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かっちょいー!カシオトーンひさびさに見て感動

2015年12月06日 12時00分更新

 むかしの電子楽器は、ひさびさに見ると超かっちょいい。

 カシオの電子楽器事業は1980年に始まってから今年で35周年。東京・成城「樫尾俊雄発明記念館」では12月7日から26日まで期間限定で、カシオ電子楽器の名機を特別展示している。通電するものは鳴らせるぞ。

 カシオ楽器第1号機はカシオトーン(CT-201)だ。楽器の音色が持つスペクトルができるまでの複雑な変化を電子回路で再現。さまざまな音色を再現し、ポリフォニックで演奏できる電子キーボードを世界にさきがけて開発した。

カシオトーン初代機「CT-201」。当時の価格は9万7000円

ノブを倒し、キーをタッチして音色を選択するしくみ

 実際に音を出してみると、意外なくらいスムーズな音色に感動した。木目調でなく本物の天然木を使ったデザインも渋くてかっこいい。いまや天然木バージョンのカシオトーンは国内でも珍しいそうでカシオの人も興奮していた。

 翌年には自動伴奏機能を持つ「CT-401」、バーコードで楽譜をとりこみ、鍵盤にガイドを出す「CT-701」も発売。その後もガイドキーボードは受け継がれていき、ネットからガイドをダウンロードするキーボードなんかも発売した。

 ちなみに会場で楽譜のバーコードを読みとろうとしたが、スキャナがダメになっていたのか、「ピッ」と言ったきりエラーになって読めなかった。残念。

バーコードで楽譜をとりこむ「CT-701」。小型スキャナーが付いている

 そこから展開したのがもっと気軽に使える鍵盤、ミニキーボードだ。

 まずは「M-10」からはじまり「PT-20」や「VL-1」などに展開。発想がよすぎるのがVL-1。記憶した曲を1つの鍵盤だけで演奏できるワンキーボード機能などはいいのだが、ディスプレイに表示されるのが数字で完全な電卓だ。

 実際にVL-1で音を出してみると「てってれ~ん」というゲーム音がかわいく、電卓っぽい見た目とあいまって非常にいい感じだ。

VLSIを使ったミニキーボード「VL-1」。鍵盤が完全にボタンだ

ディスプレイに表示されるのは数字。なお四則演算もできる。それは電卓じゃないのか

 有名なのは1986年のサンプルトーンことサンプリングキーボード「SK-1」。単一モデルで100万台以上を売っている。「アスキ~」などとマイクで録音した声をキーボードで演奏するとたまらない楽しさがあった。こりゃ売れるわな。

 ちなみに、カシオのミニキーボードは海外でも有名だ。

 たとえば1985年の「MT-40」内蔵の「スレンテン」というリズムは、中南米で「モンスターリズム」と呼ばれるほどポピュラーなリズムになった。インドでは今でもミニキーボードをメーカー問わず「カシオ」と呼んでいるらしい。

大ヒットした「SK-1」。右上のマイクでサンプリング(録音)し、鍵盤で演奏できる

 そしてカシオといえばシンセサイザー。まずは1984年の「CZ-101」だ。アナログ全盛期にデジタル演算で音源(PD音源)を作り、ヤマハの名機「DX-7」とともに人気を集めた。最近はiPadアプリとして再現されている。

 会場で鳴らし、ブラス音が出た途端に「懐かしいー!」と叫んでしまったのが1986年の「CZ-1」だった(さすがにバリが出てたけど)。高橋幸宏さんが鳴らしていたのでおぼえている人もいるはず。なおわたしは1983年生まれだ。

PD音源シンセ「CZ-101」。ヤマハ「DX-7」と同時期に発売し、話題になった

「CZ-1」。CZブラスの「ふぁーーんふぁふぁーん」という音(謎)がかっこいい

 圧倒的な存在感を放つのが、電子音楽の巨匠・冨田勲先生の監修で生まれたラックマウントの「コスモシンセサイザー」。下部にPD音源、上部に怪物サンプラー「ZZ-1」をマウントしている。ZZ-1はサンプリング周波数40kHz、16ビットパソコンとの連携機能を持ちながら結局発売されることはなかった幻の1台。のちにノウハウを生かして16ビットサンプリングの「FZ-1」が生まれている。

 余談ながら、会場で冨田先生の話をしていたらカシオの人が「そういえばお客さんからこんなものをいただいたんですよっ」と戸棚からなにやら持ってきた。それがなんと1989年の「トミタ・サウンドクラウド」フライヤー。前後左右そして天井にスピーカーを配した「ピラミッド・サウンド」イラストがサイケで渋い。

冨田勲先生監修で生まれた「コスモシンセサイザー」

MIDIキーボード、デジタイザーとつないで使用する

うおおトミタ・サウンドクラウドのフライヤーが!

 その後、キーボードを応用して開発した電子サックス、カセットでカラオケ音源を流して伴奏できるギター、ヘッドセット付きでバックトラックに合わせてラップができるガジェットなど、カシオは本当にいろいろな楽器をつくってきた。

 とはいえ、いまカシオの電子楽器ラインナップは電子ピアノとキーボード、DJガジェットとアプリだけ。変な、もとい刺激的なコンセプトの楽器は減ってしまったのかなと一瞬思ったが、電子ピアノの新製品を見て悲しみはすっとんだ。

 「セルヴィアーノグランドハイブリッド」といい、電子ピアノなのだがグランドピアノとおなじ木製鍵盤と木製ハンマーを使用している。センサーで打鍵をとらえて打鍵の強弱や経時変化を表現したり、あるいはピアノの弦共鳴をシステムで再現したりと、グランドピアノのシミュレートに異様にこだわっているらしい。

カセットテープでカラオケを流しながら演奏できるギター

早すぎたDJガジェット「ラップマン」。ヘッドセットが付いている

最新製品「セルヴィアーノグランドハイブリッド」。再現性にこだわった

 カシオの電子楽器部門はもともとシステム部門、電卓部門、両極端な部門から有志が集まってつくられた事業部だそうだ。そのため一方では技術ベースの本格的な楽器、もう一方では誰でも楽しめる普及帯の楽器ができたのだという。

 これからも理系と文系がいい感じに混ざったような、楽しくて、ときに「何これ」と思えるようなラインナップが出てきてくれたらうれしい。

 そういうわけで年末は電子楽器好きでわいわい成城に行き、話に花を咲かせてはいかが。それとアスキーもひさびさに紙の雑誌をつくっているので読んでね~。

スマホも家電もPCもこの1冊で決まり
『週刊アスキー 特別編集 冬の超お買物特大号』


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■特別付録
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■判型:A4変
■ISBN:978-4-04-865631-3
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■定価:本体639円+税
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