週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

Apple PayやAndroid Payとはどう違う?

Samsung Payはクレジットカードと完全に同じ使用感! 実際に試した

2015年10月21日 10時00分更新

 スマホを使った非接触型の決済サービスの登場が相次いでいる。サムスンも今年夏から「Samsung Pay」を開始。まず韓国で8月20日から、続いてアメリカでは9月28日からサービスをスタートし、その後はアジアやヨーロッパにエリアを広げる予定だ。

 Samsung Payはモバイル決済技術開発の「LoopPay」を買収しその技術を採用している。Samsung Payは「Apple Pay」や「Android Pay」同様にNFCを使ったワイヤレスの支払いができる。だが、それだけではこの2社のサービスと使い勝手は変わらずSamsung Payをわざわざ使う利用者はいないだろう。実はLoop Payの技術がスゴイのは、一般的な磁気クレジットカードの読み取り機に近づけても支払いが行なえる点なのだ。

 なお、Samsung Payの技術的な部分はこちらの記事が詳しい。

Apple Payと何が違う?『Samsung Pay』の秘密に迫る:MWC 2015
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/311/311067/

NFCだけではなく磁気カードリーダーでも使えるSamsung Pay。アプリは日本語にも対応している

NFCによる非接触通信ではなく
スマホに搭載した専用チップで磁気リーダーに読ませる

 Samsung Payに対応した端末には専用のチップが搭載されている。店舗でクレジットカード支払いする際に、このチップを搭載した端末をカードリーダーに近づけるだけで、クレジットカードをリーダーに通した状態になるのだ。Apple PayやAndroid Payを使うためには、店舗側でリーダーをNFC対応のものに入れ替える必要がある。だが、Samsung Payは既存のクレジットカードリーダーでそのまま利用できるというわけだ。

 つまり店側は何の投資も必要なく、現状のPOSそのままでSamsung Payの支払いに対応できるのである。利用者側もお店に「Samsung Payが使えますか?」と聞く必要もない。磁気クレジットカードが読み取れる普通のPOS端末のリーダーなら、ほぼSamsung Payがそのまま使えるのだ。

3大クレジットカードに加え、アメリカと韓国の主要銀行などと提携している

韓国版Galaxy S6 edgeで試してみた

 では実際にSamsung Payを使ってみよう。現在対応している端末は「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」、そして9月に発表された「Galaxy S6 edge+」「Galaxy Note 5」の一部地域のモデルのみ。日本発売のS6とS6 edgeは非対応だ。今回試したのは韓国版のGalaxy S6 edgeで、最初にサービスがローンチされた韓国で利用してみた。

 Samsung Payのアプリはシステムを最新バージョンにアップデートすれば自動的にインストールされる。S6 edge+とNote 5は最初からプリインストール済みだ。アプリを起動して規約に同意後、まずは認証に使う指紋の登録を行なう。これはシステムのロック解除認証と同じものを利用するので、あらかじめ指紋を登録している場合は再登録は不要だ。

Samsung Payは最新ファームで自動的にインストールされる

 次にカードの登録を行なう。登録画面ではカメラが起動するのでカードをスキャン。するとカード番号などが読み込まれる。読み込まれなかった情報は手動で入力すればよい。なお、韓国での利用には韓国の住民登録番号が必要だ。今後他国で展開される際は、各国ごとにクレジットカード以外の個人認識情報が必要となる場合もあるようだ。

アプリからカードをスキャン、簡単に登録できる

読み取れなかった情報やCVCコード、住民登録番号などは手入力できる

 そして改めて規約に合意、SMSで登録を認証した後、クレジットカードのサインを画面のタッチパネル上に指先でなぞるように入力する。店舗でクレジットカード利用時の控えにサインが必要になった際、店舗側では実際のサインとこの画面に書かれたサインを照合するというわけだ。複数のカードを登録する場合は続けて別のカードを登録していけばよい。

最後にサインをする。このサインがクレジットカードの裏面のサインと同じ役割をする

 さてカードの登録が終われば、Samsung Payが常駐し画面の一番下にカードの頭の部分がちらりと見えた状態となる。ここで指先でカード部分を上にスワイプすれば画面にカードが現れ、すぐに支払を行なうことができるのだ。

Samsung Payのカード登録が終わるとアプリが常駐。画面の下にカードの端が見える

クレジットカードのようにスムーズに使えた!

 それでは店舗で使ってみよう。まずは支払い時に端末の画面にカードを呼び出し、次に指紋をホームボタン上に置き本人認証を行なう。認証が終われば画面上に「端末の背面をカードリーダーに近づけてください」と表示されるので、端末を店員に渡しカードリーダー付近に近づけてもらう。

指先でカードをスワイプして上に引き出す

カードが現れ、すぐに支払ができる

指紋認証を行ないOKとなると、端末をカードリーダーに近づけるように指示される。カード番号は画面に表示されない

 するとカードリーダー側にはクレジットカード情報が転送され、普通の磁気カードを通した状態と同じになり、リーダー端末の画面にカード情報が表示される。ここでサインを求められるので磁気カードを使った時と同様にサインをすれば、あとはレシートが出てきて完了だ。

磁気リーダー部分に端末を当てる。リーダーの画面には見にくいがカードの番号が表示されている

韓国ではカード払い時に左の手書きパッドにサインをする。認証が通ればレシートが出てくる

 つまりSamsung Payは端末内で支払が完了するのではなく、スマホをクレジットカードそのものとして利用するのだ。スマホのNFC機能をONにする必要もないし、スマホの裏面の特定部分を店側の支払い機のNFCリーダー部分にずれないように接触させる必要も無い。使い方が簡単なこともあってか韓国では開始から1ヵ月で利用金額が3000万ドルに達したとのこと。これは1日当たり約1億2000万円に相当する。

ローカルなスーパーでの利用も問題なし

 筆者が今回Samsung Payを試したのは韓国でも都会のソウルではなく、リゾート地の済州島。美容室でSamsung Payを使おうとしたところ「はいはい」と何の疑問もなくスムースに端末を受け取りそのまま支払いができた。美容室と言うこともあり若いお客さんがたまに使っているとのことだった。

 また、ローカルなスーパーで若干年配のパートの店員さんに支払いの時に「Samsung Payで」と言うと、だまって端末をレジ状のPOS端末のカードリーダー部分に置いて決済処理をしてくれた。その後文房具店やファーストフード店など10店舗くらいで利用したが、どこの店でも店員が戸惑うことなくSamsung Payを使うことができた。Samsung Payが簡単に使えるからこそ利用者が一気に増えているのだろう。

 もちろん今後はApple PayやAndroid Pay、あるいはマスターカードやVisaカードのスマホNFC決済システムが各国で広がり、店舗のPOS端末もNFCリーダー対応のものに入れ替わっていくだろう。だが、店側がNFCに対応したからといって、消費者がいきなりスマホのNFCを使って支払いをはじめるとは限らない。筆者は年数回アメリカに行くが、スマホを使って支払いを行なっている人を見かけることは滅多にない。

 Samsung Payは磁気カードリーダーだけではなくNFCに対応している。そのためまずは消費者に磁気カードリーダーを使ったモバイルペイメントに慣れてもらい、店側のNFC対応が進めばNFCに切り替えてもらう、という将来へのアップグレードも見込むことができる。この点は他社のモバイル支払いサービスより大きなアドバンテージを持っていると言えるだろう。実際に済州島でSamsung Payを使っている人数名に話を聞いたが、いずれの人も今まではスマホ使って店で支払いを行なったことなどなかったとのこと。

店舗側はNFCリーダーの追加が不要なのが最大のメリット
対応端末の増加や他国でローンチに期待

 なお、韓国で利用するには居住者でありクレジットカードを所有している必要がある。だが、アメリカならばプリペイド式のクレジットカードがあることから、旅行者でもそれらを買ってSamsung Payに登録して使うことができるかもしれない。筆者も次回の渡米時はぜひ試してみようと思っている。

 対応端末がGalaxyの最新モデルのみという点でApple PayやAndroid Payより利用可能機種が少ないのがSamsung Payの欠点だ。しかし非NFC対応のPOSでも利用できる点は逆に大きな長所である。あとは消費者がスマホを取り出して支払いをするようになるかどうか。その動機づけをうまく誘導できればSamsung Payを使いたいがためにGalaxyを選ぶ、という消費者も出てくるだろう。今後の各国での展開には注目したい。

山根康宏さんのオフィシャルサイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう