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東芝がPC事業再編を発表、展開地域や機種数を絞り込む

2015年12月22日 09時00分更新

 年の瀬も押し迫った12月21日、東芝はPCやテレビ事業の構造改革についてプレスリリースを出し、かねてから噂になってきた事業再編の詳細を明らかにしました。

東芝がPC事業の構造改革をプレスリリースで発表した。

 その内容はPC事業の大幅縮小を思わせるものとなっており、PC業界にソニー以来となる大きなインパクトを与えそうです。

2016年4月にPC事業を子会社化

 もちろんこの発表は”青天の霹靂”ではなく、これまで噂になってきたものが現実化したものと受け止めてよいでしょう。12月4日には富士通・東芝・VAIOがPC事業統合を検討しているとの新聞報道が話題になったばかりです。

 今回の発表で東芝は、これまで社内カンパニーだったPC事業を、2016年4月1日を目処に子会社化することを明らかにしました。

 富士通との統合については一切言及していないものの、「他社との事業再編も視野にいれる」と記述しており、検討を進めていることを示唆しています。すでに富士通は2016年春にPC事業を子会社化することを発表していることから、両者の間でうまく話がまとまれば、富士通・東芝のPC子会社同士の合併が実現するのではないか、と予測できます。

PC事業は国内中心に、機種数も大幅絞り込みへ

 これまで東芝のPC事業は、個人向けの「パーソナルソリューション事業部」と、法人向けの“ビジネスソリューション事業部”に分かれていました。今回の発表ではこれを1つに統合した上で、グローバルの需要が見込めるB2B事業を中核にするとしています。

 すでに東芝は2014年にPC事業を「B2B重視」に切り替えることを発表しており、この路線を今後は強化するという印象です。コンシューマー向けPC市場は縮小傾向が続いているのに対し、法人向けは今後も安定した需要が期待できるため、理にかなっているといえます。

ベルリンで開催されたIFA 2015の東芝ブースでは、欧州向けPC事業の健在ぶりをアピールしていた。

 一方、大きく縮小しそうなのがコンシューマー向けPCです。国内市場を主軸にするとしており、海外市場は縮小を示唆しています。さらに低価格の機種を中心に利用していたとみられるODM企業への委託生産をやめ、東芝が仕入れた部品をODMに売ることで利益を水増ししていたという「バイセル取引」の廃止も明言。これは不正会計問題対策を意識したものといえます。

 この結果、PCの機種数は大きく減ることになるでしょう。現在、東芝のPCはタブレット・ノートPC・オールインワンと幅広く展開していますが、東芝は「プラットフォーム数を現在の3分の1以下に削減する」と発表。東芝広報によれば、プラットフォーム数とは機種数を指しているとのことです。

海外拠点も縮小、PC市場から消えゆく日本ブランド

 海外における存在感も限定されることになりそうです。最近、海外のPC売り場ではソニーの姿を見かけることがなくなりました。VAIOは国内事業に特化し、米国やブラジルへの展開も進めているものの、ソニー時代に比べるとはるかに小規模な動きになっています。

 その結果、いまや世界のPC売り場で一番よく見かける日本ブランドは東芝です。北米ではWindows 10の発売から1週間で最も売れたのが東芝製のPCだったとして、米マイクロソフトから高い評価を受けたばかりです。欧州の片田舎でも、東芝のPCは唯一の日本ブランドとして店頭でがんばっていました。

現在、筆者が滞在してデンマークの地方都市でも東芝製のPCを見かけた。

 しかし今後は海外における注力地域を見直し、東芝は現在の13拠点を4拠点に集約すると発表しています。海外展開がなくなるわけではないものの、PC売り場からまたひとつ日本ブランドが消えていくというのは悲しいものがあります。

 次の展開は、2016年春になにが起きるのかという点に注目が集まります。果たして富士通とのPC子会社統合は実現するのか、統合するとしたら2016年のどのタイミングになるのか。それぞれに強みがある東芝と富士通という2つのブランドをどう使い分けていくのかなど、課題は山積みといえます。

■関連サイト
パソコン事業の構造改革に係る会社分割の実施決定について(PDF)

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