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「CEOが語る知財」:アクセルスペース代表取締役 CEO 中村友哉氏インタビュー

地球観測インフラ展開で変化したアクセルスペースの知財意識

2019年03月12日 07時00分更新


この記事は、特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」(外部リンクhttps://ipbase.go.jp/)に掲載されている記事の転載です。

 超小型衛星を開発するアクセルスペースが展開を目指す新事業「AxelGlobeプロジェクト」は、数十機の超小型衛星で地球上のすべての地域を毎日観測できる新時代のインフラだ。特定顧客向けの人工衛星開発というハードウェアビジネスから、プラットフォームサービスへの発展となるが、宇宙ビジネスは新たな分野だけに、どの知財を確保するべきかの判断は難しい。想定していたビジネス拡大の時期において、知財戦略を整えたかったのはなぜか。特許庁の知財アクセラレーションプログラム(IPAS)参加で得られたこと、今後の事業展開と知財戦略について、代表取締役 CEOの中村友哉氏に伺った。

本シリーズ「CEOが語る知財」は、特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」とASCII STARTUPによるコラボ企画としてお届けする

超小型人工衛星による地球観測インフラで産業が変わる

 アクセルスペースは、超小型の商用人工衛星を開発している宇宙ベンチャーだ。特定事業者向けの専用人工衛星ビジネスに加えて、新たにAxelGlobeプロジェクトの展開を進めている。専用人工衛星ビジネスは、2008年の創立以来、ウェザーニューズや東京大学、JAXAなどへ計4機の専用人工衛星を提供してきた。

 一方で、2015年にスタートしたAxelGlobeプロジェクトは、数十機の超小型人工衛星を打ち上げて、世界中を毎日観測できる新しいプラットフォームの構築を目指すものだ。2018年の12月27日にその一号機打ち上げに成功。現在は初期運用中で、2019年春頃からのサービスインを目指している。さらに2020年は追加で2機を打ち上げ、その後も2022年の完成を目標に機数を増やしていく計画だ。

株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO 中村友哉氏

 「地球観測衛星はたくさんあるが、高頻度に世界中を見られるものはまだ普及していない。これまでの衛星画像は、安全保障や軍事分野での利用に偏っていた。人工衛星のコストが下がり、撮影頻度が上がれば、世の中で起きていることが時系列的に捉えられるようになる。民間での利用が進めば、ビッグデータのひとつとして、いろいろな産業で新しいビジネスが生まれるきっかけになるのでは」と中村氏は期待する。

 従来の衛星画像は、解像度や枚数で料金が決まっていたが、小型衛星を使って高頻度に撮影するようになれば、ビジネスモデルは変わってくる。衛星画像の提供1つでも、買い切り型ではないサブスクリプションでの提供も考えられる。あるいは、画像の解析から得られる何らかのデータを販売することになるかもしれない。すると、どのような解析をするかによって、課金の体系もまた変わってくる。

 世界中を毎日撮影すると、当然データ量は膨大になる。10年前に同じことをやろうとしてもデータを保存するストレージをオンプレミスで用意することは現実的ではなかったが、今ならクラウドがある。さらに、数年後にはGB単価のストレージ単価は今よりもずっと下がっていると予測される。価値ある情報の抽出に関しても、ディープラーニングなどのAI技術の発達により、解析自動化も現実的になりつつある。

 「あらゆる産業で起こっている技術革新、ビジネス革新と同様、テクノロジーの進化によって新しいビジネス形態を考えられるようになってきたのは大きな変化。宇宙も例外ではない。低コスト開発が可能な超小型衛星や最新のIT・AI技術の積極的な導入によって、リーズナブルなサービスとして提供できるようにしたい」と中村氏は語る。

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