航空券やホテル探すユーザーはスマホを活用しているものの、予約するときにはPCを使っている――こうしたデバイスの“使い分け”については、IT業界内でもちょくちょく話題になってきました。
11月9日、旅行検索サイトのスカイスキャナージャパンもこれを裏付ける数字を発表。日本のユーザーの64%がスマホやタブレットでチケットを検索する一方で、65%のユーザーが予約にPCを用いているとしています。
先週にはついにアップルからiPad Proが発売された一方で、“PCを置き換える”にはまだまだ足りないものがあるとの声が多いのも事実。今回は、改めてPCとスマートデバイスの関係について考えてみます。
一覧性や入力の容易さではPCが便利
スカイスキャナーでは、航空券を検索したスマホだけで予約まで完結できるよう、iOSやAndroidアプリをリニューアルしています。
新しいアプリはたしかに快適で、空港名やカレンダーの入力もスムーズにできています。ただ、実際の予約にはスカイスキャナーでヒットした航空会社や旅行代理店のサイトに移動する必要があり、それらのサイトは個々に使い勝手が異なっているという難点があります。
筆者も個人的に航空券やホテルを検索する機会は多いものの、予約するときにはほとんどPCを使っています。PCを開くことができる状況なら、PCを使ったほうが早いと考えています。
その理由として、PCは画面が大きく一覧性が高いこと、使い慣れたキーボードにより入力が容易なこと、パスワード管理の仕組みが優れていること、といった点が挙げられます。裏を返せば、これらはスマホだけで旅行予約が完結しない原因でもあるわけです。
大画面やフリック入力の練習でスマホの問題は解決できる
画面の大きさによる一覧性という点では、スマホは圧倒的に不利です。デバイスの携帯性と画面の大きさはトレードオフの関係にあるため、何らかのイノベーションが期待されるところです。
スマートグラスや網膜投影型ディスプレイのような技術も開発が進んでいるものの、実用性や安全性が向上するにはまだ時間がかかるとみられており、片手に収まる5インチ程度の画面を見るというスタイルは、当面変わらないでしょう。
また、Windows 10 MobileのContinuumのように外部ディスプレイと連携する機能も魅力的ですが、どこにでも外部ディスプレイがあるわけではありません。
これに対して、タブレットなら手軽に大画面を得ることができます。特に、12.9インチという大画面のiPad Proは、ノートPCと同等以上の画面サイズです。とはいえ、従来のiPadアプリを12.9インチに拡大しただけではあまり意味がなく、大画面を活かした画面デザインに期待したいところです。
入力という点では、スマホやタブレットにキーボードを接続することでPCに近い入力が可能になります。しかし必ずしもキーボードを置くのに適したテーブルなどがあるわけではなく、膝の上で使うならノートPCのほうが安定しています。
立ったまま使うことも多いスマホやタブレットでは、フリック入力を練習して入力速度を上げるのが効率的です。従来のキーボードにおける、タッチタイピングに匹敵するスキルと考えてよいでしょう。
今後、世界がスマホに最適化していけば逆転現象も起こりうる
このようにPCとスマートデバイスの違いを見ていくと、大きな画面とキーボードを備え、アカウント情報の管理も多彩なPCには、一日の長があるといえます。
たしかに、単に動画を見たり、SNSを楽しんだりするデバイスとしてPCは大げさすぎるものの、PCの使い方を身に付けることができれば、もっとクリエイティブなことに活用できるでしょう。
その一方で、世界がスマホに最適化していけば、スマホのほうが生産性が高いという逆転現象も起こるのではないかと筆者は考えています。
たとえば筆者は、アカウント管理に『LastPass』を使っています。PCではChrome拡張により、パスワードの保存やフォームへの自動入力ができるので便利です。しかしモバイル版は使い勝手が異なり、PCと比べて不便に感じます。
しかし今後、iOSのTouch IDや富士通の虹彩認証のような生体認証により、パスワード入力を置き換える、または入力を自動化する仕組みが普及する方向にあります。これは局所的にではあるものの、PCを使うより便利になるはずです。そういう意味で、PC的な便利さだけでなく、スマホに最適化された仕組みの普及という点に筆者は注目しています。
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