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東京モーターショー 2019

クルマから変速機は絶対なくならない言い切るEXEDYの挑戦

2019年11月02日 11時30分更新

超小型EVにこそトルクコンバーター式変速機

 クラッチやトルクコンバーター等の製造でトップクラスのサプライヤーであるEXEDY。SUPER GTやD1グランプリなどでそのロゴをご存じの方は多いはず。そのEXEDYが東京モーターショー2019で挑戦的な出展をしています。

 自動車の電動化に伴い変速機、いわゆるトランスミッションが消えていくと言われています。モーターの回転力を直接ホイールに伝えることで走る、インホイールモーターの存在がその理由です。しかし、インホイールモーターの普及にはまだまだ時間がかかりますし、原付き四輪と言われるカテゴリーの一人乗り超小型電気自動車にはモーターを2つ以上搭載するインホイールモーターはコストが掛かります。

 原付き四輪にカテゴライズされる超小型EVには0.59kwというモーターの出力規制があり、特に登坂路では非力さが目立ち、坂を登りきれないこともあります。そんな場合にトルクコンバーター式の変速機を装備してあれば、速度は遅いながらも登り切ることができるのです。

 モーターからの回転をトルクコンバーターで減速すれば、タイヤへのトルクは増えていきます。速度が出ない代わりに坂道や重量物積載などの負荷や荷重に対応できるのです。一方、トルクコンバーターで加速すれば負荷や荷重には弱くなりますが速度を上げることができます。

 原付き四輪は最高速度が法規で設定されているので、最高速度を上げる必要はありませんが、例えば酒屋さんの配達で店の人が乗ってビールケースなどの荷物を載せて坂道を登るというような場合は本当に役に立ちます。

 そういった電気自動車に対応したトルクコンバーターのコンセプトモデルが、今回の東京モーターショー 2019におけるEXEDYの挑戦なのです。

トルクコンバーターをモーターで包む
HVシステムの小型簡素化にも挑戦!

 クルマの電動化の初手とも言えるハイブリッドシステムは、まだまだ軽自動車には普及していません。軽自動車の場合、ガソリンエンジンの先はいきなり電気自動車となり、過渡的技術であるハイブリッドが普及しづらいことに原因があります。エンジン廻りやトランスミッションにモーターを組み込むスペースがないからなのです。

 軽自動車のエンジンとCVT式変速の間にはトルクコンバーターが入ります。エンジンとCVTを直結してしまうと、ダイレクトにトルクが伝わることで発進の際にガツンと加速し、ギクシャクした運転になってしまいます。そのほか、トルクコンバーターで緩やかにトルクを伝え、スムーズな発進加速をさせていきます。

 そのトルクコンバーターをモーターで包んでしまうという発想でできたのが、このEXEDYブースに展示された「ダイレクトドライブ iSG」。トルクコンバーターをモーターで包むことでエンジンのトルクにモーターのトルクを上乗せし、パワーを上げたり、モーターだけのトルクでクルマを走らせることも可能。また、減速時は車輪からの回転トルクで回生充電もでき、エンジン始動時はセルモーターにもなります。

 なぜトルクコンバーターをモーターで包むだけでこれだけのことができるかと言うと、トルクコンバーターはオイルなどの流体でトルクを伝えるため、その流体を制御することでさまざまなモーターの活用ができるのです。つまりエンジン側から車輪へのトルクの流れはモーターとして、車輪からエンジンに向かうトルクの流れは回生装置として取るコンバーターを介することで制御できるのです。

 クラッチやトルクコンバーターなど、つないで伝えることをメインにモノづくりをしているEXEDYならではの発想からうまれた「ダイレクトドライブ iSG」。すでに軽自動車でのテスト走行も大成功とのことで実用化間近の技術として注目されます。

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