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ベンチマークでわかったGTX 1660 Ti寄りの性能

GeForce GTX 1660 SUPERと1650 SUPER発表、“中原の覇者”はNVIDIAか?

2019年10月29日 22時00分更新

 2019年10月29日22時、NVIDIAはTuring世代の新ミドルレンジGPU「GeForce GTX 1660 SUPER」及び「GeForce GTX 1650 SUPER」の2製品を発表した。GTX 1650 SUPERは11月22日発売だが、GTX 1660 SUPERについては同時刻に販売も解禁された。アメリカの希望小売価格は229ドルだが、国内の初値は3万円台前半~中盤になる見込みだ。

7nm Radeonのミドルが出る前に中原を制するNVIDIA

 同社は2月から“月間Turing GTX”と言わんばかりにGTX 1660 Ti、GTX 1660、GTX 1650と立て続けにミドルクラス向けのGPUをリリースしたが、わずか半年強でラインナップをテコ入れして隙間を補強するというドミナント戦略を展開している。GTX 1660 SUPERは「GTX 1660とGTX 1660 Tiの間」、GTX 1650 SUPERは「GTX 1650とGTX 1660の間」を埋めるための製品という位置付けだ。

 この執拗なミドルクラスの増加は、明らかに最近のAMDへの牽制だろう。7月にAMDがRadeon RX 5700シリーズを投入するタイミングに合わせ、性能と価格で競合しそうなGeForce RTX 2060~2080のラインを見直し、RTX 2060 SUPER~RTX 2080 SUPERを送り込んだ。今回のGTX 1660 SUPERとGTX 1650 SUPERも、そろそろAMDが投入すると噂されているNavi世代のミドルクラス「Radeon RX 5500シリーズ」を迎撃するための布陣と考えられる。

 つまり、今回NVIDIAはビデオカードの“中原”を制するために新GPUを送り込んだのだ。ユニークなのが、肥沃な(購入ユーザー数の多い)中原を優先的に獲りにいくというのは、かつてAMDの十八番だったところだ。

 例えば、Sea Islands(R5/7/9 200シリーズ)からPolaris(RX 400シリーズ)までの流れがまさにそれに該当する。逆に、NVIDIAはハイエンドを先に出してミドルを遅めにリリースするのが習わしだったが、AMDが7nm世代のミドルをなかなか出せない状況を好機と判断し、先に中原を平定しにかかったように見える。

 今回はASUS製のGTX 1660 SUPER搭載ビデオカード「TUF 3-GTX1660S-O6G-GAMING」を試用できるチャンスに恵まれた。既存のGTX 1660とGTX 1660 Tiとのパフォーマンス差をチェックしたい。なお、GTX 1650 SUPERのレビューは来月までお待ちいただきたい。

GeForce GTX 1660 SUPER搭載ビデオカード「TUF 3-GTX1660S-O6G-GAMING」。3連ファンを採用するTUFシリーズのオーバークロック(OC)モデルで、予想実売価格は3万6900円前後

ビデオメモリーはGDDR6へ軸足をシフト

 ではGTX 1660 SUPERと、GTX 1650 SUPERのスペックから確認していこう。GTX 1660/1660 TiはTU116コア、GTX 1650はTU117コアと使い分けられてきたが、今回の新GPUはどちらもTU116ベースとなる。

 注目すべきはビデオメモリーの構成で、GTX 1660 SUPER/1650 SUPERともにGDDR5ではなくGDDR6メモリーを採用している。RX 5500を迎え撃つためにこうなったのか、単にGDDR6のコストメリットがGDDR5を上回ったのかは不明だが、いずれにせよいよいよGDDR6へ完全に軸足が移ったと考えてよいだろう。

 また、TuringのTU116コアベースなので設計的な新規要素はまったくない。TU116の詳細についてはGTX 1660 Tiレビュー時の記事の前半部分を参照していただきたい。

GTX 1660 SUPER/1650 SUPERを含む、GTX 16シリーズのスペック比較

「GPU-Z」で検証に使用したGTX 1660 SUPER搭載ビデオカードの情報を拾ってみた。ベースはリファレンス仕様だが、ブーストクロックが1785MHz→1830MHzに若干OCされている

カードのPower Limitは125Wで、OC用ツールを使えば最大150Wまで引き上げられる仕様だった

 もうひとつおもしろいのはCUDAコアの構成とクロックの設定だ。GTX 1650 SUPERはGTX 1660と1650の中間に落ちるような設定にしてきたが、GTX 1660 SUPERはGTX 1660とまったく同じ構成、同じクロックとなっている。つまり、GDDR5からGDDR6への変更でメモリー帯域を増やしたことで、GTX 1660を超えるパフォーマンスに着地させた。言い換えれば、“美味しくなってリニューアル”的なチューニングの製品なのだ。

 TDPはGTX 1660 SUPERはGTX 1660の120Wより5W増加した125W。メモリーが14GbpsのGDDR6に変わったことを受けたものだ。一方で、GTX 1650 SUPERはGTX 1650に比べて25Wアップの100Wとなったが、これはCUDAコアも増量し、クロックも相応に上昇しているため妥当である。ただし、TDP75Wより増えてしまったため、動作には補助電源が必要になると思われる。

今回テストした個体はトリプルファン仕様の冷却力重視モデル。コスト志向の強いシリーズだけに、「RGB LEDのような浮わついた装備は要らん!」という主張が伝わってくるようだ

バックプレートは樹脂製であるため、冷却力よりも強度確保のため、という意味合いが強い

補助電源は8ピン×1

映像出力はHDMI、DisplayPort、DVIというシンプルな構成

 GTX 1650 SUPERがTU116ベースになったことは、実はストリーマーにとっては大きなニュースだ。GTX 1650のTU117に搭載されるNVENCは他のTuring世代のGPUより1世代古い、Volta世代相当のNVENCであるため、H.265のBフレーム対応が利用できないというデメリットがあった。

 だが、GTX 1650 SUPERは1ランク上のTU116ベースになったため、NVENCも最新のものになっている。つまり、より高画質でゲーム画面の録画や配信を実行できるようになるのだ。なお、新旧GPUにおけるNVENCの違いは以前掲載した「GeForce RTX&新NVENC、OBSで高画質ゲーム配信できるって本当?」で解説している。RTX 20シリーズとTU116のNVENCの仕様は同一なので参考になるはずだ。

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