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第4回日本ベンチャー大賞 受賞セレモニー

日本ベンチャー大賞にメルカリ 世界展開に意欲

2018年03月07日 07時00分更新

内閣総理大臣賞はメルカリが受賞
世界展開と2つの新サービスに意欲

 2018年2月21日、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会が主催する「日本ベンチャー大賞」の受賞セレモニーがホテルニューオータニ 鶴の間にて開催された。

 日本ベンチャー大賞は、次世代を担う起業家のロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出したベンチャー企業を称えることにより、社会全体のチャレンジ精神の高揚を図ることを目的に実施されている。

 通算4回目となる今回は、214件の応募のなかから内閣総理大臣賞(日本ベンチャー大賞)1件、経済産業大臣賞2件、農林水産大臣賞1件、審査員特別賞2件が選出された。

 受賞企業の発表に先立ち、主催者側を代表して、経済産業大臣政務官 大串正樹氏が登壇した。

経済産業大臣政務官 大串正樹氏

 「日本ベンチャー大賞は、新しい事業に挑戦する大切さを国民一人一人に思い起こしてほしい、という安倍総理の思いにより創設された。失敗を恐れぬ挑戦こそが称賛される文化を築いていこう、という政府からのメッセージでもある。

 内閣総理大臣賞には、革新的なビジネスモデルで世界に羽ばたき、日本ベンチャーのグローバル化の模範として活躍する企業が選出された。経済産業大臣賞には、大企業とベンチャー企業の連携によるイノベーションと、女性起業家の活躍を称えている。農林水産分野に貢献のある企業に農林水産大臣賞を、審査員特別賞には、新進気鋭のベンチャーを選出した。

 いずれも起業家のロールモデルとなり、日本を代表するベンチャー経営者だ。信念をもって果敢に挑戦し、新しい境地を切り開く、ベンチャー企業の活躍こそが、経済のエンジンとなる。産業変革の機種たるベンチャーが次々と生まれることで経済の好循環がさらに力強く前に進むだろう。多くの起業家の創出により、日本がベンチャー大国として、世界の中心で輝くことを政府としても支援していく。また、ベンチャーが生み出す製品・サービスによって、国民生活がより豊かになることを期待する」と語った。

 内閣総理大臣賞(日本ベンチャー大賞)は、株式会社メルカリが受賞。経済産業大臣賞 ベンチャー企業・大企業等連携賞には、株式会社ソラコムKDDI株式会社、経済産業省 女性起業家賞には、株式会社ビザスクが受賞。農林水産大臣賞には、株式会社ルートレック・ネットワークス、審査委員会特別賞には、株式会社マネーフォワード株式会社PKSHA Technologyがそれぞれ受賞した。

新事業「メルペイ」「メルチャリ」で
世界中の人々のリアルな生活を変えていく

【内閣総理大臣賞】
株式会社メルカリ

株式会社メルカリ 取締役社長兼COO小泉文明氏

 「現在、設立から5年が経ち、従業員は約800名、日本、米国、英国の3ヵ国で事業を展開している。2017年11月には、世界で1億ダウンロードを突破、米国で累計3000万ダウンロード強を突破している。英国は2017年からサービスを始めたばかりではあるが、さらに日本のプロダクトが世界中で使われるように、推進していきたい。

 2018年は、2つの大きなチャレンジがある。ひとつはファイナンス系サービス「メルペイ」、もうひとつは、シェアサイクルサービス「メルチャリ」を2月27日よりスタートする。これまで以上にリアルな生活へと踏み込み、多くの人々の生活を変えていきたい」と、グローバル展開の拡大と新サービスへの意欲を語った。

KDDIのIoT基盤とソラコムの通信プラットフォームで
グローバルに通じるIoTサービスを

【経済産業大臣賞 ベンチャー企業・大企業等連携賞】
株式会社ソラコム×KDDI株式会社

株式会社ソラコム 代表取締役 玉川憲氏(左)とKDDI株式会社 代表取締役 執行役員副社長 髙橋誠氏(右)

ソラコム玉川氏:「2016年の9月にKDDIの高橋氏に初めてお会いして、新しいIoT向けのモバイル通信をKDDIのインフラを使って実現しようと意気投合し、その取り組みが評価されたことがうれしい。ソラコムはIoT向けの通信を提供しており、サービス開始から2年間で9000以上の顧客に使われている。“世界中のヒトとモノをつなぎ共鳴する社会へ”というビジョンを掲げ、創業当初から世界展開を挑んできた。いま世界で最も進化しているIT分野において、大成功している日本初の企業はまだいない。我々はそこにチャレンジしたい。大変なことだが、やってみないと成功はしない。初心を忘れず、KDDIの支援のもとにこれからも積極的にチャレンジしていきたい」

KDDI髙橋氏:「KDDIでは、2012年からベンチャー企業への支援を行なっているが、その前にシリコンバレーで勉強し、CVCでは、投資をしたあとに自分たちへのシナジーを求めず、投資をする企業に対して、自分たちのアセットを最大限注入し、その企業が最大限に大きくなるようにハンズオンすることが大切だ、と教えてもらった。投資するまでにはかなり時間がかかった。通常の投資であれば2週間くらいで決定するが、今回は1年くらいかけて、我々のアセットをどのように注入すればいいのか、真剣に社内で議論した。日本の場合、イグジット先はIPOが主流だが、大企業でM&Aをする形の投資をこれからも続けていきたい。これを成功モデルとして、他の大企業もこのような投資が広がるといい」

参考:IoT向け回線サービス「KDDI IoTコネクトAir」

【経済産業大臣賞(女性起業家賞)】
株式会社ビザスク

株式会社ビザスク 代表取締役 端羽英子氏

 「ビザスクは、“世界中の知見をつなぐ”をビジョンに、ビジネスパーソンの知見を1時間単位でピンポイントにマッチングする、スポットコンサルのプラットフォーム。仕事をしている誰もが活躍できるシェアリングエコノミーとして、大企業の新規事業、起業を考える方に活用されている。現在、約6万人の登録アドバイザーがいらっしゃるが、その背景には、働き方改革の副業解禁の流れがある。ビザスクは、1時間単位なので、業務の隙間時間にチャレンジできるしなやかなサービスだ。また、女性起業家賞を受賞して、うれしい反面、悔しい気持ちもある。起業家として、女性だからではなく、チーム全員が生み出す、新しい価値で評価されるようにがんばっていきたい」

【農林水産大臣賞(農業ベンチャー賞)】
株式会社ルートレック・ネットワークス

株式会社ルートレック・ネットワークス 代表取締役社長 佐々木伸一氏

 「弊社が発売している『ゼロアグリ』という商品は、“日本の農業の課題とアジアの課題を解決する”というコンセプトのもとでつくりあげた。日本の農業分野は高齢化し、現在の平均年齢は67歳。過去10年間に約100万人が離農し、私達が食べているおいしい野菜の技術が損失されている。一方でアジアは人口が増加し、多くの作物の栽培するための水が必要だ。そこで、我々は節水栽培に着目。イスラエル発の点滴潅漑にICTとAIを付加することで、新規就農者でも簡単に点滴潅漑ができるような装置を開発した。アジアを含め約100拠点に採用されており、導入の効果として、水と肥料削減が50%、水と施肥の労働力が90%削減、収支は30%増の実績がある。これから日本初アジアへの展開をさらに図っていきたい」

参考:ICT技術による土壌環境制御システム「ゼロアグリ」

【審査委員会特別賞】
株式会社マネーフォワード

株式会社マネーフォワード 取締役 フィンテック研究所長 瀧俊雄氏

 「マネーフォワードは、6年前にサービスを開始し、約600万人の個人の方々に自動の家計簿を提供している。家計簿のサービスは、三日坊主になりがちだが、自動化することで何も苦労せず続けられる。同様に、会社向けにMFクラウドシリーズも提供しており、全国の企業にご利用いただいている。ただ、家計や企業の会計の見える化に留まらず、その裏側に隠されているデータの価値を引き出すことに、一番のミッションを置いている。たとえば、少子化の最大の理由は、お金の不安だ。また、労働人口が不足するなか、数字の記入などの単純処理は、人間がやる時代ではない。真に人間が必要とされる業務を増やしていき、生産性を上げていくことを目指している。その流れのなか、たとえば、キャッシュレス化の促進、あるいは金融データの利活用といったテーマについても、サービス面でのパイオニアとして、提言していきたい」

【審査委員会特別賞】
株式会社PKSHA Technology

株式会社PKSHA Technology 代表取締役 上野山勝也氏

 「我々の事業では、人の目に代わる画像認識、自然言語処理による対話、といったソフトウェアを開発し、さまざまなデバイスに組み込んで知能化する技術を提供している。この事業は、日本でやることに価値があると考えている。数年前には人工知能が人の仕事を奪うと心配する声もあったが、現実には、日本の労働人口は減少傾向にあり、地域・業界でブレイクダウンすると、かなり人が減っている領域がある。そういった領域に我々のアルゴリズムを使うことで、品質を保つ、あるいはさらに高度化していけるのではないか。技術は市場のニーズがないと育たない。人口が減っている日本だからこそ、育つ分野でもある。日本で育てたプロダクトを、中長期にはグローバルへ展開していきたい」

 最後に、審査委員長の早稲田大学 名誉教授、日本ベンチャー学会 元会長の松田修一氏から総評として、受賞のポイントが述べられた。

 今回は211社の応募があり、上位37社について審査員で議論した。審査の基準として、事業のビジョン、新規性、革新性、チャレンジ性、世界に向けての拡張性を評価し、6社の企業を選出した。

 メルカリは、日本発の循環型社会に対する提案であり、消費者行動を変えていく、個人間取引のプラットフォーム事業だ。報道されているように、次々と課題が浮かび上がっているが、それらを解決しながら、これから世界に飛躍していく、日本で最も期待されるベンチャー企業として評価した。

 経済産業大臣賞のベンチャー・大企業等連携賞のソラコムとKDDIについて。ベンチャー企業の出口は、日本ではまだまだIPOを目指しているが、米国では90%がM&Aだ。M&Aをテコにしてさらに飛躍している。今回の受賞は、典型的なM&A事例のロールモデルになるべく、KDDIがしっかりとソラコムを育てていくことに期待している。

 ビザスクの1時間のスポットコンサルは、スキマ時間に自分の能力を活かせる、まさに働き方改革を促進する事業として選出した。

 農林水産大臣賞のルートレック・ネットワークスは、持続型農業を世界に広めてくれる会社だと評価。

 審査委員会特別賞のマネーフォワードは、地方の困っている金融機関と連携しながら成長している期待の星だ。マイナンバーとドッキングすると、政府の施策と一致するのではないか。PKSHA Technologyは、大学発のベンチャーとしてプラットフォーム事業で世界に打って出る、ユニークな会社として評価した。

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