2019年04月25日07時00分

クラウド市場での隠れた勝者エクイニクスはなぜ強いのか?

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 先日、グローバルでデータセンター事業を展開するエクイニクス・ジャパンの古田敬氏とのメディア情報交換会に参加した。古田氏は2009年の入社以来、同社を率いており、現在は北アジア事業も統括しているベテラン。日本のみならず、グローバルのデータセンター事情にも詳しい。ランチを食べながらカジュアルに情報交換する場だったが、最新データセンターにまつわる有益なトピックがいくつも飛び出したので、コラム形式でまとめてみたいと思う。

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グローバルで共通化されているエクイニクスのIBXデータセンター

ハイパースケーラーを巻き込める「一等地」を持つ強み

 昨年、創業20周年を迎えたエクイニクス(Equinix)は、グローバルで52都市、200拠点以上のデータセンターを展開する事業者。ナスダック上場後、64期連続で増収し続けているという成長企業で、2018年の売上高はついに50億ドル(約5600億円)を突破した。シナジーリサーチが2018年5月に発表した調査によると、コロケーションサービスの売上高は世界で第1位で、シェアは13%。ちなみに同じ調査でシェア2位がデジタルリアリティで、3位がNTTになる。

 同社が成長し続けてきた大きな理由として、顧客や事業者間を相互接続するインターコネクションがある。もともとエクイニクスの社名は「平等なアクセス(Equality)、中立性(Neutrality)、インターネットの相互接続(Internet Exchange)」に由来している。そのため、同社の「IBX(International Business Exchange)データセンター」は、当初から特定の通信事業者に依存しないキャリアニュートラルを謳い、サービスプロバイダーや企業を相互に接続することに重きを置いている。

 現在はAWSやAzure、Google、IBMなどいわゆるハイパースケーラーへのダイレクト接続やクラウド事業者間を相互接続する「Equinix Cloud Exchange Fabric」を提供している。インターコネクションの接続オプションも豊富で、ファイバーによる直収、ピアリング、ソフトウェア定義のネットワーク(SDN)などさまざま。IBXデータセンターを介して、さまざまな事業者、顧客同士で直接つなげる「一等地」を持つのがエクイニクスの強みだ。

 急成長するもう1つの背景は、ハイパースケーラーに対してデータセンターを供給しているという点だ。つまり、エクイニクスにとっては、ハイパースケーラーは大口優良顧客である。そしてハイパースケーラーにとっても、キャリアニュートラルで世界中のデータセンターを一括購入できるエクイニクスは便利なサプライヤーである。すなわち、両者の戦略的利害関係が一致しているのだ。また、ハイパースケーラー案件の特徴としては、敷地面積や電力供給量の需要が圧倒的に大きくなり、データセンター側にも大きな供給能力が求められるという。とかくクラウド市場の勝者はハイパースケーラーと思われがちだが、実はエクイニクスなのではないかと密かに思っている。

パン屋の店員が転職してインフラエンジニアをやっている

 最近はアジア地域への投資も著しい。2019年には韓国ソウルに初のIBXデータセンターである「SL1」を開設するほか、シンガポールには4番目となる「SG4」、オーストアリアのシドニーで5番目となる「SY5」、メルボルンで2番目となる「ME2」をそれぞれオープンさせる予定。競合のローカルキャリアがひしめくアジア地域での存在感を増している。

 日本では2000年に最初のデータセンター「TY1」が都内に開設され、その後も都内にフォーカスしてデータセンターを拡充してきた。2017年にビットアイルを買収したことで、東京に10拠点、大阪に1拠点のデータセンターを擁する事業者に成長。今年は79億円を投資し、東京・有明に11拠点目のIBXデータセンター「TY11」を開設予定だ。1990年代後半から数多くの外資系データセンター事業者が日本に進出し、その多くは撤退してしまったが、エクイニクスはいまもデータセンターを増やし続けている。

 国内のユーザーとしては、ミクシィ、カカクコム、サイボウズ、トッパン・フォームズ、サイバーエージェント、大和総研ビジネス・イノベーション、ベネフィット・ワンなど。公開されている企業としてはインターネット事業者やデジタルサービス事業者が多いが、業種・業態は幅広い。導入の背景はさまざまだが、マルチクラウドに魅力を感じるユーザーはどんどん増えているのは間違いない。

 

 日本での社員はすでに600名を超える。面白かったのは、最近では希少種となったインフラエンジニアを一から育成しているところ。古田氏曰く、もともとパン屋で店員をやっていた女性が、現場でケーブリングやラッキングを行なえるようになったという。あえてベテランを採用せず、一から教育を施せるのも、データセンターという事業に長期的にコミットする同社ならではと感じられた。

 課題はやはり電力。首都圏の電力消費の12%はデータセンターだそうで、最近では同社もデータセンターのキャパシティを面積より、電力供給量で表現することが増えているという。今後、ハイパースケーラーの需要を満たすデータセンターを運用していくにあたっては電力の調達に苦労しそうだ。猛烈な勢いで加速するデジタルインフラの需要に応えるべく、エクイニクスの戦いはまだまだ続く。

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