写真:haru__q
発車メロディは「音のピクトグラム」
鏡のように「いまの心境」が映るようにしたんです。明日になったら明日の心境が映る、心境によって明るい暗いがわかるように。
──そんなことできるんですか。
音楽療法で「同質の原理」というのがあるんです。たとえば落ち込んでるときC調の曲(俗語で「ただ明るいだけの曲」)を聴くと落ち込んでしまう。そこでチェロを弾く人がいて、気分に合う曲を、カウンセリングしながら探していくんです。鬱っぽいと言われたらマイナー調の曲を弾く。それでコミュニケーションしていくことで心の扉がひらいていく。
──気持ちと音楽がシンクロしているように感じるんですね。
発車メロディにもそんな鏡のような構造のメロディを入れることで、「ああ、今日は嫌いな人に会わなきゃいけない……」とか思っているときでもクリアできる。たとえば鐘の音は結婚式のときは明るく、葬式のときは暗く聞こえますよね。
──音楽でありながら信号的であるようなものを心がけたと。
一度は音楽寄りに行ったことがありましたが、もう一回信号寄りに戻して、まんなかの領域……ちょうど「中道」を行くようなものをめざして。足して2で割るのではなく、音楽でもあり信号でもある、新しいジャンルをつくろうと。その点、いまは着メロの駅版みたいになっていますが、あれは絶対ダメだと思っています。
──童謡を使った発車メロディとかですね。ダメですか、あれは。
まるでCMを作っているようなものですから。なぜこの曲かといっても、誰かが住んでいたとか、そんな理由ばかり。それは発車ベルではありません。メロディが重なるとぐちゃぐちゃになってしまうものも多いです。ジャンクなカルチャーとしては成立するかもしれませんが、もう少し整理する必要がありますよね。
そもそも発車メロディは、譜面を書いてつくったわけではなく、技術から作ったものですから。「何のための音なのか」というのが成立していないといけません。あれはオリンピックまでに考えなおしたほうがいいですよ。わたしたちも、もっと「ピクトグラムの音版」のようなものを考えていくべきだと提案しています。
──電車の発車メロディをつくったあとはどんな仕事を。
45歳までは空間系の仕事をやりまくってましたね。
──空間というと、どういう仕事になるんでしょう。
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