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世界最悪の日本の人材ミスマッチは改善するのか

3カ月のトライアル期間で納得のいく転職活動ができるTRYOUTが始動

2015年12月09日 08時00分更新

 9日、パラフトは3カ月のトライアル期間を経て転職を決定できる人材紹介サービス『TRYOUT(トライアウト)』をリリースした。

 TRYOUTは、求職者を対象に初めの3カ月間を業務委託契約とし、実務を通して適性と相性を見極めた後、双方合意の下で正社員としての転職を決定できる人材紹介サービス。エンジニア、デザイナー、マーケッターなどのIT人材と、IT人材を雇用したい企業が主な対象となる。

 書類審査と面談をベースとした従来の転職方法とは異なり、実際の職務などを通してスキルを十分にアピールすることができるのがポイントだ。

TRYOUTの利用イメージ

 利用の流れは、求職者がTRYOUTでのサイト登録後、専門コンサルタントがヒアリングを行い、希望にマッチする候補企業を推薦、その後企業との面談を1度行いトライアル期間開始となる。仮に入社に至らなかった場合も、フリーランスとしての勤務期間となるため、キャリアに傷がつく心配がない。

 費用面については、求職者側は無料で、トライアル期間中も業務委託契約を結び、報酬が発生する。

 一方の企業側は、成果報酬型課金として総額100万円が発生するが、正社員採用に至らなかった場合は3カ月の業務委託マッチング費用30万円のみとなる。
個人も企業も出会いのハードルが下がることで、お互いに雇用がやりやすくなることが一番のメリットといえる。

 入社決定の際には専門コンサルタントのフォローを受けながらの条件交渉を行うこともできる。企業側にとっても、自社にフィットする人材だけを採用できるようになるため、入社後のミスマッチを格段に減らすことが可能だという。

TRYOUTの面談応募フォーム

目的は”最悪の雇用ミスマッチ”改善

 「日本の雇用のミスマッチは世界最悪なランク10という発表があったが、ああなるほどと思ってしまった」

 そう語るのは、働き方にフォーカスした求人メディアも手がける人材採用に特化したスタートアップ・パラフトの中川亮代表取締役。今回TRYOUTをリリースした背景には人材採用支援を続けるなかで見えたミスマッチの構造があった。

 『日本は世界で最も必要な人材が探しにくい国』 。ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンが2015年11月12日に発表した、調査研究「グローバル・スキル・インデックス」によるものだ。レポート内でも日本の人材ミスマッチの評価は低く、昨年の9.5を上回る最悪の10という評価になっている。

グローバル・スキル・インデックスでの日本の評価。人材ミスマッチは最悪の10点満点。

 「エンジニアやデザイナーの人材採用支援をこれまで2年間で数千人以上行っているベテランのコンサルタントがいるが、2~3割はどうしてもうまくいかないものがあった」と中川代表。 理由は簡単で、能力的に問題がなくても入ってみないとわからないことがあるためだという。

 「企業文化、社風、人間関係は入ってみないとわからないし、やってみないとわからない。いくら面談でマッチングが成立しても、働く人と働く現場がつながっているわけではない。社内の結束を強めるためのイベント参加についても、エンジニアの場合は好き嫌いが顕著だったりする。IT企業が多いベンチャーではやりたがる会社とそうでない会社があるが、外からは見えるようで見えない。”イベントに強制させられるかどうか”はわからないため、入社後にスキルと関係ないところで軋轢ができてしまう」

 中川代表によれば、コンサルティングを行う際は下記のような情報を企業と個人でお互いにチェックさせるのだという。

入社前:仕事内容、役職ポジション、勤務時間、将来性、場所、福利厚生、会社の将来性
共通:責任の大きさ、キャリアアップ
入社後:企業文化・社風・人間関係

 2~3割で起こる失敗というのは、上記の条件面での企業側・個人側での情報の非対称性によるものだ。「資金調達直後で、『うまくいってます、採用ばんばんやってます』とメディアも含めてあおるケースなどもあるが、そのために求職者が職場をより美化してしまうケースも見てきた。期待して情熱をもって入ってみても、1年ほど過ぎてから違和感を強く感じてしまう」

 日本の場合、転職の失敗はそのまま職務経歴書にダメージとして残ってしまうのも特徴だ。正社員で入ったとしても、短期間での退職は次の仕事を探すうえで忌避されやすいのも事実だ。

 企業側から見ても、正社員雇用には手続きが多く、簡単にやめられてしまったという事実があると「今度も」と思ってしまう。能力的に申し分なくても、単純に職場に合わなかったという理由は日本社会の場合、逃げ場がない重みとなる。

転職でミスマッチしないために何が必要か

 もちろん話は”入社後”だけに限らない。本来求められる職務面でもマッチングは重要だ。

 「そもそも自分で進んで仕事が進められる自立型の人間はそうそういない。企業側に求められる重要なポイントは”どういう人をとるか”を明確にすること。十分条件が必要条件に変わってしまうのがよくあるNGケースで、入社後にミスマッチが起こりやすい。特にエンジニア採用について言えば、Java3年、PHP5年といった言語での経験による尺度ではもう図れない。期間ではなく、結局は密度が求められる。そういう意味でTRYOUTは、職人仕事であるデザイナーやエンジニア向きなはず」(中川代表)

 実際これまで同じような取り組みがなかったのか尋ねると、「各企業が個別にやっていたものは当然ある。とはいえ、一般の人がどこから申し込んでいいのか見えなかった。各社が個別にやっていることを違うプラットホームでやることに価値がある」と中川代表。

 トライアル期間があるとはいえ、サービス開始直後はよりミスマッチを防ぐため、人力できちんとケアを行う予定だ。まずは年間300のマッチングが目標だという。最後に、転職活動でミスマッチしないためのアドバイスについても聞いてみた。

 「(転職先の企業を)美化しすぎないことが大事。半年一年経過して『こんなものか』になってしまっては続かない。自分がその会社で何のスキルをどのくらいアップするのかを決めると、会社のせいにしないようになる。転職活動を行う人は、軸を自分で考えておくのがオススメ。転職時の動機を設定しておくと、成長度合いがまったく違う」

パラフトの中川亮代表取締役

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