数千年前までさかのぼった
──発車メロディに変わるまでの駅構内はどんな状況だったんですか。
まるでプロレス会場にいるような感じでした。
──にぎやかすぎるってことですかね。
サインもぐちゃぐちゃ、発車ベルがうるさいという苦情もいっぱい来ていたんですよね。それをとにかくきれいにしよう、放送設備を変えようということで、当時は「クリーン作戦」と呼ばれていたんです。もう1つは多かった駆け込み乗車をどうしたら減らせるか、というのもテーマになりました。
──2つの課題があったと。初めはどうやってつくりはじめたんでしょう。
普通こういうものは前例を見るんです。当時もご多分に漏れず探したんですが、前例はない。となると、自分の責任でイチから考えないといけない。
しかし新宿で200万人が毎日のように聞く音となると、いったん嫌いになったらすごいことになる。「3割の法則」というものがあり、200万人の3割が「よくなった」と答えてくれたら大成功だというものです。ヒット曲をつくるようなもので、200万人のうち3割には好かれなければいけない。
そうなると、普遍的なバックボーンに乗っかった作りにしないとだめだろうと。「ドレミ、ドレミ……」と直感で作ったとしても、なぜそうなのかという理由がつかない。そこを見つけなければと、数千年前まで調べたおしていきました。
──数千年前っていうと。
狼煙(のろし)までいきました。
──もはや音じゃないところまで。
時を知らせるもの、情報を、とくにどこかに行くきっかけを与えるもの、危ないと知らせるものについて調べまくったんですね。
──結局見つかったんですか?
結論から言うと、ありませんでした。なのでもう自分たちで作るしかないとなり、困っちゃったなあということになって。で、実際にラジカセを持っていって、ホームの端でいろんなタイプのメロディを流してみたんです。そのうちの1回、杖をついたおじいさんがいたんです。昼14時くらいですか。いろいろなメロディを流していたとき、1つだけ、そのおじいさんがニコッと笑った音があったんです。
──なんですかそれは。
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