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羽生結弦がプーさんを寄付するワケを『E.T.』を観て考えた

2018年03月24日 17時00分更新

スピルバーグと羽生結弦の共通点は?

 いきなり何の話だと思われるかもしれませんが、スティーブン・スピルバーグの『E.T.』(1982年)は「羽生結弦がプーさんを寄付するワケ」を考えることができるかもしれない、深い深い映画です。

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 羽生結弦選手(23歳)は、2月に「フィギュアスケート競技・男子シングル」で見事、金メダルに輝きました。彼を優勝まで導く心の支えになったものの1つとして「くまのプーさん」があります。リンク上に、大量にプーさんのぬいぐるみが投げ込まれた光景は、印象に残っている人も多いでしょう。

 プーさんのティッシュケースを持ち歩く彼は、練習中にリンクサイドにプーさんのぬいぐるみを置くこともあります。アスリート研究所著『羽生結弦 会見全文』(ゴマブックス社出版)によると、「いつも変わらないあの表情をみるとリラックスできる」と語っているとか。

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 突然ですが、ピクサーの映画に『インサイドヘッド』(2015年)という作品があります。11歳の少女、ライリー・アンダーソンの頭の中で、ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミといった5つの感情が冒険をする、という物語です。彼女は田舎から都会に引っ越したことで孤独感を感じています。そんな彼女の心の支えは「ビンボン」という空想の友達でした。

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 彼女にとってのビンボンのように、子供時代に持つ空想の友達のことを「イマジナリーフレンド」と呼びます。ライリーもそうですが、ひとりっ子の子供はこういう幻想を持ちやすいと言われているようです。羽生結弦にとってのプーさんをイマジナリーフレンドと呼ぶのは少しおおげさかもしれませんが、心の支えになった存在といってもよいでしょう。

幼心に抱いた、宇宙人との友情

 いよいよ本題ですが、子供の頃、スピルバーグもイマジナリーフレンドを持っていました。

 ジョン・バクスター著、野中邦子訳『地球に落ちてきた男―スティーブン・スピルバーグ伝』(角川書店出版)によると、彼はユダヤ系アメリカ人で、幼い頃に両親が離婚。背が低いこともあり、学校でいじめられていていたようです。

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 そんな彼を救ったのは、宇宙には自分と親しくなってくれる宇宙人がいるのではないか、という幻想にも似た夢でした。DVD・ブルーレイの特典映像「『E.T.』の誕生秘話」で、彼はこう語っています。

 “出てくる子供は、子供時代の私と家族の分身。孤独な子供の心を満たしたいと、映画を作り始めた子供の時から考えてた。孤独を現実の家族ではなく、空想の宇宙の友達で癒やしていた。”(映像特典の字幕より)

 この子供時代の夢を実現させたのが『E.T.』です。主人公は郊外で過ごす少年のエリオット。両親が離婚しており、兄の友達にいじめられています。ほとんど子供の頃のスピルバーグ自身といってもよいでしょう。

(次ページでは、「通過儀礼について考える」)

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