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病気のWikipedia、MEDLEY(メドレー)に新機能

病気の早期発見に最適 驚きの”症状サジェスト付き”検索現る

2015年10月02日 09時00分更新

 これまでになかったようなカラダの不調や違和感を覚えたとき、「○○ 症状」といった検索以外の選択肢として使えそうだ。

病気の検索方法に新しい選択肢が登場した。

 1日、オンライン病気事典MEDLEY(メドレー)は検索機能を向上させる『症状からの病気検索』をリリースした。

 基本的な利用方法は以下のとおり。

1.病名がわからない人のために、複数の症状から病気を検索可能
2.症状の組み合わせをサジェストし絞り込みを容易に
3.医師の知見を踏まえた独自プログラムで、検索結果の表示順を工夫

 ポイントは、現役の医師らが日々更新している1300以上の病気の情報を網羅したデータベースから、マイナーな病気であっても検索結果に出てくる点。複数の症状から素早く病気を検索できるのが特徴だ。
 

↑例えば不調を感じた部位を入れるだけで、症状の候補がサジェストされる。
 

↑さらに症状を組み合わせることで、検索結果がより絞り込まれる形だ。
 

医師にかからないとわからないような病気も網羅

 今回の機能のリリースは、多くのユーザーから「病名が分からないから、症状で検索できるようにしてほしい」との要望が寄せられてきたことに対応したものだという。

 1つの症状に基づいた検索を行うだけでは、該当する病気が多すぎるため、目的の情報になかなかうまくたどり着けない。インターネットでは、関係ない検索結果も多く、調べるには個人の検索リテラシーが高くないと困難なためだ。

 結果として表示される症状の組み合わせには、サジェストによる絞り込みだけでなく、その裏側に医師の知見を蓄えた独自のプログラムを走らせ、表示順を工夫しているという。

 同社独自の医療用演算システム「Mogul(モーグル)」は、医師が作成した複雑かつ大量のデータを読み込み、それを高速な計算が可能な形に変換する。ユーザーが設定した一連の症状から大量の演算処理を瞬時に行い、病気の優先順位付けをして返すのだという。

 あくまで優先順位付けは確率計算によるものだが、基本的には多くの人が罹患する病気、重篤度が高い病気、またユーザーが設定した症状がその病気に特有のものである病気ほど順位が高くなるようになっている。

 風邪や片頭痛といった病気にかかっているような場合、ほとんどの人は「症状からの病気検索」を使うまでもなく病名が思い浮かぶことが多い。だが、これまでなかった異変が身体に出ているケースなど、医師にかからないとわからないような病気の早期発見にはかなり効果的といえる。

ユーザーが気になる症状をすぐに調べられるように

 さらに今回、開発に当たったメドレーの石井大地執行役員に直撃してみた。

――一般のユーザーや医療従事者には、どのようなメリットが生まれますか?

 これまでMEDLEYには病気ごとのページがあるだけでしたので、「症状を検索する」という患者さんの行動に対し、うまくアプローチできませんでした。

 体調が悪くて悩んでいる患者さんが、「自分は何の病気だろうか」と思ったら、第一に医療機関をきちんと受診することが大切です。しかし、病院に行って医師と会うまで何も分からないというのでは不安ですよね。

 多くの人は、「頭痛」「吐き気」といった症状を示すキーワードで実際にウェブ上の情報をかなり頻繁に検索しています。ところが、出てくる情報の多くは患者さん側の体験談であったりして、医学的・医療的に必ずしも正しくない可能性があります。

「症状からの病気検索」機能は、実際の患者さんの行動に沿う形で情報を提供することで、結果的に患者さんが信頼できる情報を得られる可能性を高めます。

 医師・医療従事者の方にとっても、患者さんが間違った情報に振り回されたり、逆に「私は大丈夫」と安心されてしまうよりも、その方がずっと診察がしやすいはずですし、また診察後のフォローも楽になるのではないでしょうか。

――医療用演算システム「Mogul(モーグル)」はどのように開発されたのでしょうか。

 本機能の中核にある医療用演算システム「Mogul」は、医師による診断プロセスの一部をコンピューターによって支援できるようにと設計された、医師・統計学者・コンピューター技術者による共同作業の成果です。

 医師が作ったデータと統計学者が考案したアルゴリズムを受け取り、実際に使えるサービスに落とし込むところには特に注力しました。

 計算量が非常に多いシステムなので、開発初期では、1回の検索に3分もかかったりもして、正直、「使い物になる機能にはらないかもしれない。せっかく作ったのにボツにするしかないかも」と悩みました……。

 最終的には統計学者と一緒にアルゴリズムを再考し、処理を速くするためにさまざまな工夫をして、「1回のリクエストに対し、コンマ数秒で反応する」というスピードを実現できています。

――同様の取り組みは世界的にあるものでしょうか。

 米国WebMD社などは、より診断に近い「Symptom Checker」というのを出しています。これは性別や年齢を入れて、かなり細かく症状を診断していくタイプのサービスです。

 また業務用には、IBMのWatsonや、イザベルなどの診断支援システムもあります。

 ただ、私たちはどちらかといえば、ユーザーが気になる症状をすぐに調べられるように、というスタンスで作っています。現時点でこれらのシステムと同等のものというわけではないですが、かなり長期的な展望ですが、ゆくゆくは性能を向上させ、医療現場を支援できるような水準にまでもっていけたらと思っています。

――今後の取り組みについて教えてください。

 2月のMEDLEYリリースから、4月に「MEDLEYニュース」を配信開始し、7月からは薬の情報を提供開始しました。 そして本日、10月1日に「症状からの検索」をリリースできました。

 私たちは2~3カ月スパンで大きなアップデートを続けてきました。 2015年末にも、次の大型アップデートを予定しており、その準備も進んでいます。さらに、MEDLEYには既に様々な医療情報が集積されていますので、これをベースに様々な派生サービスのリリースや、他社との提携・協業を進めていきます。

 こうした機能開発も交えながら、日本の医療上の課題を1つ1つ解決してゆくと同時に、東京のスタートアップシーンも盛り上げていきたいと考えています。

■関連サイト
『症状からの病気検索』

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