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「トップは社員の下につけ」「競合は友と思え」フィンランド逆転の発想法

2015年11月20日 09時00分更新

開発者至上主義「ゼロ・マネジメント」の成功

 スーパーセルは現在フィンランドをふくむ5カ国にオフィスを持ち、世界33カ国に展開している。社是は「最高の人々が最高のゲームをつくる」。最高の人材を雇い、最高の環境を作り、最高の人材が成功すると信じること。

 では、なぜ最高のゲーム開発者がスーパーセルに入りたがるのか。

 昔ながらのゲーム会社とは逆の構造をとっているからだとイルッカ・パーナネンCEOはいう。通常は会社の上層部にいるトップがつくるべきゲームのビジョンを持っていて、それを下に伝えて「部品」をつくる仕組みになっている。

 するとしぜん部・課がベースになり、上層部への報告と承認が必須になり、時間がかかる上、モチベーションもわかなくなる。

 こうしたいわゆる官僚機構の経営体制はとくにゲーム会社にとって「罪深く、クレイジーにさえ思える」と考え、徹底的にボトムアップの仕組みに変更した。トップは開発者たちの下に立ち、彼らの開発環境を整備する側にまわるのだ。

 社内の上層部に“セル”と呼ばれる小さな開発チームが連なり、チームはそれぞれ1つずつが別々のスタートアップであるかのようにゲームを開発・販売する。スーパーセルの社名はこの“セル”構造からきているそうだ。

既存ゲーム産業の構造。典型的な官僚機構で中間管理職が多い

スーパーセルの構造。トップが下にいて開発者たちの意思決定を支えている

 たとえば世界的ヒット作「クラッシュオブクラン」は、12人のチームがすべて自分たちで開発し「中間管理ゼロ」でリリースされたものだという。

 もう1つ重要なことは、各チームがゲームの開発ノウハウ、ユーザーが途中でプレイをやめて(離脱して)しまったときの振る舞いなどのデータを細かく共有するということ。成功も失敗も、すべて知見がたまっていく。

 競合を「家族」として扱う地元ゲーム開発者の文化を社内で成立させて、大成功に導いたのがスーパーセルだったというわけだ。この開発体制をとっているため、いたずらに社員を増やすこともないという。

 「逆転の発想」が成功できたのはスマホという“小さなゲーム”ゆえかもしれないが“ゼロ・マネジメント”とまで言いきるのは自信のあらわれだろう。

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