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auがスタジアムで5G通信による自由視点映像のリアルタイム配信に成功

2018年06月30日 16時00分更新

文● モバイルプリンス 編集●南田ゴウ/ASCII編集部

 KDDIとKDDI総合研究所、沖縄セルラーは6月26日、次世代通信システム「5G」を利用してプロ野球を好きな角度でライブ観戦するリアルタイム配信の実証実験に成功しました。リアルタイムの映像を5Gで転送する実験の成功は世界初とのこと。

 今回の実験は、スタジアムに設置した16台のカメラ映像を有線でサーバーへ転送。転送された複数の映像からサーバーで自由視点の3Dコンテンツを生成し、有線で5G基地局へと送り、基地局から観客のタブレットへ5Gで高速転送を行うというものです。商用化の時期は未定としながらも、新たなスポーツ観戦体験を感じる実験となっていました。

最新技術を体験価値に変換することが責務

 KDDIとKDDI総合研究所、沖縄セルラーは、今回の実験と合わせて6月27日にメディア向けの説明会を実施しました。

KDDIグループは「通信とライフデザインの融合」をテーマに、これまでもサッカー日本代表VR観戦(2017年12月)、フリーライドスキーVR体験(2018年1月)、六大学野球 スマホライブ中継(2017年4月~)など、さまざまなスポーツ視聴体験を実施してきた

今回、さらなる視聴体験を提案するために次世代の通信技術5Gを使って自由視点映像に挑戦

現在は各社とも4Generation(世代)の電波でスマホが快適に使えるが、これから登場する5Gによってさらなるユーザー体験が得られる

説明を行ったKDDI株式会社モバイル技術本部シニアディレクターの松永彰氏によると、5Gのメリットは「高速大容量・多接続・低遅延」の3つ

5Gがもつ3つのメリットで自動運転やドローン空撮などが可能になり、現在はさまざまなパートナーと協力の上、5Gを構築している

今回の実験で使われた5Gは、28GHz帯の周波数を利用して下り最大2.4Gbpsの超高速通信を実現

従来の自由視点映像は多数のカメラを設置することでマルチアングルを構築していたが、今回の実験では足りない視点を既存の映像から予測し、3Dモデルを生成することで補なう方式を採用。3Dモデルを生成する必要があるものの、設置するカメラ台数を減らすことができるため、最終的にはさまざまなコストを抑えることができそう

 松永氏は「最新技術を体験価値に変換することが責務」とし、今後もKDDIグループでユーザーにワクワクする体験を届けるため、様々なスポーツやイベントで映像配信を行う予定とのこと。

受信タブレットに「5G」の表示が

 映像配信の実証実験は、26日に沖縄セルラースタジアム那覇にて開催された「北海道日本ハム対福岡ソフトバンクホークス」のプロ野球公式戦にて実施されました。

バッターボックスを取り囲む形でスタジアム内に16台の4kカメラを設置

すべての映像は有線で一旦スタジアム内のサーバーに収容される

ここで映像が解析され、3Dモデルが瞬時に生成される

 解析された画像は有線でコアネットワークと5G基地局へと送られ、最終的にモバイルネットワークを使って観客席のタブレットに届く仕組みです。

スタジアム内に5Gの基地局を設置。アンテナは照明ポールに取り付けられている

今回は5Gを受信できる専用のタブレットが10台用意されており、画面をタッチ・ピンチアウトすることで自由に視点を切り替えることができる

タブレットのアンテナはしっかり「5G」表示となっていた

 なお、今回の実証実験では4kカメラを使っていたものの、タブレットで受信する映像は2k解像度でした。最終的には8k配信も目指しており、高解像度を生かした高倍率ズームなどでさらに自由度を高めたいとのこと。

 複数のカメラ映像を活かしたVR配信も予定しているとのことで、いずれは家庭でもスタジアムの臨場感を味わえるようになるでしょう。

 

会場では録画した試合の映像をVRで楽しめるイベントブースも設置

 今回の実証実験は未来を感じる取り組みながら、実験段階ということもありさまざまな課題も浮き彫りになっていました。まず、5Gで使用される周波数は直進性の高い28GHz帯のため、アンテナと端末との間に人がいるだけで電波が弱くなるとのこと。そのため、電波が届くエリアはかなり限られてきます。

 また、3Dモデルの配信サーバー1台につき処理できるタブレットが1台とのことで、今回のタブレットの上限は10台でした。5G通信だけでなく、映像処理技術の進化も求められます。

 商用化に対するさまざまなハードルはありつつも、システムが実用レベルになるとスポーツ観戦が劇的に変わることが予想されます。自由視点に加え、選手データや分析などが細かくタブレット端末に表示されることで、ライト層も取り込めるでしょうし、現地観戦できなくても熱量も共有できます。

 今後の提供時期、サービス内容は未定としながらも、こうした実証実験での成功を重ね、1日でも早く利用できる日を楽しみに待ちたいと思います。


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