週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

「IPナレッジベース」コミュニティーイベントin東京2

スタートアップが知るべき、相性のいい知財専門家の見つけ方

2019年03月19日 07時00分更新

 ASCII STARTUPは2019年2月20日、東京・五番町グランドビルにてスタートアップと知財関係者向けのセミナーイベント『「IPナレッジベース」コミュニティーイベントin東京2』を開催した。本イベントは、知財に関心をもつスタートアップに特許庁の支援策など最新情報の提供と弁理士との出会いを目的としたもの。

 今回は、特許庁の貝沼 憲司氏によるセミナー、「知財専門家の上手な探し方・使い方」をテーマにしたパネルディスカッションのほか、初の試みとして、知財の専門家側がスタートアップへアピールする「弁理士ピッチ」が開催された。

 第1部では、特許庁 企画調査課の貝沼憲司氏が登壇し、スタートアップにおける知財戦略の必要性と特許庁のスタートアップ支援策について説明した。

知財は取るだけでなく、戦略的な活用がポイント

 資産や信用のないスタートアップにとって、企業価値≒知的財産である。知財制度は基本的に世界共通であり、競争力を高め、世界展開するには不可欠なものだ。しかし、日本のスタートアップは米国や中国に比べると知財意識が低く、創業時から知財を意識している会社は、機械・電気・電子分野で2割、IT企業はわずか1割弱と少ない。そこで、特許庁は2018年7月からベンチャー支援班を立ち上げ、スタートアップ向けの支援施策に力を入れている。

特許庁総務部企画調査課 課長補佐(ベンチャー支援班長) 貝沼憲司氏

 知財の役割として、事業の差別化や模倣の防止としての「独占」、オープンイノベーションのツールとしての「連携」、資金調達やM&Aの評価の基準となる「信用」の3つがある。

 特に、「連携」や「信用」に関しては、ただ知財を取得するだけではなく、何に役に立つのか、自社の知財戦略をしっかりと説明できることが重要だ。たとえば、1)多数の特許によって強固な参入障壁を築く、2)簡単に模倣されないものに関してはあえて権利化せずに秘匿化する、3)パテントマップ(特許の地図)を作り、競合他社の動きから自社の方向性を探る、といった戦略の立て方ある。特許庁では、国内10社、海外8社のスタートアップに知財戦略をヒアリングした事例集(リンク先PDF)を配布しているので参考にしていただきたい。

弁理士の働き方を改革して、ビジネスに強い知財専門家の育成にも注力

 スタートアップにとってのもうひとつの課題は、知財の専門家と出会うことの難しさだ。実は今、知財の専門家そのものの数が不足しているという。弁理士の志願者数は、知的財産基本法の制定された平成14年頃から上昇し、一時は1万人を超える志願者がいたが、最近は減少傾向にあり、平成30年度は4000人を切っている。

 弁理士の魅力を高めるため、働き方を改革することが必要、と貝沼氏は提案。弁理士は、法律と技術の深い知識を持ち、あらゆる分野で役立つ要素がある。従来は、明細書を書く仕事がメインであったが、コンサルティングなどへ業務範囲を広げている事務所も増えているようだ。スタートアップ支援も、新しい業務のひとつとして注目されつつある。

 特許庁では、スタートアップと知財専門家とネットワークを構築するための施策として、セミナーやイベント、ホームページ「IP BASE for Startup」を通じて情報発信をしている。

 来年度からは、知財の専門家がスタートアップ支援をアピールする場として「弁理士ピッチ」を実施していく予定。登壇者を絶賛募集中だ。

 知財とビジネスの専門家が知財戦略をサポートする「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」も来年度は15社(今年度は10社)に拡大して実施する。このほか、ビジネスと知財の知識を兼ね備えた人材育成を目指し、「知財専門家インターン」などの取り組みもしていきたい、と今後の活動について語った。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事