「アニソンの記憶」もとにチューニング
──記憶をひっぱりだすって、どうするんですか?
レッド・ツェッペリンなりビートルズなり、聞きこんだ曲は「ここがこうだ」という部分がありますよね。もちろんハイレゾが出て「ここはこうだったのか!」という発見はありますが、何回も聞くと“脳内補正”がかかってくるものです。
──メロディーも歌詞もおぼえちゃいますからね。
アニソンで唯一と言える特徴は「基本的に歌ものである」こと。アニソンは子供に短時間で「何がどういう形で出るか」を伝えないといけない。そこから独特のキャッチーさ、節回しが出てきました。基本的にはメロディーがあって、歌詞がある。なので、あえてボーカルにあたる音域をおさえたんです。
──え、目立たせたんじゃないんですか。
遠くに音を置くことで「あれっ」と思う。でも聞いてると、ここはこうだよな、という経験から、そこを補正してくれる。聴覚の感度調整とかを頑張ってもらうと、ボーカル周辺の音、いろんな構成要素が入っていて、そこを一緒に持ち上げてもらう。マキシマイザーがかかったような感じになる。
──人間の性質をイヤホンの一部として使おうとしたわけですか。
そうです。ただ、コンセプトとして伝わりづらかったんですよね……パッと聴くと「アニソン専用と言っているのにボーカルが遠い」と言われてしまって。乗り越えた人はすごくワン・アンド・オンリーなものになるんですけど。
──上級者向けすぎたと。それで新作の開発につながったわけですね。
2014年のヘッドホン祭りに出した『Aya』ですね。Monetの反省を踏まえ、Ayaは真逆に振りました。上下の音域は変えず、ボーカルをはきはき出るようにして「あ、そうそう。こういう感じ」と、わかりやすくした。その経験を踏まえて作ったのが、『Monet17』でした。ユニット構成は初代と変えずに3ウェイ・3ユニット・4レシーバー。意図的に押さえていたボーカル帯域を上げるためネットワーク(帯域の振り分け部分)を再調整したんです。
──AyaとMonet17で、傾向にちがいはあるんですか?
Ayaはあっさり、Monet17はこってり、という感じです。Ayaはボーカルの張り出こそはありますが、過不足なく、というのは心がけています。
──基本は歌ものに合わせてチューニングしたと。
ただ「アニソン専用だからボーカルが」ということではないんです。さっきも話したとおり、アニソンにはあらゆる音楽ジャンルが入っている。アニソンがちゃんと聴けるところまでいったら、そのイヤホンは、なんでも聴けるということになる。ロックやジャズやクラシックがシームレスに聴けるので、iPodに入っている曲をザッピング的に聴くもよし、と。
──あらゆる音楽ジャンルをおさえたオールラウンダーができると。
変な話、ジャズなんていうのはどんなイヤホンやスピーカーでも鳴るわけですよ。音楽として完成されていてレンジが狭いので、どんなスピーカーでもきれいに聴こえる。それに「ナニナニ用」というのはキャッチコピーとしてはわかりやすいし、マーケティングにはいいですよ。ただ「これはアニソン向けです」と言われたとき「それ、どの辺がアニソンなんですか」と聞いてみたい気がしますね。
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