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グーグルのハードウエア戦略「アンビエント・コンピューティング」で読み解く【西田宗千佳】

2019年10月17日 16時40分更新

 10月16日にグーグルが新しいハードウエア製品を発表した。それらに共通するのは「アンビエント・コンピューティング」だ。それはどういう意味を持っているのか? そして、それはどのような機能に現れているのか? グーグルの戦略を分析してみよう。

実は「Wi-Fiアクセスポイントが戦略製品」である理由

 グーグルのハードウエア製品というと、我々はまず「Pixel 4」のような機器を思い浮かべる。グーグルにとっても注力商品であることは間違いない。だがそれでも、あくまで「重要な機器」のひとつだ。彼らが核にあると考えているのは音声アシスタント技術である「Googleアシスタント」だ。

 音声認識の活用は、特に日本ではまだ進んでいない。声で命令を発することに慣れていない、他人がいる場所で独り言のようにつぶやくのが(まだ)奇異に見える、といった慣習的な側面に加え、日本語での応答技術の未熟さも課題だろう。とはいえ、海外、特に英語圏では急速に活用が進んでいる。

 結果として普及し始めているのが「アンビエント・コンピューティング」という考え方である。これは、「目の前の機器を使う」という考え方から、「あらゆる場所・ある機器を介して、いつでもコンピュータの能力を活用する」という考え方へとシフトしていこう、というものだ。家中にスマートスピーカーがあれば、スマホをもっていない時でも、命令を声で発することでネットの力を使える。移動中にスマホで確認するためにToDoリストを記録することだってできる。

 そうした姿を実現するには、あらゆる場所からグーグルの考える中核コンポーネントである「Googleアシスタント」を利用できるようにしないといけない。環境(アンビエント)に溶け込むには必須だ━━という風に考えると、彼らが今回発表した製品ラインナップのポイントが見えて来る。

Google Nest Wifiはルーターと、Google アシスタントに対応する拡張ポイントのセット

 実は、まず重要なのはWi-Fiアクセスポイントであり、スマートスピーカーである「Google Nest Wifi」だ。自宅の中での「通信不感地帯」をできる限りなくすことは、アンビエント・コンピューティングにとって必要不可欠なこと。だからメッシュネットワーク対応かつ、設定が簡単なWi-Fiアクセスポイントを普及させる必要がある。各部屋のアクセスポイントとは別にスマートスピーカーを置くのは邪魔、と思う人もいるだろうから、今回からアクセスポイントにGoogleアシスタントの機能をもたせた。

 完全ワイヤレス型のヘッドホン「Pixel Buds」を2020年に発売すると発表したのも、やはりアンビエント・コンピューティングのためだ。音楽を楽しむのはもちろんだが、スマホからの通知を聞いたり、スマホ内のGoogleアシスタントへのアクセスを容易にするためには、精度がよく、日常的につけていられるヘッドホンが必須になる。

 アップルが「AirPods」を発売して以降、この方向性は大きなトレンドになった。マイクロソフトも「Surface Ear Buds」を作り、Amazonも「Echo Buds」を作る。音声アシスタントをもっているなら、そこに最適化したヘッドホンを開発するのは、もはやあたりまえのことになっている。

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