週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

ぎゃんかわ「飛び猫」ネットで話題に 五十嵐健太さん

2015年11月30日 17時00分更新

 鳥だ! 飛行機だ! いや「飛び猫」さんだ!

 いきなりジェネレーションギャップの地雷を踏んでしまった気もするが気にしない。スーパーマンのようにピョーンと空を飛んでいる猫の姿をとらえた写真集『飛び猫』がヒットしているのはごぞんじかしら?

 ネットで話題になった「飛び猫」の写真を中心に、未発表作品を含む合計130点を収録した写真集。4年間にわたって飛び猫を撮影した五十嵐健太さんは最近、子猫とフクロウの写真集『フクとマリモ』も出版した、売れっ子写真家だ。海外のアート系チャリティイベントにも作品を提供しているらしい。

 けど五十嵐さんは「カメラの仕事をやるとは思ってなかったんです」。写真を撮りはじめたのは「ウェブ」がきっかけだったらしい。どういうこと?

ウェブデザインがきっかけだった

 五十嵐さんは現在31歳。千葉県出身・在住。写真家になる前は普通の事務員。仕事はとても地味で、本人いわく「楽すぎて良くない」くらいの毎日だった。

 やがて五十嵐さんは副業でウェブデザインの仕事をはじめた。

 企業サイトのデザインをする中、素材として写真が必要になった。2008年当時、まだインターネットの写真素材は値段が高かった。仕方なく自分でキヤノンのKissデジカメを買って素材を撮影するようになった。それが始まりだった。

 1年ほど経ったころにはウェブデザインではなく写真家としての活動をはじめた。みずからメールで営業をかけた結果、芸能事務所のプロフィール写真、カレンダーの写真、ペットショップでの撮影会など、さまざまな仕事にめぐりあう。

 撮影した中、見せたときもっとも「喜ばれた」のは子猫や子犬の写真だった。

「人を喜ばせる写真を撮りたいんです。カレンダーを買った人、ネットで見てる人を喜ばせるような写真が。お金が安くても、そういう方が面白い。当時は百円ショップのカレンダーに並んだりすると、名前が入ってなくてもうれしかった」

 やがて猫と犬にふりきって、動物写真家として撮影をつづけていた五十嵐さん。ある日偶然出会ったのが「飛び猫」だったのだ。

偶然出会った「飛び猫」

「飛び猫と出会ったのは、2010年の12月。家の近所に漁港があって、買い物に行くときスナップ写真を撮ってたんです。船の上で猫が寝てたので、これは戻るときにジャンプするんじゃないかな、と思ったんですね」

 昼間、船の上で日光浴している猫たち。夕方になると予想どおり船の上をぴょんぴょん飛び、ねぐらに戻っていった。そこをパチリとおさめてブログに載せたのが「飛び猫」のはじまり。しかし、当時はそんなに反響はなかったそうだ。

「やっぱり大きかったのはFacebookですね」と五十嵐さん。

 昨年1月にFacebookに載せた「飛び猫」写真が大ブレイク。いまでは五十嵐さんのアカウントそのものが3万いいね!を超えている。新聞・雑誌・テレビ・ラジオと取材が殺到し、トントン拍子で書籍化も決まった。

 ブログではなくFacebookでデビューした理由の1つは、アルゴリズム。いまは個人ブログの記事がランキングで上位になって拡散されるより、個人アカウントの発言が爆発的に拡散されることの方が早いという。

「最近はブログランキングでも怪しいものが増えてますしね。まともに運用した場合は、写真の発信力が弱くて埋もれてしまいやすい。その点Facebookでは不正ができないような仕組みになっています。『いいね!』を水増ししたり、意図的に増やすとバレますので、そういった点も気にいっています」

猫の嫌がることは絶対しない

 五十嵐さんは撮影で心がけているのは、自然なままを撮ることだ。

 飛び猫なら、夏は涼しいところに移るし、冬は暖かいところに出る。猫の気持ちになって考えれば、飛ぶまでの行動は予想がつく。

 生後間のない子猫の写真を撮るときは、スタジオに連れていったり移動があったり、負担になるようなことはしない。屋外の猫を撮影するときも、真夏の日なたに無理やり出して撮影したり、猫が嫌がることはしないようにする。

 なるべく動物にストレスをかけず自然な仕草をよく観察し、その瞬間をとらえること。それが動物写真家としての、ごく当たり前の心がけだと考える。

 五十嵐さんがほかの動物写真家とちがうのは、つねにトレンドに敏感でいることだ。たとえば『フクとマリモ』の撮影は、まさに電撃的だった。

 ネットで「かわいいフクロウと子猫がいる」と話題になった翌日には「撮らせてください」と電話をかけて、2~3日後には撮影をはじめていた。まだ出版社の企画は通っていなかったが、いま撮らなければいけないと強く感じた。

「他の出版社もオファーを出してたみたいですが、その人たちは企画を通してからなので撮影開始が1~2ヵ月後。もうフクもマリモも大きくなっちゃっている。あのときのかわいさを撮れたのはすぐ動けたからでした」

 人に喜んでもらうものを一番に撮る。撮りたい絵を無理につくらず、ありのままを撮る。なるべく新しい、しかも他人が見つけてない発表してないテーマを見つけ、いちばん話題になる方法で、プロフェッショナルとして表現する──。

 ネット時代の写真家の姿が、五十嵐さんの姿勢に見えたような気がする。

「今カメラマンはパソコンとウェブの知識がある人のほうが有利で、今まで活躍していた人も価値が薄れてきてしまっていると感じます。ぼくはカメラよりパソコンが得意だったので、そういう知識を生かしていきたいですね」


刊行・イベント情報

『飛び猫』
五十嵐健太
発売日2015年2月20日/A5横/定価1296円

Image from Amazon.co.jp
飛び猫

『フクとマリモ』
五十嵐健太 監修:HUKULOU COFFEE 永原律子
発売日2015年9月26日/A5変形/定価1080円

Image from Amazon.co.jp
フクとマリモ

『飛び猫 カレンダーBOOK 2016』
五十嵐健太
発売日2015年11月13日/A4/定価864円

Image from Amazon.co.jp
飛び猫 カレンダーBOOK 2016 (角川SSCムック)

『フクとマリモ カレンダーBOOK 2016』
五十嵐健太 監修:HUKULOU COFFEE永原律子
発売日2015年11月13日/A4/定価864円

Image from Amazon.co.jp
フクとマリモ カレンダーBOOK 2016 (角川SSCムック)

五十嵐健太 飛び猫写真展
展示内容 飛び猫、フクとマリモ、離島の猫ほか
2015年12月23日(水・祝)~2015年1月5日(火)
※1月1日(金・祝)は休業
入場料:一般(小学生以上)500円
先着2222名にポストカードプレゼント
近鉄百貨店 上本町店 9階催会場
〒543-8543 大阪市天王寺区上本町6-1-55

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります