11月11日発売のアップルのiPad Pro。MSのSurface Pro 4と、サイズも価格も似ているが、実際の商品性と設計思想には大きな違いがある。
サイズの変化がアップルを翻意させた
現在も多くの人は、PCの上で“マウスとキーボード”を使って操作している。しかしそれでも、ある程度のサイズを持った機器向けには、ペン機能を搭載するのが主流になってきた。
つい先日まで、アンドロイドやウィンドウズがペンを重視するのは“対アップル”という側面も大きかった。iPhoneもiPadもペンを重視しておらず、サードパーティー製の周辺機器に頼らざるを得なかったからだ。アップルは頑なにペンを使わなかった。2007年にiPhoneが発表された時、スティーブ・ジョブズが否定した、という伝聞はある。だが、それも昔の話だ。アップルが過去を否定して方針を翻すことも珍しくはない。だが、何年にもわたり、アップルはペンを標準とすることを拒否し続けた。
それが『iPad Pro』ではなぜ変わったのか?
それはアップルは“iPadよりずっと大きな画面でないと、ペンは採用しない”と決めていた、というのが事実により近いのではないだろうか。
発表会の際、筆者がiPadProを使った時に感じたのは「紙により近い」ということだ。iPad Airの9.7インチは大きく思えるが、紙と比較すると、A5程度だ。日常的に使う“紙”としては、もう少し大きい方がいい。モバイルデバイスとしてのサイズと作業スペースとしてのサイズでは、求められるものが違う。また、ペンの反応速度や精度の高さも“紙っぽさ”を感じさせる要素だ。そうした要素がないなら指でいい、とアップルは考えていたのだ。
OSの違いが用途の違いに直結
ただ「紙により近い」という要素は『Surface Pro 4』も持っている。画面サイズはiPad Proより若干小さいだけだし、ペンの書き味もずいぶん良くなった。従来のアーキテクチャーでは放熱や消費電力の問題から、iPadのように薄く軽いものをつくりづらかったが、Surface Pro 4では差も縮まってきている。もはやハードスペックで区分けるのは難しい。
ポイントは“OS”にある。iPad ProはiOSを使っており、フルにPC用OSが搭載されたSurfaceに比べ、使えるファイル形式や周辺機器の制限が大きい。Surfaceの方がずっと柔軟性が高い。iPad Proでは、よほどワークフローをしっかり組み立てないと、一切PCやMacを併用せずに仕事を完結させるのは難しい。一方、タッチやペンを生かしたアプリの数では、iOSは圧倒的に有利である。新しいアプリやサービスは、どうしてもiOSから生まれがちだ。本体発売前から、“Pro対応”を謳うペンアプリが多数登場している。“屋外でドローイングに使う”、“アイデアスケッチを練る”といった用途は、iPadProで先に開拓されるだろう。
別の言い方をするならば、iPad Proは“複数の機器を使いわけても元が取れるプロ”に向いた機器であり、Surface Pro 4は“自分のメインPCとして、これだけを使う”形に向いたもの、とも言える。今後状況は変化するだろうが、現状では、意外なほどに“似て非なるもの”と考えるべきである。
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