ヒントは鐘の周波数成分にあった
鐘のような音だったんです。
──ああーっ、鐘!なるほど!
わたしたちも「あっそうか、鐘か!」と。鐘で時を知らせる、情報を知らせるというのを西洋・東洋を問わずやってきました。最初に衝撃音がドンときて、そのあとボワンワンワンと音が響く。「音で張り倒して、抱きしめる」みたいなもの。1つの音色なのに、時間によって「早いもの」「遅いもの」「強いもの」「優しいもの」が同居している。そういうものだからこそ続いてきたんじゃないかと。
──鐘の響きそのものに「情報を伝える音」のヒントがあったと。
お寺でいえばお寺ごとに独特の音色があり、アイデンティティがある。せーので鳴ったとき、音楽的には不協和音なんですが、ふしぎと調和が成立する。1つの音が良くても、複数になったとき嫌な音になったら、長続きしないでしょう。
で、当時の新宿駅は全部で14番線あったんです。同じ電車が夜と朝でちがうホームに行くということがあった関係、12種類のメロディを作ることになりました。12種類あるということは、12種類のお寺があるようなものですよね。
一言でいうと、すべて鐘の音の倍音でメロディをつくったんですね。それをシンセのサンプラーで時間的にバラしたり、楽器を変えたりしていた。なので、せーので鳴らすと鐘の音のように聞こえるんですよ。
──いちばん苦労させられたのはどこですか。
矛盾する要素があったことですね。たとえば、発車を知らせなければいけないけど、焦らせてもいけない。それぞれをわからせないといけないけど、サウンドとして不調和にならない。ちっちゃい音だけど、遠くまで認識できる……。
そしてもっとも難しいのは、毎回聞くたびに印象が変わる、飽きない。これを物理的にやろうとするのは理論的に矛盾するのでとても難しかったですね。
──めちゃ難しそうですけど、どうやって解決したんですか。
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