サムスンの「Gear S2」、「Gear S2 Classc」は同社から約1年ぶりに登場したスマートウォッチだ。サムスンはこれまで数々のスマートウォッチやウェアラブルデバイスを投入してきたが、この2製品は同社初となる円形ディスプレーを搭載している。しかも、時計のベゼル部分を回して操作するサークルUIの採用は世界初。よりスタイリッシュなデザインとなり、使いやすくなったGear S2シリーズの開発の経緯を、サムスンの本社のあるソウルで担当者にうかがった。
円形ディスプレーの採用は使いやすさを考えた必然性から
サムスンのスマートウォッチはこれまで四角形のスクエアなディスプレーを採用してきた。四角いディスプレーは画面の隅々まで情報を表示でき無駄がない。「Apple Watch」や、多数のメーカーから製品がリリースされているAndroid Wearを見ても四角のディスプレーの採用例は多い。
ところが、サムスンはこのGear S2シリーズで新たに円形のディスプレーを採用した。それはなぜなのだろう?「ディスプレーを円形にした理由のひとつは、消費者にスマートウォッチへの親しみを持っていただきたかったのです」と話してくれたのはGear S2の製品デザインを担当したホン・ジェヒョン氏だ。サムスンのデザインチームのシニアデザイナーである同氏は、Gear S2のデザイン設計に携わった。確かにGear S2を最初に見たときの筆者の感想は「あ、これは腕時計だ」と言うものだった。
サムスンがこれまで出してきたスマートウォッチや腕輪型のウェアラブルデバイスは7種類。画面を正方形にしたり、弧を描いたフレキシブルディスプレーを採用したモデルもあった。そのように様々な形状の製品を出続けてきたが、消費者からのフィードバックから得られた結論のひとつが「本来、腕時計とは丸い形をしているもの」(ホン氏)だったという。スマートウォッチは初期の製品が出てきてからもう10年近くたつが、あれだけの話題をかっさらったApple Watchですら多くの人々の間に普及したとは言いがたい。その理由のひとつはもしかしたら、四角い画面の形状にも問題があるのかもしれない。
ちなみに、市場で流通している腕時計の形の約9割が円形だという。つまり、まだまだ消費者も腕時計と言えば丸い円形のデザインを思い浮かべ、それを自然に腕にはめているのだ。スマートウォッチも腕時計の代替を目指すなら、長年かけても円形の形状が主流な腕時計と同じ形を目指すべきなのかもしれない。
しかし、スマートウォッチのディスプレーの形を変えると言っても、それは単純な話ではない。メッセージの通知内容や地図、画像などを表示するスマートウォッチの画面形状を四角から円形に変更すると、画面内の上下左右にデッドスペースが生まれてしまう。そのデメリットは考えなかったのだろうか?
「四角いディスプレーは画面を有効利用できますが、操作時に指先で画面をタップやスワイプすると表示が隠れてしまいます。そこで新たに開発したのが『サークルUX』です。これは円形画面の外周のベゼル部分をリングとし、そのリングの回転で操作を行なうのです。サークルUXは画面をタップする必要がないため、画面表示が隠れません。円形画面とサークルUXの組み合わせはいままでのスマートウォッチの使いにくさを格段に改善してくれるのです。これは四角い画面のままでは実現できませんでした」。Gear S2、Gear S2 ClassicのグラフィックUIを担当したサムスンのUXイノベーションチームのシニアディレクター、カン・チョルフン氏は円形画面に切り替えたメリットをそう説明する。
「実は円形画面を使ったスマートウォッチのUIの設計は3年くらい前から考えていました。スマートウォッチやウェアラブルデバイスの画面の物理的な大きさは、スマホよりはるかに小さくなります。その小さい画面をタッチするのは誤操作も起きやすいですし、先ほど話したように画面を隠してしまうという問題があります。今回採用したリングを回す機構はそれらの問題を解決してくれる切り札として開発を進めてきましたが、技術的な問題もあり、なかなか製品化できなかったのです。それを今回、ようやく市場に出すことが出来ました」(同氏)。
実際にGear S2のベゼルを指先で回してみると、くるくると回して画面表示が切り替わる様は軽快で使いやすい。また、見た目も楽しく、ついついベゼルを意味も無く回したくなってしまう。「ボタンを10回押すよりも、ベゼルを1回転したほうが簡単で楽にメニューの切り替えもできる」(カン氏)。
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