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地方密着型の電力小売りに続くエナジーテック企業の戦略

実績ゼロから変える業界標準 パネイルが目指す電力業界の刷新

2019年04月26日 07時00分更新

 株式会社パネイル(以下、パネイル)は、2012年に設立された「エネルギー×IT(エナジーテック)」のパイオニアを目指すスタートアップ。

 パネイルのビジネスは、大きく2つ。1つは電力の小売業であり、もう1つは「パネイルクラウド(Panair Cloud)」と呼ばれる次世代型エネルギー流通基幹システムの開発・運営である。代表取締役社長の名越達彦氏は、「会社を設立して、1番やりたかったのは電力業界のシステムの刷新。しかし“実績がない”の一言で、これはまったく受け入れられなかった」と語る。

 パネイルの代表取締役社長 名越達彦氏に、同社が歩んだ電力業界を塗り替えるための戦略を伺った。

株式会社パネイル 代表取締役社長 名越達彦氏

スタートアップが作った“東日本電力株式会社”

 実績がなかったスタートアップが最初に行なったのは、将来的な電力流通クラウドの普及拡大を目的に、まずは電力の小売りで「実績」を作ることだった。「いきなり、パネイルという社名で電力の小売りをはじめても、特に地方のお客様には響かない。そこで、地域密着の戦略を展開することにした」(名越氏)

東日本電力株式会社

 パネイルはまず、地域密着の戦略の一環として、札幌電力株式会社、宮城電力部式会社、東日本電力株式会社、東海電力株式会社、西日本電力株式会社、広島電力株式会社、福岡電力株式会社という7つのグループ会社を設立。それぞれの地域で電力の小売りに取り組んだ。現在では、数多くのランドマーク施設や国内上場企業などに電力を供給している。

 レガシーさを感じさせる社名も含めて、新参者として業界になじむための下地作りが売電の部分で行なわれた。たとえば、法人顧客が電力会社を変更するのは、電気料金を下げたいためだ。ただし、単に安いだけでは簡単には変更はしない。理由は、安すぎる一方での不安感からである。最安値である必要はないが、なぜ安いのか理由が明確であること、納得感がある値段であることが重要になる。

 名越氏は、「パネイルは、電力を供給するための基幹システムを、自分たちで開発し、クラウド化による技術で、効率化、省力化、自動化を実現することで、低価格を実現している。地域密着の戦略も重要で、地域ごとに会社を作り、人材を採用し、地域の企業と協業することで、地元の安心感、信頼感を得ている」とその成長の理由を語る。

 たとえば札幌市交通局は、札幌市電を運行するための電力をパネイルに切り替えた。こうした地域密着の戦略が徐々に受け入れられ、電力の販売量は右肩上がりに増量。2018年8月時点の電力販売量で、独立系新電力のナンバーワンに輝いた。名越氏は、「IT業界から参入したプレイヤーがナンバーワンの座についたのは感慨深い」と話す。

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