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非対称デザインのソニー製タブ「Sony Tablet S」:Xperiaヒストリー

2015年10月31日 09時00分更新

 「Xperia Tablet S」から「Xperia Tablet Z」へと進化する前、Xperiaというネーミングに変わる前に苦難の道を歩んだタブレットがありました。それが、ソニーから登場した「Sony Tablet」シリーズです。

 それほど前のことではないのですが、2011年4月にかなり大々的にハードウェア、ソフトウェア、ネットワークといったものを融合したタブレット端末“Sony Tablet”が発表されました。そのひとつがコードネーム“S1”で、「Sony Tablet S」シリーズとして2011年秋に発売されました。

 それまでにも「CLIE」や「Mylo」といったモバイルネットワーク製品は出てはいたものの、継続むなしく消えていっ……いえ、なんでもありません。とても期待値は高く、ソニー第1号のタブレットとして登場したわけです。

 中身はAndroidタブレットで、当時のOSはAndroid 3.1、プロセッサーはNVIDIAのTegra2(1GHz)、メモリーは1GB、ストレージは16GBと32GBの2種類ありました。フロントに30万画素のカメラとリアカメラに511万画素の“Exmor for mobile” CMOSセンサー搭載HDカメラを搭載。構成だけを見ると現行のタブレットとそう変わりありません。

 そして、なんといっても便利だったのはSDカードスロットで、デジカメで画像を記録したSDカードをそのまま挿し込んで見られるという便利さがありました。WiFiモデルに限らず、WiFi+3Gモデルが国内キャリア以外でも取り扱われており、一般購入もできるなど今よりもいいことも結構ありました。

 「Sony Tablet S」シリーズの特徴は上下非対称なデザインで、雑誌を折り返した形状をモチーフにしていたこと。手に持ったときにこの片側に重さが偏ってることで手にかかる負担が少なく、長時間保持しても疲れにくいようにデザインされていました。

 実際に持ってみると約600グラムという重さも、うまい重心の手にかかり具合で意外なまでに軽く思えたものでした。

 液晶ディスプレーは9.4型ワイド液晶(1280×800ドット)で、ソニー独自の「サクサク・エクスペリエンス」というネーミングで、当時お世辞にもタッチ感度はよろしくなかったAndroidタブレットの中で、画面をタッチ操作するときにストレスのない“サクサク”感を感じられました。

 ソフトウェアキーボードは独自のQWERTYフルキーボードで、タイピングのしやすさが考慮されていたり、ウェブページを閲覧する時も“クイックビュー”ブラウザーという技術で、高速かつストレスなくブラウズできました。別売りのワイヤレスキーボードを付ければ、イマドキのタブレット的なの使い勝手も。ハードウェアとソフトウェアの両輪でけっこう頑張ってたんです。そう、あとサービスとコンテンツさえ揃っていれば……。

 ウェブブラウズやメール、アプリで遊べるという点はAnrdoidタブレットなので当たり前ですが、ソニーはタブレットとしての価値を「Sony Tablet S」シリーズに見出そうとしていました。

 ビデオ配信サービス「Video Unlimited(ビデオアンリミテッド)」で映画やアニメ、テレビ番組を見たり、音楽定額配信サービス「Music Unlimited(ミュージックアンリミネッド)」で音楽を聴いたり、初代PlayStationのゲームを「PlayStation Store」からダウンロードして楽しめたり、「Reader Store」の書籍を読めたり、写真を「Life-X」にアップロードしてフォトフレームとして使えたり、可能性はいろいろとあったのですが……。

 当時は「Sony Tablet S」シリーズという器は用意されていたのですが、何しろ独自のサービスが追いついていない印象で、なかなか始まらない、もしくは充実しない、はたまた終了してしまうといったこともあり、タブレットとしてもうひとつ上のステージに上がりきれなかったように思います。

 ややネガティブな話になってしまいましたが、「Sony Tablet S」シリーズが登場した半年ほど経ってから「レコプラ」というアプリをつかって、ソニーのブルーレイディスクレコーダーの録画した番組を転送して見れるようになったりと、遅れはしましたが“使える”タブレットに成長していきました。

 その後、ワンソニーというフレーズとともに「Sony Tablet」という名称は「Xperia Tablet」になり、ここからようやくソニーのサービスや製品との連携が進んでいくことになります。

 「Sony Tablet S」シリーズとしては少々つらい門出ではありますが、ソニーの初代タブレットがあったからこそ、今の「Xperia Tablet」”があると思います。次回はそんな不遇な「Sony Tablet」のもうひとつの名機「Sony Tablet P」シリーズについてお話したいと思います。


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