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旧盤のハイレゾ化で新たな発見も

麻倉推薦:アナログ時代の優秀録音が現代の技術で蘇る点に驚き

2018年05月13日 10時00分更新

 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。4月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『Music IS (Japan Version)』
Bill Frisell

 アメリカの伝説的なギタリスト、ビル・フリゼールの全曲自作の最新アルバム。OKehレーベルからの第4弾だ。素晴らしいサウンドだ。ストレートにマイクが捉えた弦の振動が醸し出す音楽的な調べが、ハイレゾならではの広帯域と、ハイ・ダイナミックレンジで見事に、感動的に聴ける。ソロなのに、この音の情報量の多さと、溌剌さ、深みはどうか。まったくの無音状態から突然のように、垂直的に音が立ち上がるさまはまさにハイレゾの恩恵だろう。繊細なピアノから剛毅なフォルテまで、音楽的な表情の多彩さ、音色変化の鮮やかさ……など、まさに耳と体の快感だ。

FLAC:88.2kHz/24bit
Okeh/Sony Masterworks、e-onkyo music

『小さな恋のメロディー』
ザ・リリーズ

 「ザ・リリーズ」とはたいへん懐かしい、と思ったら、再結成し現役で活躍されているという。私の記憶に残る双子アイドルの第一次リリーズは1975年から1986年に活躍し、引退。代表曲『好きよキャプテン』(松本隆作詞・森田公一作曲)を収載した本アルバムは、大活躍していた時期のベストを集めた。まず「好きよキャプテン」を聴く。当時、これほど音がクリヤーであったとは、想像もしなかった。録音チームは良い仕事をしていたことが分かる。弦、オーボエ、チェンバロ……などの楽器の鳴りがひじょうにクリヤー。双子のヴォーカルもユニゾンとハモリの違いが明確で、基本センター定位だが、合唱時は微妙に音像位置が離れることも。なかなかのミックス技だ。オーボエとチェンバロによるヴォーカルとのリフ的な絡みも可愛い。一曲目の「いじわる時計」はまるでキャンデーズの「年下の男の子」と「優しい悪魔」のカバーみたい。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
Universal Music、e-onkyo music

『ブラームス:交響曲 第 4番、シューマン:交響曲 第 4番』
小林研一郎、 読売日本交響楽団

 小林研一郎と読売日本交響楽団のブラームス・シリーズの完結編。実に透明感が高く、抜けがよく、細かな音の表情変化が捉えられた音だ。DSDならではの音色感の鮮やかさも印象的。楽想による音変化の過程もよく分かる。エクストン録音は、音像と音場のバランスが好適なのが美質だが、本録音も、奥行き方向まで拡がる音場感と、各ブルトの確実な音像感の両立が見事だ。響きの消えゆく様がクリヤーに聴き取れるのも、エクストン録音とDSDの合わせ技であろう。読響もドイツ的な、それでいてクリヤーな響きを上手く表出している。

FLAC:192kHz/24bit、WAV:192kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit
EXTON、e-onkyo music

『The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6』
Miles Davis、John Coltrane

 マイルス・デイビスとジョン・コルトレーンの歴史的協演。1960年春のヨーロッパ・ツアーにおけるラジオ放送音源から、5公演での演奏を収録している。3月21日パリ:オランピア劇場での2公演、 3月22日ストックホルム:コンセルトフセットでの2公演、3月24日コペンハーゲンのティヴォリス・コンセルトサル公演……と,ツアーから5公演がセレクトされている。

 いまから60年近く前の録音であることが信じられないほどの新鮮さが聴ける。まさに世界遺産的な演奏が、こうした形で遺された録音という技術革新に感謝しなければならない。一曲目All of Youはパリライブ。トランペットの繊細で、シャープな音が臨場感豊かに捉えられている。面白いのは、同じパーソネルで、違う会場で演奏した同じナンバーが、複数収録されていることだ。

 マイルスが作曲したSo Whatはコペンハーゲン、ストックホルムが二つの3箇所のライブが4パターン収録されている。10曲目のコペンハーゲンはやや帯域が狭くいが、凝縮感を感じる。音像的にトランペットが主役的にフューチャーされている。15曲目ストックホルム(1)は音の立ちが明確。トランペットも含めて、音の線がやや細い。ストックホルム(2)は、ピアノの音が軽く、ベースもいまひとつ不明瞭。レンジも狭い。このように世界史的にも貴重な演奏を聴き比べられるのがマニアックで、愉しい。パーソネルはマイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(d)。

FLAC:96kHz/24bit
Columbia/Legacy、e-onkyo music

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