格安SIMの台頭でODMの活用が広がる
特にコストの低さが求められるSIMフリースマホ市場では、ODMが提供するリファレンスモデルを活用するケースが増えている。
たとえば、日本通信の『VAIO Phone』もそのひとつ。こちらは、台湾の大手ODMであるクアンタ・コンピューターを活用している。もう少し手のこんだものだと、トーンモバイルが新たに発売した『TONE(m15)』も、同社がデザイン、設計をし、ODMを活用してつくり出した。
コストが下がるだけでなく、リファレンスが存在することで、開発期間も短縮化されている。トリニティのNuAns NEOも開発開始から発表に至るまで、1年はかかっていない。リファレンスモデルをほぼそのまま使うのであれば、もっと短期間で市場に投入できる。
こうした取り組みは、新興国向けに整備されてきたものだ。MSのほか、チップセットメーカーのクアルコムもリファレンスモデルをつくり、安価かつ短期間にスマホを発売できる枠組みを提供してきた。開発されるスマホは、基本的にはミドルレンジからローエンドとなる。
中国のODMを活用する企業が日本で増えてきたことは、スマホづくりにおけるひとつの変化だ。大手メーカーが企画から設計までを丸ごと手がけるモノづくりとは、真逆の方向性とも言える。
背景には、格安SIMと呼ばれるMVNOが台頭し、安価なスマホが求められるようになってきたことが挙げられる。スマホ全体の性能も底上げされ、ミドルレンジであれば、十分快適になったことも大きい。
もっとも、リファレンスモデルをわずかに改修しただけのスマホだと、差別化は難しく、飽きられるのも早い。トリニティのように、ODMを使いながらも、ゼロから端末をつくりこむアプローチは、今後、もっと注目されるようになるはずだ。
筆者紹介:石野純也
ケータイ業界を主な取材テーマに、雑誌、ウェブ、新聞、生放送など幅広い媒体で活躍中。著書に『iPhone 6s/6s Plusがぜんぶわかる本』(洋泉社MOOK、共著:石川温、 石野純也&ゴーズ)、『Mobage、GREE、コロプラほかキーマンインタビューから探る ソーシャルゲーム市場の最新トレンド!』(KADOKAWA)、『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『モバゲータウンがすごい理由』(マイコミ新書)など。
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