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「特務機関NERV」がアウトランダーPHEVの災害対策車両を開発したワケ

2019年12月28日 12時00分更新

 防災気象情報を提供するTwitterアカウント「特務機関NERV」の運営会社であるゲヒルンは、三菱自動車とスカパーJSATと共に、災害における長期停電や通信網の途絶時に備え、災害対策車「特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)」を共同開発。2月1日より東京と北海道に配備することを発表した。

リアドアにはNERVのマークが!

「特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)」の弐号機(左)と初号機(右)。5LA-GG3WはアウトランダーPHEVの型式だ

公共性が求められるサービスゆえに開発・配備

 Twitterに触れたことがある人なら、誰もが地震・津波・噴火・特別警報などで「特務機関NERV」のツイートがタイムラインに流れてきたことがあると思う。ゲヒルンがこのサービスを開始したのは、東日本大震災の頃から。以来、Twitterを通じて今日まで24時間365日休むことなく防災情報を多くの人に届けてきた。

「特務機関NERV」を一躍有名にした節電を呼びかけるツイート

 専用描画エンジン開発し、気象庁やNHKよりも早く防災情報を届けていることは誰もが知るところだろう。今年9月1日には利用者の現在地や登録地点に基づき、最適化して防災情報を配信するスマートフォン用サービス「特務機関NERV防災アプリ」をリリース。その結果、今まで総インプレッション数(表示回数)は約37.4億回、SNSとアプリを合わせると約130万ユーザーに防災情報を届けるまでに成長。今や政府に認定される報道機関に認定される公共性のあるサービスとなった。

「特務機関NERV」のツイート例。誰もが一度は目にしたことがあるだろう

 その中において「自ら被災した際、どのようにしてサービスを継続するか」という問題が出てきたと代表の石森氏は語る。「サーバー自体は全国各地のデータセンターを利用することで冗長性をもたせているが、それをコントロールする自分たちが被災した際のコントロールが難しい」という問題が出てきたそうだ。自分たちも被災し電源やインターネット回線が使えなければサービスが提供できない。公共性が求められるがゆえに、「電源搭載インターネット接続車両」が必要となったわけだ。

ゲヒルンの石森氏

 三菱自動車のSUV「アウトランダーPHEV」に、スカパーJSATの衛星インターネット回線の送受信システム、さらに内閣府の衛星安否確認サービス「Q-ANPI」端末を搭載。災害時において衛星経由で避難所の位置や開設の情報、避難者数や避難所の状況を通知し、被災状況の把握や救難活動に不可欠な情報を伝える。

「特務機関NERV制式 電源供給・衛星通信車両5LA-GG3W(改)」の目的

 石森氏は「この車両は自分たちのサービスを継続する『自助』のほか、自分たちが必要としない時は、近隣自治体の災害対策本部・避難所等に出動し、給電・充電サービスや電話サービス、WiFiインターネット接続サービスなどを提供・支援する『共助』、そして(Q-ANPIを通じて)情報を発信する『公助』を目的としています。このような車両が災害対策モデルケースとなり、自分たちだけでなく、自治体や企業が用意すれば、全国で災害時における電力と通信が可能になる」と語る。

Q-ANPIシステム

自助、共助、公助の三本柱

 車両を提供した三菱自動車国内営業本部の高橋さんは「今回、ゲヒルンの計画に賛同し、アウトランダーPHEVを2台提供しました。アウトランダーPHEVは1台で一般家庭1日分の給電能力を有するだけでなく、発電機能も搭載しており電気がない状況でも長期に渡り給電を可能としています。昨年の北海道を襲った地震や、今年の千葉県大停電でも、被災地に出動し電力供給を行った実績もあります。今ではJR東海さんをはじめ、企業や自治体にも納車しています。今回のケースが「動く蓄電池」として機能することを期待しています」と挨拶した。

三菱自動車の高橋さん

アウトランダーPHEVは最大1500Wの電力供給が可能だ

 インターネット接続は衛星回線を通じて行なう。このサービスを提供するのがスカパーJSATの通信網だ。車両のうち東京地区に配置する初号機の天井には、平面アンテナ端末を搭載。従来のパラボラアンテナと異なり、衛星を自動補足・追従し、誰でも簡単に双方向通信を可能とするという。ちなみに今回の車両では、ダウンリンク5MB/s、アップリンク3MB/sの速度が出るそうで、サーバーメンテナンス等の業務において十分な速度が確保できるという。

ルーフキャリアの上に搭載された衛星アンテナ

衛星アンテナを上から見た様子。ケイメタ社製の平面アンテナが用いられる

平面アンテナのメリット

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