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「コスト0円で仕掛けるウェブサイトからの人材採用」レポート

「自社がどういうキーワードで人を集められるのか」企業と個人のミスマッチを防ぐ採用ページ作り

2018年04月03日 09時00分更新

 2018年2月21日、「コスト0円で仕掛けるウェブサイトからの人材採用」というセミナーが開催された。創業前後やシード期の経営者や人事担当者に向けた、HR×ウェブデザインといった内容だ。

2018年2月21日、KADOKAWA富士見ビルにて、「コスト0円で仕掛けるウェブサイトからの人材採用」というセミナーが開催された

 講師として登壇したのは、ウェブディレクションの書籍を多数手掛け、ウェブプロデュースに詳しい株式会社まぼろし取締役CMOの益子貴寛氏。ITフリーランスの独立や起業支援を行なうパラフト株式会社の山田勝氏。ホームページ作成サービスのBiNDクラウドの開発プロジェクトマネージャーである株式会社デジタルステージの洪泰和氏の3名。

株式会社まぼろし取締役CMOの益子貴寛氏

パラフト株式会社の山田勝氏

デジタルステージの洪泰和氏

採用サイトは信頼感が大切

 セミナーでの最初のお題は「採用サイトで伝えるべきこと」。

 そもそもウェブでの人材採用として、「リクナビ」のような人材エージェントサイトでの採用、「Wantedly」のようなSNS型情報発信プラットホームでの採用、さらに自社で採用サイトを作るという3つの方法が説明された。今回のセミナーでの主眼は3番目の自社サイト運用だ。

 たとえば一般的なエージェントサイトは成功報酬のところが多いためカジュアルに使えるが、雇用時には年収の30~35%程度が報酬として発生する。また、自社で採用ページを作る際、外部のプロに依頼するともちろんコストが発生する。東証一部上場企業の採用サイトの場合も、同様に数百万円単位となるという。だが、それでも数名を雇用できれば、そのような金額はコストとしてはペイできるレベルとなる。

 とはいえ、外部から成長を急かされているような採用目的の調達があるスタートアップを除いて、一般的なベンチャーや中小企業の場合そのようなコスト負担は厳しいのが実情だ。自社サイトであれば、労働コストはかかるが、自分たちで作れば0円で済ませられる。

 「ただし、プロに発注しないで自分で作ろうとすると、どうしてもいまいちなデザインになってしまいます。採用サイトは信頼感が大切です。見た感じ、ばりっとしていなければいけないんです。担当者のスキルが足りない場合は、やはり外注するか「BiND」のようなツールを使うことをオススメします」(益子氏)

 「BiND」はデジタルステージが手掛けるホームページ作成ツールだ。2014年には「BiNDクラウド」というクラウドサービスもリリースしている。難しい技術を知らなくても、ハイクオリティーなウェブページを作成できる。

 「利用としてはスモールビジネスのお客様がとても多いです。BiNDはテンプレートを選び、コンテンツを入れ替えるだけで1ページに情報を集約するランディングページを短時間で作成できます。採用サイトも、1ページに集約することが多いので、適していると思います」(洪氏)

ホームページ作成ツール「BiND」。2017年には「BiND 10」が発売された。デジタルステージは1998年に創業し、当時は映像系ソフトの「motion dive」を開発していたが、10年ほど前からウェブ制作ソフト「BiND」を販売している

採用で一番多いミスマッチを防ぐ自社サイト

 自社でサイトを作る目的はコストだけでもない。リクナビやWantedlyの一方で、採用サイトが必要な理由が登壇者からは語られた。

 実際のスタートアップ企業で働く側の情報として、山田氏の場合、自分の知り合いに声をかけるリファラル採用をしていた。だが10人を超えたあたりから、エージェントサイトを使い始めたという。

 「ネットで採用する時に重要なのが、自分の会社がどういうキーワードで人を集められるのかを一言で表現できるようにしておくことです。ブランドとか文化を意識して会社を作ることができれば、人は集めやすいと感じています。採用で一番多いミスマッチは文化の違いなんです」(山田氏)

 また、採用サイトを作る際は、ターゲットを考える必要があると益子氏。新卒は学生向けとペルソナが明確なので、じつは難易度が低い。いっぽうでキャリア採用の場合は人によってさまざまなバックグラウンドがあるので網羅するようなホームページ作成は難しい。

 「新卒と中途では根本から異なります。中途では検討するのはせいぜい数社ですが、新卒の学生は100~200社のウェブサイトを見ます。そのため新卒採用はあくまでインパクト勝負というところがあります。たとえば新卒採用サイトのトレンドはキービジュアルの動画化です」(益子氏)

 中途の場合は、クリエイターやエンジニアなど、職種別にサイトを作るのがトレンドになっている。採用サイトだけでなくていろんなサイトでも同じだが、写真をどんと大きく使うのもトレンドとのこと。

 「採用サイトを作るにあたり重要なのは、嘘を書かないこと、盛らないことです。嘘をついて入社してもらっても、長く続かず離職してしまうことになりかねません。ストレートにうちの会社はこんな感じです、と紹介すべきです。等身大でいいと思います」(益子氏)

「採用サイトのタイプ別ポイント」

「BiND」のテンプレートを使って、洪氏がサンプルサイトを作ってくれた

 セミナー後半では、洪氏が「BiND」で作成したサンプルサイトをもとに、ターゲット別サイト作成のコツを紹介してくれた。ここではエンジニア向けの採用サイトについて出てきたテクニックを補足する。

エンジニア向けの採用サイト見本デザイン。上がもともとのデザインで、下が調整後のバージョンとなる。左上には何のサイトかをわかりやすく書き、続いて大きく企業のコンセプトを打ち出している。洪氏によれば、男女比や年齢、有給消化率など一般的な求人サイトでは見えてこないところも積極的に打ち出すと、企業の色が見えてくるという

 洪氏が作りこんだ採用サイトでのポイントは、メインビジュアルに自分たちで撮影した写真を掲載した点だ。素材サイトの写真だと作り物っぽいため、具体性のある写真の方がよいという。

 また簡単にいい写真を撮りたいなら、引かずに寄るのがコツだそう。「キーボードと手を写すだけでもOK!」と益子氏。画質がばらばらな場合、Instagramを通して色味を統一させるテクニックも紹介された。

 「エンジニアは会社の中での働きやすさや雰囲気を重視します。一方でリモートワークといった働き方の担保も知りたいところです」(益子氏)

 「1000人くらいのエンジニアとお仕事をしましたが、彼らが求めるのはモニターが2つあるとか、椅子がいいといった開発の環境です。後は、新しい技術を取り入れようとしていると打ち出すと、応募の数が違ってきます」(山田氏)

登壇者同士で質問を投げ合うなど、密度の濃いトークが繰り広げられた

 実際に、採用サイトを作成、運用していたり、その開発ツールを手がける人の話を直接聞けた本セミナー。トレンドとなっている大きな写真や動画を使い、嘘を書かず内容を盛らず、採用したいターゲットに合わせて、コンテンツやデザインを作り込む、など自社だけでできることは数々ある。大きなコストを割けない場合こそ、しっかりと戦略を組み立て、準備をすべきだ。

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