分の1になっており、ACアダプターで約13~15%ほど生じていた電力効率のロスが、7%まで抑えられているという。余分なエネルギーとして熱に変わっていた部分が約半分になったため、発熱も大きく抑えられている。

 さらに工夫はそれだけではない。デザイン・製品仕様にもこだわりが数多い。

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