2018年12月28日10時30分

“ストレージ戦乱の時代”の10年間、ネットアップはどう生き抜いたか

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 2018年12月11日、ネットアップは都内でプライベートイベント「NetApp Innovation 2019」を開催した。

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「NetApp Innovation 2019」会場の様子

 「競合さんいらっしゃい! IT記者オオタニの忖度のないストレージ業界放談」と題されたセッションでは、TECH.ASCII.jp編集部の大谷イビサとネットアップ ソリューション技術本部 本部長の平松貢氏が登壇。「パブリッククラウド」「オールフラッシュ」といったテクノロジートレンドや他メーカーの動向も含めたストレージ業界10年間の変遷を振り返りつつ、ネットアップがどのような立ち位置でビジネス戦略を展開してきたのかを明らかにしていった。

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TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ、ネットアップ ソリューション技術本部 本部長の平松貢氏

この10年間、ストレージ業界に大きな影響を与えたものは?

 大谷はまず、2008年からこの10年間のストレージ業界における変化を、TECH.ASCII.jpに掲載した過去記事をピックアップしながら説明していった。

 10年前、2008年ごろのエンタープライズストレージ業界は“群雄割拠”の時代であり、ネットアップ以外にもEMC、日立製作所、IBM、ヒューレット・パッカード(HP)、デル、サン・マイクロシステムズといった大手メーカーが、覇権を争いながらそれぞれの“領土”を治めていた。

 「(2008年)当時のストレージの価値、役割の中心は『データの保管と保護』、大切なデータを『守る』ことにあった」(大谷)

 しかし、その後10年間のストレージ業界は“戦乱の時代”と表現しても差し支えないほどの大きな変化を見せることになった。新たな技術トレンドの急速な浸透と製品技術の更新、さらには業界内での企業買収や統合から新興企業の登場、企業破綻までストレージメーカーそのものの浮き沈みも激しいものがあった。

 この10年間、ストレージ業界の動向に大きな影響を与えた技術トレンドにはどのようなものがあったのか。同セッションではその動向を時系列で紹介したが、大きくは次の3つにまとめられる。

 まずは「パブリッククラウドサービスの登場と急速な浸透」だ。Amazon Web Services(AWS)が「Amazon S3」や「Amazon EC2」を提供開始したのが2006年のこと。2008年ごろにはパブリッククラウド活用も本格的な検討課題となっていた。なお、AWS東京リージョンが開設されたのは2011年だ。

 2008年前後、それまでオンプレミスデータセンター製品を主要領域としていたストレージメーカー各社は、パブリッククラウドとどういうスタンスで付き合っていくかという戦略の選択を迫られていた。

 ちなみにネットアップはこの時点ですでに、パブリッククラウドとの共存戦略を取る方針を明言していた。2009年の記事では、日本法人社長(当時)のタイ・マッコーニ氏が、クラウドサービス事業者に対する製品供給を積極的に推進していく方向性を語っている。

 「マッコーニ氏の『われわれはリーバイスになるんだ』という話がとても印象深かった。ゴールドラッシュの時代に、金を掘るのではなく、採掘者向けの作業着(ジーンズ)を供給するという戦略に、ネットアップのそれをなぞらえていた」(大谷)

 顧客企業のパブリッククラウド活用が進む中で、2014年にはAWS上で稼働する「Cloud ONTAP」もリリースしている。データ管理アーキテクチャの「Data Fabric」に基づき、保有するデータをオンプレミスにもパブリッククラウド(マルチクラウド)にも柔軟に移動できる環境を整えている。

 「ネットアップが起こしたイノベーション、Data Fabricの戦略はかなりユニークだと思う。4年前にこれを言い出したときには皆さんキョトンとされていたが、現在では『クラウドロックインを避けるために採用する』というお客様も多くある」(平松氏)

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 話を戻そう。ストレージ業界における過去10年間の大きな変化と言えば、「フラッシュストレージの急速な低価格化と普及」も挙げられる

 振り返ってみると、まだフラッシュの容量単価が高価だった2010年ごろまでは、従来のディスク(HDD)ストレージにキャッシュ用フラッシュを追加したハイブリッド構成が主流だった。だがその後わずか数年で、オールフラッシュアレイが市場に登場した。既存の大手ストレージメーカーも、HDDとは異なるフラッシュメディアの特性を前提として設計の見直しを行うようになる。

 技術トレンドとしては、フラッシュ以外にも「Software-Defined Storage(SDS)」「分散ファイルシステム」「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」などがあった。これらには顧客の“パブリッククラウド体験”が大きく影響している。パブリッククラウドと同様の使い勝手をオンプレミスでも実現したい、というわけだ。

 早期にオールフラッシュアレイの動きを牽引したのは、ヴァイオリンメモリーやピュア・ストレージといった新興ストレージメーカーだった。「ストレージメーカー間の買収/合併や新興企業の登場と破綻」も、この10年間を特徴づけるトピックだと言える。

 超大型案件としてデルとEMCの合併(2015年)は記憶に新しいが、それ以前から多数のメーカーが買収/合併を繰り返してきた(3PARやDataDomainのように複数メーカーが買収合戦を繰り広げたケースもある)。その一方で、SDSやセカンダリストレージなど、新しい技術やコンセプトを携えた新興企業も次々に登場し続けている。

 「サーバー市場だともはや『安く作る』くらいしかできないが、ストレージは新興企業が次々に出てくる。ストレージは中の作りがコモディティ化されておらず、アイデア次第で勝ち上がれる世界。ネットアップとしてもまだまだ気の抜けない業界だ」(平松氏)

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大谷は2008年から10年間のストレージメーカー間の買収/合併、新興企業の登場や破綻などを1枚の手描き図で示した

顧客企業がパブリッククラウドに移行しても問題ない、その理由

 セッション後半ではこれからのストレージ市場とネットアップの立ち位置の話になった。大谷は、現在のストレージ業界におけるトレンドキーワードとして「クラウド/フラッシュ/自動化」の3つを挙げる。

 クラウドについてはすでに触れたとおり、ネットアップではData Fabricをベースにハイブリッドクラウド/マルチクラウド環境における「データの可搬性」を担保する戦略を取っている。

 「AWS、Azure、GCPのいずれでも使えて、お客様がオンプレミスかクラウドかを気にせず使えるという理想の環境を目指している」(平松氏)

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平松氏

 このような、いわば顧客のパブリッククラウド移行を助長する戦略を取ることは、ネットアップのストレージビジネスにとってマイナスになるのではないか。大谷からも会場からもそうした質問が出たが、平松氏は「それはそれでいいと考えている」と答えた。

 「企業が適切な場所に投資をしていくのは当然のこと。ネットアップはそれでも生きていけるようなビジネスをしている」「ネットアップはもともとハードウェアを売りたいわけではなく、ソフトウェアこそがコアコンピタンス。顧客がパブリッククラウドに行っても、そこで使えるサービスを提供している。パブリッククラウドの場合は容量課金にするなど、レベニューモデルも異なる」(平松氏)

 またフラッシュについて、会場から「ネットアップはフラッシュのイメージが薄い」という意見が出たが、実際はすでに国内で30%のシェアを持っており、その実績は高いことを平松氏は説明した。

 HPE「Infosight」のような、ストレージ運用管理の自動化も今後のトレンドになりそうだ。平松氏は、2016年に買収したSolidFireがその技術を持っており、現在は「Active IQ(旧称:AutoSupport)」サービスとしてストレージ容量の予測分析やプロアクティブなサポートを提供していることを紹介した。

 「ネットアップは現在もさまざまなサービスポートフォリオを拡充し続けている。これからもどんどん増えていくので、皆さんも少し気にかけておいていただけたら」(平松氏)

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