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ローランドの新製品には現場の人が求める機能が搭載されている

2018年10月10日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集● ちゅーやん

 2018年10月3日、ローランド株式会社は秋葉原にある東京オフィスにおいて「ローランド新製品内覧会2018」を開催しました。

 先日発表した新製品、会議室や学校など狭い場所にも置けるコンパクトなマトリクス・スイッチャー「XS-42H」と、TV会議やサイネージ、イベント映像の特殊効果に最適なビデオ・プロセッサー「VP-42H」のお披露目イベントです。

 2つの製品はともにオープンプライスで、2018年10月19日に発売予定。「XS-42H」の市場想定価格は14万円前後、「VP-42H」の市場想定価格は16万円前後とされています。

VP-42Hの機能がライブ配信向け製品へ搭載されることに期待

 11月には国内外から注目を集め、最新のイノベーションが国内外から一堂に会する展示会「Inter BEE 2018」を控えています。そのため、テレビやラジオといった放送に携わる人たちや、私たちのようなライブ配信の業務に携わる人もメーカー各社がInter BEE 2018でどのような製品を新しく発表するかを気にする時期となりました。

 今回お披露目されたマトリクス・スイッチャー「XS-42H」とビデオ・プロセッサー「VP-42H」は来月のInter BEEでも触れられる製品です。どちらかといえば、これらはライブ配信向けの関連製品ではなく、会議室やイベントホールのスクリーンやサイネージへの利用が主と想定されたもの。

 「もしかしたらライブ配信向けの関連製品の新しい情報が得られるかもしれない」という心の中で思い描いていた期待は外れ、今回の内覧会ではその情報を得ることはできませんでした。

 しかし、今回お披露目されたビデオ・プロセッサー「VP-42H」は、最大4つの映像を組み合わせて合成でき、合成したい画面レイアウトをWEBブラウザーで画面の位置やサイズも自由にカスタマイズ可能です。

 さらに、設定した画面レイアウトを“シーン”として最大10パターンを記憶でき、それを物理的なボタン一発で瞬時に表示するこれらの機能は、私たちがライブ配信の現場で利用するビデオ・スイッチャーの製品分野にも搭載してほしい、大きな期待ができそうな機能であることに気がついたのです。

完成された画面を「物理ボタン一発」で瞬時に表示させるニーズ

Roland V-60HD

 セミナーなど、商品やサービスのプロモーションでライブ配信をする企業の現場では、ローランドのビデオ・スイッチャーをよく目にします。いま、人気で代表格な製品は「V-60HD」「VR-4HD」「V-1HD/SDI」です。

 こうした現場で活用されるビデオ・スイッチャーの機能のひとつに、ピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)やスプリット(画面分割)と呼ばれる映像合成があります。

 これまで、これらのビデオ・スイッチャーでその映像合成を実現したいとき、まず「ベースとなる背景映像を選び」、次に「子画面したい映像を選び」、最後に「PinPやスプリットのボタンを押して映像合成をオンにする」という複数の手数が必要でした。さらには、その手数を踏んでいる映像合成の切り替わりの様も画面上に映し出されてしまう、というもどかしさもありました。

 先に挙げたような現場ではそれでも良かったのですが、e-sportsのような少しテレビに近いライブ配信の現場では、映像が合成されていく様を視聴者に見せることなく、瞬時に完成された画面を一発で表示させたいというニーズが増えてきています。

 そうしたニーズに「VP-42H」に搭載された機能たちがライブ配信の現場でよく利用されるビデオ・スイッチャーへ機能として反映されるようになれば、「もっとさまざまなシーンでローランドのビデオ・スイッチャーを選ぶこともできる」ような気がします。

高価でなくても「高度なことが手軽にできる」時代へ

 もちろん、映像合成を事前に設定をしたうえで、複数の手数を必要とすることなく、“物理的なボタン一発で瞬時に表示できる”というニーズに応えるビデオ・スイッチャーは存在します。しかし、そうした機能はとても高価なビデオ・スイッチャーを手にするしか手段がありません。これらはテレビの収録現場のようなとても大きな規模感の場所で使われる製品です。

 一方、ハードウェアではなく、ライブ配信でよく利用される「Wirecast」「OBS」といったソフトウェアでも似たような映像合成を設定することは可能です。ところが、ソフトウェアのダウンリスク(=停止)が致命的となる業務としての現場では、こうしたソフトウェアを使用することは「手段として選ぶことはどうしてもできない」です。

 ローランドが今回新しく発表したビデオ・プロセッサー「VP-42H」に搭載された機能は、ハイエンドだけでなく、手が届きやすいVR-4HDやV-1HDのような20〜40万円程度の価格帯のミドルレンジなビデオ・スイッチャーにも反映されることで、ライブ配信の現場でも幅広い表現がさらにダウンリスクなく安心して気軽に実現できるようになることに、大きな期待をしたいです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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