NVIDIAはデスクトップ用ハイエンドGPU『GeForce GTX980』を、性能を損なうこと無くノートPCに納められる新GPUを発表した。
これまでに、デスクトップ用CPUを搭載する製品や外付けでデスクトップGPUを増設する仕組みは存在していたが、デスクトップ用GPUをそのまま搭載するのは初となる。
NVIDIAは“enthusiast(熱狂的なユーザー)”向けとし、記録を破りたい、キャパシターなど細部のコンポーネントにベストを求める、限界までオーバークロックしてみたい、というユーザー向けの仕様になっている。
ノート用GPUでは『GeForce GTX980M』が最上位GPUとしてあるが、ネーミングは“M”をとった『GeForce GTX980』となった。あえてデスクトップ用と同じ名前にして、その性能の高さを印象づける狙いだ。
これまで、ノートPCはデスクトップPCに劣る性能、というイメージだった。ノート用GPUは効率が上がり、Maxwell世代ではデスクトップの75%の性能まで迫り徐々にデスクトップ用GPUとギャップが埋まってきたという。しかし、実使用の体感では、ノート用ハイエンドGPUでデスクトップ用ミドルレンジクラスGPU相当といった性能だった。
今回発表されたノート用GTX980は、デスクトップ用GTX980とスペックは全く同じだ。2048基のCUDAコアを搭載し、ベースクロック1126MHz(ブーストクロック1216MHz)をクロックダウンすることなく動作する。GTX980Mより35%高速化しているという。
NVIDIAのテストによると『3DMark』のFireStrike Extremeベンチマークでは、デスクトップ用GTX980を超えるスコアーが出ている。これは、ノート用GTX980のほうが、インプリメント(実装)面積が小さく、4-8フェーズ電源回路を採用し、効率化していることが要因とのこと。
そのほか、キャパシターやインダクターといったコンポーネントも厳選したことで、GTX980Mよりピーク電流が50%多い。これによりオーバークロックの余裕があり、これまでのノート用GPUではできなかった“限界を狙う”OCも可能だ。コアのOCが1500MHz、メモリーが7.5GHzを記録している。
OEMメーカー各社は独自のツール(ソフト)を用意する予定だ。オーバークロックが可能なほか、今回はファンコントロールにも注力している。これまでは、ノート用GPUではCPUとファンを共有しているため、ユーザーが自由にコントロールすると問題が発生する可能性があったのでロックされていた部分だ。
“キラーフィーチャー”としたのがVRへのサポート。2016年には500万台のVR HMDが市場に出回る、とも予測されているため、VRはNVIDIAとしても無視できない存在だ。
“サポート”の意味は、各社のVR HMD製品が要求する“解像度と描画スピードを満たす”性能をもっているということ。VR表示は両目用に高解像度の映像をレンダリングし、かつフレームレート90fpsを確保できていないと“VR酔い”しやすく、体験を大きく損なうと言われている。要するに、GTX980Mでは十分な性能ではなく、ノート用GTX980なら性能面で問題ない、ということだ。そのほか、VR用に最適化されたドライバをリリースし、プラグインプレイで出力できるDirectモードをサポートする。
搭載する製品は、先頃発表されたインテルのSkylake『Core i7-6820HK』などといった、倍率ロックフリーCPUと組み合わせた“ダブルOC”モデルなども登場予定だ。発熱が心配だが、ヒートパイプをより大きくし、GTX980Mより2倍冷却性能を高めたという。さらにIFA2015で発表された、世界初となるASUSの水冷ゲーミングノートPC『GX700』をベースにした製品も登場するようだ。そのほかSLI仕様であったり、G-Syncディスプレー対応機もある。
今回デモで用意されていたノート用GTX980搭載施策機は以下の3機種。
・主なスペック
GPU:GeForce GTX980、CPU:Core i7-5700HQ、メモリー:16GB、液晶ディスプレー:17.3インチ(1920×1080ドット、G-SYNC対応)、OS:Windows 8.1、インターフェース:HDMI×2、mini Displayport×1
・主なスペック
GPU:GeForce GTX980、CPU:Core i7-6820HK、メモリー:16GB、液晶ディスプレー:17.3インチ(1920×1080ドット、G-SYNC対応)、OS:Windows 10、インターフェース:HDMI×1、mini Displayport×1
発表会では、CLEVO P870DMを用いて、テスクトップ用GTX980とのベンチマーク比較を行なった。デスクトップPCの主なスペックは、GPU:GeForce GTX980、CPU:Core i7-4790K、メモリー:16GB、OS:Windows 10。
・CLEVO P870DMの主なスペック
GPU:GeForce GTX980、CPU:Core i7-6700K、メモリー:16GB、液晶ディスプレー:17.3インチ(1920×1080ドット、G-SYNC対応)、OS:Windows 10、インターフェース:HDMI×1、mini Displayport×2
TomRaider | ||||||
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ノート用GTX980 | 最低78fps | |||||
デスクトップ用GTX980 | 最低76fps |
3DMark FireStrike Extreme(Graphics score | ||||||
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ノート用GTX980 | 6158 | |||||
デスクトップ用GTX980 | 最低5982 |
ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク | ||||||
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ノート用GTX980 | 12552 | |||||
デスクトップ用GTX980 | 12415 |
ノート用GTX980のほうが良い数字を出しているが、これは間違いではない。前述の通り、効率が良い設計がわずかながらスコアーに影響している。
かなり挑戦的なGPUだが、性能は確かにデスクトップと同等。しかし問題は価格だ。搭載するノートPCは日本円で30万円からスタート、ということも容易に想像できる。一般ユーザーにはなかなか手が届かない製品になりそうだが、特にVRに十分な性能という面で、デスクトップに比べればはるかに持ち運びがラクなので、今後企業でのVRデモ用にも活用できそうだ。
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