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SeasonicやFSPを販売するオウルテックに訊いた

理想の容量や80 PLUSは?本当はもっと吟味すべき電源ユニット選び

2019年04月19日 11時00分更新

 自作PCにおいて重要なPCパーツと言えば、CPUやビデオカードを挙げる方が大多数だろう。毎年のようにさまざまなセグメントで新しい製品が登場し、そのレビュー記事はPC/IT系媒体では花形の存在である。しかし、その陰に隠れて目立たないものの、密かに構成を決めるときに迷いどころとなるのは「電源ユニット」だ。

本当はもっと吟味したい電源ユニット選び

 電源ユニット選びでまず重要になるのは「定格容量」だろう。PC自作になれたユーザーならば、構成を決める時にだいたいどのぐらいにすればいいのか見当がつくところだと思う。筆者も職業柄、どのCPUあるいはビデオカードが最大負荷でどのぐらい電力を消費するのかおおよその予想をつけた上で、それを超えない程度の容量を選んでいる。

 それに加えて、近年では「80 PLUS」という電力変換効率を示すグレード(STANDARD、BRONZE、SILVER、GOLD、PLATINUM、TITANIUMの順に良い)を考慮する人が大多数ではなかろうか。もちろん、同じシリーズの製品でも電力変換効率が高いものほど価格も高くなる。しかし、無駄な消費電力が減れば電気代が安く済むのだから、何年使ったらもとが取れるのかと計算して選ぶわけだ。

 また、ケーブルの仕様も必要なものは外しておけるフルモジュラータイプや、一部のケーブル以外は着脱できるセミモジュラータイプといったものがある。PC内部の配線レイアウトを美しく見せたい人はここも大きな選定ポイントになるだろう。近年はスリーブケーブルへ換装できるものもあり、自作PCのドレスアップに欠かせない存在になってきている。

 ざっくり言えば、以上の3点(定格容量、80 PLUSのグレード、ケーブルの仕様)が電源ユニット選びで重視している人が多いポイントだろう。この点をチェックしておけばまず間違いないし、筆者も初心者のユーザーにはそう案内している。しかし、同容量で80 PLUSも同グレード、ケーブルの仕様も同じで同価格。さらに、無償交換保証期間も同じというレアケースに陥った場合はどう選べば正解なのか?

 今回はそんな疑問を解消するべく、品質に定評のある「Seasonic」や「FSP」といったメーカーの電源ユニットを取り扱う、販売代理店オウルテックの技術グループに所属する鈴木智睦氏に取材させていただいた。電源ユニット選びにおいて、定格容量に80 PLUSのグレード、ケーブルの仕様だけでは判断がつかない際の羅針盤になれば幸いだ。

定格容量は使用電力が50%になるぐらいを目安にしよう

――読者からの質問で多いんですが、PCの電源ユニットの定格容量は何を基準に選んだらいいのでしょう?

鈴木氏:まず電力変換効率から考えると、だいたい使用電力(負荷)が定格容量の50%ぐらいになるところがピークになっていて、そこを超えるとちょっとずつ下がっていくんです。80 PLUS認証でも使用負荷が20%時、50%時、100%時で規定されていて、50%のところが最も高くなっています。グラフにするとそこを頂点にカーブしているんですよ。一番上の80 PLUS TITANIUMクラスになると10%時という低い使用負荷の時まで規定されていて、変換効率があまり落ちないように作られています。

――定格容量は使用電力の2倍ぐらいの製品を選んでおくのが、変換効率的にはいいんですね。

鈴木氏:あと寿命という観点も容量選びには重要です。電源ユニットの寿命は大きく2つあるんですが、まずひとつめが「ファン」の寿命、そして「電解コンデンサー」の寿命です。特にこの電解コンデンサーの寿命が大きく関わってきます。コンデンサーの寿命は温度が高くなればなるほど短くなるので、使用電力が500W必要なPCで定格容量650Wの電源ユニットを使っていると、使用負荷率が高くなって温度もだいぶ上がります。それに対して、850Wとかもっと容量の大きな電源ユニットを使えば使用負荷率が下がって、温度もかなり抑えられるので寿命が長くなるんです。

――なるほど。使用電力ギリギリで使っているとコンデンサーの寿命を大きく削って、結果壊れてまたすぐに買いなおすはめになりそうですね……。

鈴木氏:そうですね。ただ、そこには電源ユニットの価格も関わってくる話で、「3年したらシステムを全部買い替える」という方であれば、事情は変わってくると思います。信頼性が高く保証期間の長いものを買って長く使うか、必要かつ十分なシステム構成にして3年ぐらいの短いスパンでシステムごと入れ替えるというのは考え方次第なのかなと思います。

――ちなみに「信頼性が高い」というのはどういうことなのでしょう? どんなところで差が出てくるのか教えてください。

鈴木氏:例えば、弊社が取り扱っているSeasonicですと、固体コンデンサーもすべて日本製のものを使って信頼性を上げています。コンデンサーは脈を打っている電流を平らにしているんですが、やはり日本製はその性能が高いんですね。そして、寿命も長いんです。

――よく製品紹介ページで日本製コンデンサーを採用している点を推しているのにはそういう理由があったんですね。

鈴木氏:あと、ちょっと安い電源ユニットですと、寿命に大きく影響するアルミ電解コンデンサーは日本製を使っているけど、影響の少ない固体コンデンサーは海外製のでコストを抑える、なんて作り方もありますね。

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