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NVIDIA特別イベント「GeForce Gaming Celebration」を振り返る

CG界の聖杯「リアルタイムレイトレーシング」に手をかけたGeForce RTX 20シリーズを理解する【後編】

2018年08月23日 11時00分更新

 2018年8月20日(中央ヨーロッパ夏時間)、NVIDIAが開催した特別イベント「GeForce Gaming Celebration」を取材する機会に恵まれた。そこで発表されたTuringベースの最新GPU「GeForce RTX 20シリーズ」を理解するためのポイントを前回解説したが、今回はもっとユーザー目線、つまりPCゲーミングにレイトレーシングがどう関わるかについて解説したい。

 また、GeForce RTX 20シリーズのスペックについては、すでにジサトライッペイが詳しい記事を載せているのでそちらを御覧いただきたい。

レイトレーシング対応ゲームは投入間近

 Turingコア、すなわちGeForce RTX 20シリーズで実装されたレイトレーシングも、ゲーム側が対応しなければ意味がない、というのは容易に想像がつく。しかしながら、これまでも最新GPUの新機能を使ったゲームは「Coming Soon」されることが多かったのだが、今回は準備がかなり周到だ。

 イベントでは「Shadow of the Tomb Raider」(以下、SOtTR)と「Metro Exodus」、そして「Battlefield V」(以下、BF5)の3本が紹介され、さらに「Assetto Corsa Competizione」や「Hitman 2」などの新作を含めたタイトル21本がRTX対応を表明している。

SOtTRやBF5も入っているが、NVIDIA RTX対応予定のタイトルは21本。定番どころではPUBGも入っているが、RTX対応で軽くなればよいのだが……。

 今回のデモの中で最もわかりやすいのがBF5におけるレイトレーシングの活用だ。デモではカメラの視界の外で発生した爆炎が、画面の中央付近にある車のボディーに映り込む。だが、こうした表現はラスタライズ法では難しい。あらかじめ爆炎をテクスチャー化しておいて、それを車に貼り込むことで代用はできるが、その爆炎が違うところで発生したら、あるいは2つ3つと複数発生したらラスタライズ法ではお手上げだ。

 だがレイトレース法なら、爆炎がカメラの視界の外で発生しても、映り込むべき場所に映り込む。従来のラスタライズ法との比較もデモンストレーションされたが、ラスタライズ法では爆炎がカメラに直接映っている間は正しく映り込みが表現されるが、爆炎が何かの影に隠れ、カメラから直接視認できない位置になると突然映り込みが消える……といった現象が見られた。

 当然これはゲームプレイにも影響してくるだろう。曲がり角の向こうを車のボディーの反射を通じて確認するとか、逆に敵に発砲したらそれは鏡で「(本物は)こっちだ」とばかりにうしろから倒される、といった展開が考えられる。

左手前にある戦車の陰で炎が上がっている。画面中央の車のボディーにはこの炎が映り込んでいてよいはずだが、RTXオフの状態ではボディーに反射は表示されない。ボディーに見えるハイライト部分は、あらかじめ背景データなどから割り出しておいた環境マップによるものであるため、リアルタイムには反映されない。

同じシーンをRTXを有効にして表現するとこうなる。レイがカメラからボディーに当たり、その反射をたどった先には炎がある。つまり、ボディーに炎を映り込ませようというのがレイトレース法だ。陰に隠れていた物体も反射により明らかになる。

RTXがオフでもボディーに炎が映り込むことがある。それは炎を構成するオブジェクトがそれを反射する車と一緒にフレームインしたときだけだ。ここから炎だけをフレームアウトするように移動すると、ある一点から先で車のボディーから炎の映り込みがいきなり消失することになる。

 SOtTRも実際のプレイの様子がお披露目された。デモでは色とりどりの照明や花火の光があちこちに存在するお祭りのようなシーンにおいて、ラスタライズ法では正確に表現できなかった自然な影のブレンド具合が、レイトレース法だと表現できるとアピールしていた。

花火の炎が生み出す影は、RTXオフの状態ではちゃんと表示されない。おそらく影生成用のシェーダーを動かしてないせいもあるだろう。だが、RTXを使えばレイトレーシングの力で花火が地面に影を落とし、その形も本来あるべき姿になる。

ここでは中央のキャラが地面に投影した影の形に注目。複数の照明があたっているので影も複数出るが、RTXをオンにするとちゃんと影の境界が自然にボケる。

 今回、BF5もSOtTRもRTX対応のデモ版が会場で遊べるようになっていたが、運良くこのゲームのプレイ動画をGeForce ExperienceのShadowPlayで録画できる機会に恵まれた。BF5については今回公開できないが、SOtTRのプレイ動画をお見せしよう。遊べるシーンがあまりレイトレースの旨味を感じられないシーンであること、さらにRTXをオフにはできないなどの制約はあったが、RTXを利用したレイトレースっぽい効果は確認できた。

 動画の中では自分(カメラ)の後ろにあるシャフトが回転したときに、ちゃんとその影が壁や自キャラ(ララ・クロフト)に落ちていることに注目したい。カメラ位置と影を作る物体の位置関係を考え、必要に応じて影生成のシェーダーを別に動かさなくても、レイトレーシングを動かせば一発で計算してくれる、というのがこのシーンのキモと言える。

 総じてみると、レイトレーシングでゲームの表現はよりリッチになる。BF5で紹介したような反射を使った立ち回りが増える可能性はあるが、DXR対応GPUが相当数に増えるまでは、反射などを前提にしたゲームは出てこないだろう。

DXRに今後対応を予定している「Assetto Corsa Competizione」のイメージ。ガレージに停車している車のボディーに天井の蛍光灯が映り込むほか、ヘッドライトの光や、周囲にいる人物もボディーなどに映り込むという。

 GeForce RTX 20シリーズはCUDAコア数が増えたぶんのメリットはあるだろうが、1fpsを稼ぐためにGTX 1080 Tiでも画質を極限まで落とすeSpotrs系のガチゲーマーには無用の長物なのかもしれない。見た目をリッチにする機能ではHDRもよくやり玉に挙がるが、HDRはディスプレー側の対応も必要なので敷居はさらに高く、業界的な規格統一も十分とは言えない。その点、RTXはDirectX12にマージされたDXRをサポートしているため、今後のメインストリームとなる可能性がある。

 つまり、今すぐゲームシーンが変わるわけではないが、今後のPCゲームのグラフィック表現の転換点となる製品がGeForce RTX 20シリーズなのだ。ジェンスン氏の革ジャンのデザインが変わるのも頷ける。

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