2019年01月15日10時30分

人手不足の建設業、買い手市場の不動産業でkintoneはこう使える

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 キツイ仕事の代名詞とされる建設業。物件余りが問題となりこれまで通りのハコ売りで儲けを出すのが難しくなりつつある不動産業。これらの業種で生き残っていくために、ITを、kintoneをどう使えばいいのか。サイボウズ 営業本部ソリューション営業部で建設・不動産業を担当する山田 明日香さんが、Cybozu Days 2018において語った。

建設業を取り巻く人材不足と、特殊な労働形態が情報流通を阻害

 2020年のオリンピックに向けて、建設ラッシュが続いている。おかげで建設業への需要は高まり、人手不足状態にある。では売り手市場でどんどん人が入ってくるかというと、そうではない。残念ながら、きつい、汚い、危険の3K職場と言われ、若手人材からは敬遠されがち。就業人口に占める29歳以下の割合は10%程度でしかないのが現状だ。一方で55歳以上が占める割合は約33%。肉体労働であるにも関わらず、高齢化が進んでいるのが建設業なのだ。

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建設業では本社と現場の温度感が違う

 建設業が抱える喫緊の課題は、こうした人材不足や高齢化が背景にある。引き合いがあっても、人手が足りず仕事を受けられない、また若手人材が不足していることから技術継承も不安視されている。ITでこれらを解決したいとチャレンジする企業は多いが、高齢者が多いこともあり具体的な仕組みや運用が追いつかないことが少なくないという。

 「理想の姿は、ひとりひとりが満足できる環境づくりです。楽しく仕事をしながら成長できる、高品質でお客様に喜ばれる、そんな職場を作るお手伝いをしています」(山田さん)

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サイボウズ 営業本部ソリューション営業部 山田 明日香さん

 現場で働く人、個人で現場を監理して回る人、営業担当者に本社の従業員がいて、現場ごと、個人ごとの活動が多いのが建設業の特徴のひとつだ。物理的に離れているためお互いの動きを理解、把握するのが難しい。建設業でよく聞く話として山田さんは次のような例を挙げた。

現場「現場のことは現場が一番わかっている」
本社「現場がちゃんと作業しているのかどうかわからない」
現場「他の現場の状況なんか知らない」
本社「現場に新しいことをやらせるのは難しい」
現場「本社が出してくる仕組みは現場では役に立たない」

 スマートフォンやタブレットを持つ人が増え、現場でもインターネットを介して様々な情報を手に入れられるようになった。しかし社内ネットワークにつながるわけではなく、自社の情報はよくわからない。そんな現場も増えているという。

kintoneを使った建設業の課題解決を事例を交えて解説

 建設業が抱える課題を紹介した山田さんが次に語ったのはもちろん、kintoneを使った課題解決の方法。特に多いというコミュニケーションの課題、データ活用の課題について、kintoneでどのように解決できるか、デモアプリで示しながら説明した。

 現場や個人単位での動きが多いので、必然的に個人対個人、主に電話やメールを使ったコミュニケーションが増える。誰と誰がどんなやりとりをしているのか本人たち以外にはわからないし、いつどのような連絡をしたのか記録も残らない。しかしkintoneがあれば、現場からはスマートフォンやタブレットを使って報告、本社にいる関係者はその報告をリアルタイムに見ることができる。誰がどのような報告をしたのかオープンになり、情報共有の無駄を減らせる。

 ここで山田さんは、実際に現場と本社のコミュニケーション改善にkintoneを活用した事例として、中島工業を紹介した。大阪に本社を持ち、全国に19の拠点を展開している。2014年からkintoneを利用開始し、2015年にkintone hiveでグランプリを受賞した企業だ。いくつものアプリを作成、活用している中から山田さんがピックアップしたのは、現場のできごとをすべて登録するNakapediaというアプリ。

 「Nakapediaの運用方針として特徴的なのは、登録すべき情報の種類や分類を指定していないことです。分類しようとすると、どの分類に当てはめればいいのかと悩み、入力するモチベーションが下がります。どんな営業をしているか、どんな工事をしているか、なんでもいいから全部入力するというルールにすることで、すでに1万件以上の情報が登録されています。定量的な情報だけではないので、かえって現場のできごとがよくわかるようになりました」(山田さん)

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中島工業では幹部の朝会も紙資料ではなくkintoneを参照

 情報を共有することで、できる人がやればいいという人任せの気質から、チームで取り組む雰囲気に変わったという。また拠点を越えて頻繁にやりとりしているので、企業全体としての一体感も生まれた。最初は高齢社員があまり使ってくれないなどの課題もあったが、試行錯誤を繰り返して乗り越えてきたとのこと。

 続いてもう一社、今度は管理部門でのkintone活用事例が紹介された。福岡でビケ足場を取り扱うダイワだ。総務省主催の全国クラウド活用大賞の九州代表にも選ばれた企業だ。

 ダイワは九州に13の拠点があり、全部で360台のトラックを保有している。これらの車両をExcelで管理していたが、現場の動きに追いつかなかったので、kintoneに移行した。トラックがどの拠点にあり、リースアップや点検時期がいつで、それぞれの保険がどのような内容になっているのか、リアルタイムに一元管理できるようにした。

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リース車両の管理をkintoneアプリ化したダイワの事例

 「ダイワでは物の管理だけではなく、人の管理にもkintoneを活用しています。人事採用にkintoneを使い、人事部だけではなく拠点と一体になって人材採用に取り組むようになりました。副次効果として、応募の少ない求人媒体がわかり、効果的な媒体に絞ることで採用コストを3割削減できたそうです」(山田さん)

サービス転換を求められる不動産業にもkintoneで力を与えたい

 話題は不動産業へと移り、業界が直面している課題が再確認された。大きなポイントは2つ、人が減り住宅は増え続けていること、インターネットの普及により購入者が得られる情報量が増えていること。買いたい人に比べて物件が多く、なおかつ選ぶための情報も得やすいという、圧倒的買い手市場が現在の不動産業だ。

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圧倒的買い手市場になっている現在の不動産業界

 「買い手に選んでもらうためには他社との差別化が必要です。しかし既存業務に時間を取られて、差別化のための新サービスを検討する余裕がないという企業が多くあります。こういった場合にも、kintoneが役に立ちます。既存業務を効率化すれば、新しいチャレンジの時間を作ることができるのです」(山田さん)

 時間ができたとしても、新サービスをスタートするのは簡単ではない。思いつきでとりあえず始めてしまうと、サービスで使う情報の管理が多大な時間を奪っていく恐れがある。かといってじっくり仕組みまで作り込んで始めるのは、現在のビジネススピードに見合わない。そこで第3の選択肢として、新サービスにもkintoneを使うことを山田さんは提案する。Kintone導入で生み出した時間を使い、kintoneで新サービスを構築するという無駄のないスタイルだ。例として退去する顧客に次の物件を紹介するサービスや、そのベースとなるデータの集め方、活用の仕方を紹介した後、次のようにまとめた。

 「既存業務を効率化して、新しいことを考える時間を増やし、それを積極的に展開できる仕組みづくりが企業の強みとなり、他社との差別化ポイントになります」(山田さん)

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情報を知ること、共有方法を見直すことで得られる価値を知って欲しいと山田さん

 建設業も不動産業も厳しい状況にある。しかし経営不振を業界動向のせいにしていてもしかたがない。勝てる企業は、きちんと他社とは違う手を打っている。情報を知ることの価値、情報の共有方法を見直すことの価値を見直し、kintoneでそれらの価値を組織の強みに変えていくこと。いきなり全社で取り組むのはもちろん厳しいが、1つの現場から、1つの業務から、ワクワクする働き方を目指して一歩を踏み出すことが大切だ。

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