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世界初の指紋・脈波・静脈を同時計測可能な薄型イメージセンサー

2020年01月21日 18時30分更新

 ジャパンディスプレイは1月21日、世界初を謳う、指紋・静脈・脈波を計測可能な新型の薄型イメージセンサーを発表した。同日には説明会を実施し、本イメージセンサーの概要を説明するとともに、プロトタイプの展示も行なった。

 イメージセンサーとは、光の信号を電気信号に変換する2次元センサー/撮影素子のことを差し、例えば照射した光の透過などを利用して、体内の血管の様子を撮影するといったように利用できる。

 今回新開発したイメージセンサーは、高速読み出し、高解像度撮像を両立する非常に薄型のイメージセンサー。

 国立大学法人東京大学大学院の工学系研究科染谷研究室と共同で開発されたものであり、開発における研究成果は、1月20日(英国時間)に英国科学誌「Nature Electronics」のオンライン版で公開されている。

 イメージセンサーを用いて生体認証向けの指紋・静脈の撮像を行なうには、指紋の溝や静脈の形などを正確に認識できる高解像度が必要になる。対して、脈波の分布計測には、秒単位で時間ごとの数値を計測しなければならないので、高速な読み出しが必要になる。

 なのでこれらを同時に記録するためには、高解像度・高速読み出しが同時に必要だが、本イメージセンサーではこれらを実現している。解像度は508dpi、読み出し速度は41fpsになっており、厚さはわずか15マイクロメートルのため、柔軟性があり曲げることも可能。

 

センサーの性能表。本機はプロトタイプのため、製品化段階ではスペックは変わる場合がある。外部量子効率とは、簡単に言えば光からどれだけの信号を得られるかという数値とのことで、本センサーでは近赤外領域に対応。体内の撮像に適した高効率を実現しているという。

 今回のセンサー開発においては、従来ジャパンディスプレイが開発してきた液晶ディスプレーの「低温ポリシリコン薄膜トランジスター(LTPS TFT)」の技術を、センサーに応用することで実現可能になったとのこと。

 TFT(薄膜トランジスタ―)は、ディスプレー画面のドットを構成する素子を制御するために用いられるものだが、同社では従来採用されていたa-Si TFTに比べ、電子の移動度が高く性能が高いLTPS TFTを用い、より高精細なディスプレーの開発を進めていた。

 今回の新センサーでは、このLTPS TFTを採用しプロセスを低温化することで、高効率の有機光検出器を低損傷で集積化できるようになったという。

LTPS TFTの技術を応用し、今回のセンサーを開発

センサーの構造図

 本センサーの展望については、まずは生体認証によるセキュリティー分野での採用を想定しており、後々はバイオ分野での応用も考えているという。

 指紋や静脈の生体情報に加えて、脈波の生体信号を取得可能とすることで、模倣や「なりすまし」を防止する安全性の高い認証システムの実現が期待できるとしており、製品化の目途については、3年ほどを目安に考えているとのこと。

 また、軽量/薄型で曲げることができる特性を生かし、ウェアラブル機器に組み込むことで、健康状態を把握するための機器としても利用できる。日本では高齢化が進んでおり、同社ではこれからの時代の健康維持を見据えた意味でも開発の意義があるとした。

 今回の説明会では、センサー内蔵の台に指を置いて各データを計測するタイプと、腕に巻き付けて静脈を撮像するタイプの2つを展示していた。

指紋・脈波・静脈の様子を同時に計測できる台型プロトタイプ

腕に巻き付けて手首の静脈を撮像するプロトタイプ

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