2019年03月29日10時00分

Adobe Summitで語られたAdobe自身のビジネスや開発体制の変化

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Adobeのイベントで一番興味を持った話題が
Adobe自身のデジタルトランスフォーメーション

 3月26日(現地時間)から、米ラスベガスで、デジタルマーケティングイベント「Adobe Summit」が開催されています。筆者はAppleのイベントの取材を終え、嵐のサンフランシスコからディレイする飛行機にやきもきしながらラスベガス入りしました。

 冒頭にAdobe CEO、シャンタヌ・ナラヤン氏がイベントの概要について話しましたが、参加者はなんと1万7000人と一挙に膨れあがり、基調講演の会場の席数を上回る規模へと急成長しているそうです。

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Adobe CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏

 それだけ、デジタルマーケティングから顧客体験全体をデザインし、企業内外のビジネスを推し進めていく動きに、世界中の企業が注目しているのです。

 初日の基調講演の中で個人的に最も面白かったトピックが、Adobe自身のデジタルトランスフォーメーションでした。デジタルトランスフォーメーションとは「DX」とも略され、企業活動自体をデジタルで大きく変革すること。日本でも「DX」というフレーズが頻繁に聞かれるようになっており、現在のITエンタープライズ市場のゴールになっています。

 DXでは「働き方」「マーケティング」「製品開発」「顧客との関係作り」など、企業活動の多くが変化していくことになります。実はAdobeは2012年の決断以降、DXを体験してきた企業でした。

数万円以上の高額ソフトウェアの販売から
サブスクリプションモデルへの移行に成功

 Adobeの主力製品は、PhotoshopやIllustratorなどが代表的な、業界標準となっているクリエイティブソフトウェアです。

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Adobe自ら示したAdobe Creative Cloudのマーケティングデータ

 以前は1本5万円以上、フルセットで揃えると20万円を超えるような、プロのためのアプリを、1年半ごとにメジャーバージョンアップし、既存顧客の買い換えと新規顧客の獲得を狙うというビジネスモデルでした。

 これをサブスクリプションモデルへと転換したのが2012年のことです。月額料金を支払うことで必要なアプリ、もしくはすべてのアプリが利用できるようにする仕組みになりました。

 これによって、売上はバージョンアップの時にどれだけの本数売れたかではなく、何人が継続してサブスクリプションを続けてくれるかによって、ビジネスの行方が決まるようになりました。

 このことは、顧客とのコミュニケーションだけでなく、製品の開発体制にも変化を及ぼします。

 今までは1年半後との買い換えもしくは新規購入を獲得するため、既存・潜在ユーザーをあっと言わせる新機能が必要でしたし、競合製品があればそれを上回る高性能さを盛りこまなければなりませんでした。

 しかしサブスクリプションモデルになると、月単位でユーザーを獲得することも失うこともあり得るわけで、製品開発は既存顧客の効率性を重視し、より頻繁なアップデートを求められるようになっていきます。

 研究開発部門はもちろん残っていますが、主力製品の開発チームは顧客の声により細かく耳を傾け、彼らがやっていることを理解し、そこをエンパワーする、そんな体質へと変化していくことになります。

 結果的には、Adobeの売上高は成長を続けており、ビジネスモデルや開発体制の転換は成功していると言えます。

 しかし、Adobeが得ているものはより大きな部分かもしれません。サブスクリプションサービスになり、顧客が自社製品で日々何をしているかを細かく知る必要が出て、データを集めます。

 このデータから不具合を発見したり、機械学習処理や人工知能を生かした作業の効率化を見いだせるようになりました。ここで、デジタルトランスフォーメーションの文脈と重なり、クリエイティブソフトウェアのビジネスが、顧客体験とデータドリブンで進化するようになり、かつAdobeのAIであるAdobe Senseiも育つ、良い循環を作り出していました。

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