週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

主役なんていない

Steamおすすめゲーム「Kenshi」開発期間10年長 ほぼひとりで作られたオープンワールドRPG

2018年12月28日 18時00分更新

 2012年、約6年前のSteamは決められたパブリッシャー以外は直接販売する方法は存在しなかった。インディー作品や中小パブリッシャーの作品はGreenlightというユーザーの投票を経て収録されるのが定例となっていた。そのGreenlightの開始初期から存在していた作品の一つが「Kenshi」という作品だ。

 前回紹介した「Return of the Obra Dinn」もほぼ一人のクリエイターによる作品であったが、「Kenshi」もChris hunt氏が2012年の発売開始前からも含め10年近くほぼ一人で夜勤のアルバイトの傍らに作り続けた作品である。そんな途方もない開発工程は2018年12月に遂に早期開発期間を抜けた。

 数字的にも、2018年の節目ともなる第90回はオープンワールドRPGとリアルタイムストラテジーの要素の融合ゲームともいえる「Kenshi」を紹介する。

本作品は日本語字幕に対応している。詳しい操作などは後述するが、キーボードとマウスを使用する。

選ばれし者などいない

 本作品はオープンワールドの荒野で、ひたすらに自己を追い求めるゲームだ。特に目標や目的もなく、プレイヤーが思うままに楽しむゲームデザインとなっている。  ゲーム開始で選べるシナリオはデフォルトの”放浪者’を基準としたゲームバランスとなっているが、もっとハードな状況でゲームをしたいと思えば文字通りドン底から始まるシナリオもある。

 ゲームを開始するとプレイヤーキャラクターの設定から始まる。冒頭の見出しにもなっている、選ばれし者などいないは決して誇張ではない。ここで設定したキャラクターでも襲撃に遭って殺されたり、食料を失するなどの生存手段が無ければ簡単に世界からその命を失うことになる。

マウスを画面端に持っていくか、キーボードのWASDでカメラの移動。マウスホイールでズームの調整、ホイールを押し込めば画面軸の回転ができる。

 また、キャラクターは画面下のキャラクターグラフィックから選ぶか、マップ上で直接キャラクターを選択することも可能だ。選択した状態でマップ上を右クリックすることで対象地点に移動でき、オブジェクトを右クリックすることで対象物に対して攻撃などを行える。後述するが、本作は複数のキャラクターをリアルタイムで切り替えて攻撃対象や移動を細かく指示することもあるため、カーソルのドラッグで範囲選択で一気に操作という、RTS的操作も可能だ。

 設定が終われば自分の作ったキャラクターが世界に放たれることになる。デフォルトの設定の放浪者であればボーダーゾーンという廃墟に近い街中から始まる。この段階でもだだっ広い荒野に飛び出すことも可能だが、何も考えずに町の外に飛び出すと5分も経たずに地面に口づけすることになるのが本作品である。

 自身の設定したキャラクターは非常に弱く、町の外にいる野党どころかヤギなどの草食動物にすらも返り討ちにあうレベルである。だが、これもゲームデザインの一部であり本作品の魅力の一つである。

 というのも本作品は何かしらの経験を積むことで果てなくキャラクターが成長していく。武器を振ることも武器種類の熟練度が、殴られることで防御や回避能力が鍛えられていく。戦闘に負けてしまっても生きてさえいれば経験は失われないが、ノーリスクというワケでもない。

 キャラクターはステータスがマイナスになると気絶し、出血状態で気絶したまま放置すればそのまま死に絶える可能性もある。命からがらに生き延びた場合でも四肢を失うリスクも本作品には存在し、四肢を失った場合は移動や行動に制限を抱えて今後は生活しなければならない。

 そのため、戦闘を避けて金策や修行にあけくれるのも一つのプレイスタイルだ。行き倒れから剥ぎ取った装備を売ったり、荒野に点在する鉱床から鉄や銅をひたすら掘り出して売るのも自由だ。このプレイスタイルの自由さこそがKenshiの魅力であり、プレイヤーごとに遊び方も大きく変わる。

 筆者は特に目標はなかったが、前回のプレイ時にはとある国家の人間を殲滅するという辻斬りプレイをしていた。推奨できるプレイではないが、そういう無謀な遊び方もできるのがKenshiといえるだろう。

徒党を組んで旗揚げしよう

 各地にある居酒屋では日雇いで一時的に仲間になる用心棒など、共に行動することができるメンバーを雇い入れることが可能だ。メンバーになるのにお金を要求する奴もいれば、一部のキャラクターは無償でメンバーとなってくれる人物もいる。最大30人までは操作可能なキャラクターを集められ、一度メンバーになれば命の限りプレイヤーと戦ってくれる心強い味方になる。

 操作可能なキャラクターは自身がクリエイトしたキャラクターと同じように操作できるため、普段の行動や戦闘時の行動も自身が指定しなければならない。これが前述にあるようなリアルタイムストラテジーの要素にもなっている。

メンバーがそろえば数の暴力で非力な野党などは組み伏せられるようになるかもしれない。

 徒党を組んで行えることの一つに拠点の設立がある。一人でも建設は行えるが、拠点を設立すると襲撃も発生するようになり、一人ではまず守り切れない。数多くメンバーがいれば拠点の設営作業や、資源の回収や防衛など数多くの行動を任せられる。

 拠点が設立できるようになるころにはゲームのある程度の流れも掴めるくらいにはなっているだろう。

 拠点の設立を行うことのメリットの一つに資源を鉄や銅、石材といった基礎資源を建築資材や鉄板などに加工できることにある。作成した資源は拠点に使ってもいいし、売却してもいい。建築物は拠点で研究を行うことで開放されていく。最初は必要最低限の簡易な物しか建てられないが、研究が進めば電気を利用した自動生産施設なども解禁されていく。

 チームを分けることもでき、拠点の管理を行うチームや、交易に向かうチームといった用途別の管理も行える。チーム全員を一人ずつ分けて全員が別方向で世界の果てに向かうこともできなくもない。

果ての無いプレイ体験

 今回紹介した内容は本作品の触りに過ぎない。ゲームオーバーという概念が本作品には存在せず、操作できるキャラクターがいなくなっても世界は動き続ける(文字通り放置して見ているだけになる)。時には襲撃に遭って奴隷として使役される展開もあれば、人食い族にさらわれて食われる展開もある。

 十人十色にゲームが展開するため、枠に捕らわれない楽しみ方を模索するのが本作品の正しい遊び方だろう。あなたがどういった体験をするかは分からない。更に、Steamのワークショップにも対応しておりMODを導入すればもっと世界は広がるだろう。

 難易度をとにかく上げてハードな世界に生きるもよし、ただひたすらに拠点を建築するもよし。それこそがKenshiという大いなる作品の魅力なのだ。

「Kenshi」の推奨動作環境は?

 最低動作環境の要件は、64ビットWindowsが安定して動くことに加えてグラフィックカードが必須となっている。だが、推奨環境ではメインメモリーが16GBとなっているためノートパソコンやメーカー製PCでは非常に厳しい。

 参考ではあるが、筆者環境(GeForce GTX1080/メモリー64GB)でもエリアの読み込みやキャラクターが大きく入り乱れる場面ではフレームレートが60fpsを割ることもあった。最低限、GTX1060クラスのグラフィックカード環境は用意してあった方が良いだろう。

『Kenshi』
●Lo-Fi Games
●3500円(2018年12月6日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows
ジャンル 独立系開発会社、オープンワールド、サンドボックス、建設、ストラテジー
© Copyright 2018, Copyright Lo-Fi Games Ltd. 2006

■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事