2019年03月20日09時00分

スタートアップが知るべき、知財法務戦略でのトラブル・失敗事例

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知財は「独占」「連携」「信用」に力を発揮する、スタートアップの必須ツール

 このほかセミナーでは、「なぜ今、“Startup×知財”か」と題した講演で、特許庁の網谷 拓氏がスタートアップの知財戦略の必要性と、特許庁のスタートアップ支援施策を説明した。

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特許庁総務部企画調査課法制専門官 網谷 拓氏

 スタートアップは、破壊的な技術やアイデア、尖った人材や行動力をベースに成長を目指す半面、資金力や信用、販売網などには乏しい。スタートアップにとって企業価値≒知的財産と考えられる。米国では注目スタートアップは平均20~50件もの特許を取得しており、GAFAも知財取得に邁進している。しかし、日本のスタートアップは知財意識が低く、「知財は難しそうだし、お金も時間もかかる。それよりもプロダクトを開発したほうがいい」と考えがちだ。

 しかし、知的財産には、特許権や著作権だけではなく、ブランドや営業秘密、ノウハウといったものも含まれる。さらに、人的資産、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなども重要な知的資産だ。

 スマートフォンを例にとると、商品の名称は「商標権」、デザインは「意匠権」、通信サービスなどの技術は「特許権」として保護される。重要なのは、いずれも早く出願した者が権利を得られるという点だ。

 知的財産権は、技術や商品名が自分のものであることを証明するツールになる。具体的には、特許権を侵害する者に差し止めや損害賠償を請求できる「独占」の権利、大企業との事業提携やライセンスの提供「連携」、資金調達やM&Aで高い評価を受けるための「信用」に、大きな力を発揮する。

商標権トラブルを防ぐために、登録商標を無料のネット検索サービスでチェック

 裏返せば、他者の権利を侵害していないかどうかもきちんと確認する必要がある。ローンチ後に他者の権利を侵害していることが発覚した場合、発売の差し止めや損害賠償を請求される恐れも。こうしたリスクを防ぐために、商品・サービス名の商標権が取られていないか、登録商標を調査することが大事。、商標、特許、意匠が取得済みかどうかは、特許庁が提供する無料の検索サービス「J-PlatPat」で調べられるので、会社名、商品・サービス名、ロゴマークは、必ずチェックしておこう。

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特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」では商標、特許、意匠が検索できる

知財戦略を立てるために、知財体制構築のススメ

 特許はやみくもにとればいいわけではなく、そこには知財戦略が必要だ。代表的な手法として「オープン&クローズ戦略」が紹介された。

 まず、ブラックボックスにして隠すか、特許出願をするかの判断だ。

 特許を出願すると、1年半後には特許出願した書類が世界に公開される。隠したい場合、隠し通せるかどうかが判断の基準になる。商品を分析すればわかってしまう技術であれば、隠すことができない。また、人の異動によって技術が漏れるリスクもある。これらのメリットとリスクを総合的に考えて、特許を取るべきかどうかを判断する。

 次に、どの国で取得するか、権利をとったあとの使い方も考える必要がある。たとえば、無償で解放し、マーケットを拡大する、というのも戦略のひとつ。独占するか、ライセンスするか、戦略の立て方次第で市場をコントロールできるのだ。

 特許庁では、知財の責任の所在を明確にするため、社内にCIPO(知財担当責任者)を設置することを推奨している。スタートアップが知財の専門家を確保ことは難しいので、当面はCEOやCFOの兼任でもいいだろう。信弁理士と顧問契約し、いつでも相談できる体制を確保する方法もある。

特許庁が進める5つのスタートアップ支援施策

 特許庁では、2018年7月にベンチャー支援チームを設置し、スタートアップ支援として5つの施策を実施している。

 1つ目は、知財情報として、「国内外ベンチャー企業の知的財産戦略事例集“IP Strategies for Startups”」、「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集“IP Open Innovation”」、「知的財産デュー・デリジェンスの標準手順書 “SKIPDD”」の3つの知財コンテンツを提供。また、セミナーやイベントも随時開催している。

 2つ目は、権利化されるまでの期間を短縮するため、出願から1ヵ月以内に特許審査の結果がわかる「ベンチャー企業対応スーパー早期審査」、審査前に担当の審査官と面接してアドバイスを受けられる「ベンチャー企業対応面接活用早期審査」を用意。

 3つ目は、知財アクセラレータープログラム(IPAS事業)の実施。これは、知財やビジネスの専門家を含む知財メンタリングチームを一定期間派遣し、スタートアップの知財戦略をサポートするプログラムだ。2018年度は5~6月に公募し、10社を支援している。2019年度も10社程度の支援を予定しているそうだ。

 4つ目は、ジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)事業。知財を活用した海外展開を支援するもので、国内でのBoot Camp、海外メンターによるメンタリング、海外イベントの出展といったプログラムが用意されている。

 5つ目は、料金減免制度。設立から10年以下などの条件に該当するスタートアップは、特許取得にかかる料金が3分の1に減免される。今後は、すべての中小企業についても半額に減免する措置が検討されているとのこと。

 また特許庁では、スタートアップ向けの知財情報サイト「IP BASE」を新たに開設。上述のスタートアップ向け支援策の詳細や、知財をうまく活用しているスタートアップの事例などが掲載されているので、興味のある方は、ぜひアクセスしてほしい。

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スタートアップの知財情報コミュニティポータルサイト「IP BASE」IP BASE

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