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「ハイエンド」と「型落ち」2極化することで印象の偏りを避ける

アップルは2極化する価格戦略でブランドイメージを堅持する

2019年09月12日 15時00分更新

 アップルは9月10日(米国時間)、アメリカ・カルフォルニア州、クパチーノにある本社内「スティーブ・ジョブズシアター」にて、スペシャルイベントを開催。iPhone 11シリーズ3モデルやApple Watch Series5、第7世代iPadを発表した。

 この発表会を取材して感じたのが、ここ最近のアップルは明確に「Pro」と「型落ち」という2極化を進めている点だ。

 新製品のiPhoneは、iPhone 11、iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxという3モデル構成だ。iPhone 11はiPhone XRの後継機種、iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro MaxはiPhone XSとiPhone XS Maxの後継機種という位置づけになる。

 iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxは背面に3つのカメラを搭載するなど、他のAndroidスマホと肩を並べるハイエンド仕様だ。値段も、iPhone 11 Pro Maxの512GBモデルでは、15万7800円という強気の設定だ。

 「なんて、iPhoneは高いんだ」と一瞬、ひるんでしまうが、アップルはきちんと我々庶民のことを考えてくれている。

 iPhone 11の64GBは7万4800円と昨年発売された当時のiPhone XRの64GBは8万4800円だから1万円近くも安くなっている。

 注目は型落ち製品でiPhone 8は6万7800円から1万5000円引きの5万2800円、iPhone XRは8万4800円から2万円引きの6万4800円に値下げとなっている。

 Apple Watchでも同様の価格戦略が見て取れる。

 今回、発表になったApple Watch Series 5では、チタンやセラミックなどのケースが登場し、なかには14万円程度の値付けになっているものもある。

 一方、型落ちの値下げは、Apple Watchでも驚異的で、Series 3は3万1800円から値下げされ、1万9800円から購入できるようになってしまった。

 アップルユーザーのなかには、長年、iPhoneを使っていて、「本体容量はできるだけ大きいほうがいい」という人もいれば「ゲームや動画撮影などアクティブに使いこなし、サクサクと動くほうがいい」という人もいる。とにかく高くてもいいから最新の機種を手に入れて、快適な毎日を送りたいというハイエンドなユーザーが多いことは間違いない。

 一方で、「アップル製品は高い」というイメージをもち、アップル製品を避けてきた人も多い。そうした人たちを取り込むには「最新機種でなくてもいいから、できるだけ安価なもの」を提示して上げる必要がある。

 そこで、アップルとしては「高くて最新」「型落ちだけど安い」という価格戦略を展開しているのだろう。他社の場合「新しいけど安い」という製品が多い。しかし、それではブランドも安いイメージが付きまとってしまう。

 アップルはブランドイメージを保つために、極端に安いモデルというのを避ける傾向がある。

 今回、第7世代iPadも、3万4800円という安価な設定だが、iPadのなかでは安いものの、他のAndroidタブレットに比べれば高い部類に入る。他の安いAndroidタブレットと価格で勝負しないというのもアップルのこだわりなのだろう。

 今回のスペシャルイベントでは、動画配信サービス「Apple TV+」、ゲーム配信サービス「Apple Arcade」が毎月4.99ドル、日本では600円という料金設定になったことが発表された。特にApple TV+に関しては、アップル製品を購入すると1年間、無料というおまけも付いてくる。

 アップルとしては、すでにApple Musicが好調なこともあり、これからは製品販売だけでなくコンテンツでも稼ごうとしている。

 無理して、安価な新製品で他社と戦うより、ハイエンドな製品を出し続け、型落ちになったら値下げするという、アップル独自の戦略で、これからも勝負していくのだろう。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。


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