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ZシリーズではないけどVAIOの結晶なのである

新VAIO S11 試用レポート 8GコアとLTEと最高速をめざしたモバイルPCだっ

2018年02月05日 08時00分更新


 VAIOが1月18日に発表した新S11/13は、同社初の第8世代コア(8Gコア)搭載モバイルPCである.

 Sシリーズは、2013年6月に発売となった軽量ウルトラブックの「VAIO Pro」の子孫で、2015年12月にS11が、2016年2月にS13がともに第6世代コア搭載モデルとして登場して2年近く継続して販売された.新生VAIO社の土台マシンなのである.

 そしてついに、2017年9月、第2世代モデルとして第7世代コアを採用したと思ったら、4カ月後に今回の第3世代モデル発表と、急にピッチが上がったのだが、最新モデルはもちろん第8世代コアを搭載したのが最大の変更点である.

VAIO TruePerformance
ターボ状態を維持するのだ

 今回の新S11/13でいちばん変わったのはもちろんCPUなのだが、それを「より高速」で回すための仕組みも搭載している.「VAIO True Performance」という名前が付いているのだが、こちら、CPUをやや高いクロックで動作させ続けるというものだ.もちろんそれが可能ならば、重めの処理が高速で実行できるので、結構なことなのである.

 具体的な内容としては、インテルのターボ・ブースト・テクノロジーに対応するために電源部の強化を行い、CPUへ供給する電力のリミットを調整し、「よく回る」ようにしている.

オールブラックエディションはVAIOのロゴも光沢ブラック仕上げである.

 当然の結果として、CPUは通常よりも発熱するので、対応策として、放熱用のヒートパイプの熱輸送力を33%向上した.つまり、パイプの断面積を大きくしたということである.

 そして、運ばれた熱を放出するラジエターともいえる「フィン」の熱交換率も10%向上.冷却ファンの回転数も調整して、放熱力を上げているという.

底面には吸気口はなく、液晶側から吸気して左サイドに排気する.手前(写真では上部)にはスピーカーの部分に穴があいている.

 CPU以外についても、メインメモリの転送速度を1866から2133MT/sへとUPして約14%の速度向上を図っている.  代わりにというとなにだが、重量は11/13ともに10グラム増加して、850/1070グラムとなった.さらに、スペック上のバッテリー駆動時間は11型で30~60分短くなり14~15時間に、13型は30分短くなり11~12時間となっている.8Gコアを本気でドライブするための補強とエネルギー消費のためというわけだ.

基本スペックは変わらず
漆黒版もいいんです~

 もうひとつ、今回の新モデルで誕生したのが「オールブラックエディション」で、その名のとおり全体が黒い.従来の黒モデルでは液晶の後縁部と、天板のVAIOロゴはシルバーだったのだが、ともに黒で全体が真っ黒になった.黒好きなオレとしては当然これを選びたくなるのである.

オールブラックエディションでは上フタ背後側のエッジ部分がシルバーではなく黒く塗装されている.

 S11/13の基本構成は変わりなく、なおかつ7Gコア搭載モデルもまだ並行して販売されている.S11の液晶は11.6型、S13は13.3型でともにFHD(1920×1080ドット)の反射防止でノンタッチとオレの好みである.欲をいえば、クラムシェルも狭額縁で16対10そして3対2になってくれるとありがたいんですがね.

 8GコアのCPUはi7-8550Uとi5-8250Uでクロックはそれぞれ1.8~4.0GHzと1.6~3.4GHz.グラフィックチップは内蔵のUHD620である.メインメモリは4~16GBでSSDは128~1024GBである.

 インターフェイスはタイプA×3にSDカードスロット、HDMIにヘッドホンに加え、1000BASE-Tの有線LAN端子、そしてアナログRGBのD-Sub15ピンも相変わらず内蔵している.

本体左側(写真上)には大きな排気口がある.最近のモバイルノートでは液晶側に出るものが多い.

 さすがにアナログRGBはもういいのではないかと思うが、有線LANはいざというときにありがたい.最新ノートPCとしては電源の入出力可能なタイプC端子を1つでいいから付けてほしいところではある.スマホやモバイルバッテリー、他社製PCともらったりあげたりできたほうがなにかと楽しいのである.

液晶を開いていくと上フタ後部がついたてとなって、キーボード部が浮き上がる構造である.アナログRGBの左側にある有線LANの端子は、フタを下にずらしてコネクターを挿入するタイプ.

 さらに、両サイズともにWWANを内蔵可能で、LTEではキャリアアグリゲーションのカテゴリー9により最大450Mbpsの下り通信が可能だ.

本体底面の液晶ヒンジ側にSIMスロットがある.

LTEモデルについてくるWindows 10の新機能「データプラン」に対応したSIM.

追加データはMicrosoftストアから購入できるしくみだ.

 サイズはS11が283.4×195.5、S13は320.4×216.6というフットプリントで、厚みは共に15~17.9ミリである.海外メーカーを始めとして、軽量モバイルノートは狭額縁が流行となっており、「11型サイズで13型液晶搭載」が合い言葉だ.実際にデルのXPS13は、同じ13.3型液晶を搭載しながら、302×199ミリと、S11に近いフットプリントを実現している.

13と11はまさに相似形のようで、キーボードのピッチも異なるがストロークはともに1.2ミリだ.

 キーボードはS11がキーピッチ16.95ミリ、S13が19ミリで、ストロークはともに1.2ミリだ.今回、S11を1週間使ったが、キーピッチで不満は感じなかった.慣れるのである.もちろんどちらもUS配列のキーボードを選ぶことができるのは、オレとしてもとってもうれしいのだ.

 タッチパッドは2つのボタンが別体となっていて、これもオレの好みで◎だ.ただしボタンのクリック音が大きい.会議中にカチカチと響くので、ぜひとも改善してほしいのである.

パームレスト部分はフラットで美しいが、光沢があるので、手のアブラがやや目立つ.

CPUは最速ではないが総合でトップクラス
VAIO TruePerformanceで調節可能

 おなじみのベンチマークテストだが、前述のとおり独自の速度調整機能「VAIO TruePerformance(以下VTP)」が入っている.速度は「VAIOの設定」というアプリで指定する.

「VAIOの設定」というアプリでVTPの設定を3段階に変更できる.

 もちろん電源接続時とバッテリー駆動時で別々に3段階の指定ができる.「パフォーマンス優先」が最高速で、次が「標準」、そして「静かさ優先」がスロー設定である.

 もちろん最新のWijndwos10なので、「VTP」とは別に、バッテリーアイコンのクリックによりパフォーマンスの指定もできる(電源時3段階、バッテリー時4段階).今回の計測では、電源接続状態でWindows側の設定は「最も高いパフォーマンス」にして、「VTP」を3段階に変化させて実施してみた.

こちらは多くのマシンで「Windows 10 Fall Creators Update」とともに採用された速度設定バーでございます(採用していないメーカーもあります).

 前置きが長くなったが、ベンチマークテストの結果、CPUを回して速度を計るCINEBENCHでは、CPU値は設定によって上から605/546/523と変化した.

 最高値の605はi7-8550Uを搭載したモバイルノートとしては平均的な値だ.ASUSやデルのマシンでは650~680といった値も出ているので、ドピークの回転数はやや抑えぎみということである.最高値を1とすると真ん中の「標準」は0.9、「静かさ優先」は0.86の速度となっている.

 同じくCINEBENCHのOpenGLの値は54/48/46で、こちらの最高値54は他社モデル中でも最高に近い「速さ」を示した.3つのモードは比率でいうと1/0.9/0/87と、CPUの値の比率とまったく同じである.

 3DMarkのFireStrikeの値は1181/1097/952で、最高速の1181はやはり最高クラスの値である.グラフィックスがからむと全力投球したくなるタイプの投手ということができる.

 ベンチマークテストはこれ以外のものも検証のために繰り返して行う.他社モデルでは、過熱によってだんだん速度が出なくなるモバイルPCもあるのだが、今回のS11は何度実施しても安定していた.8Gコアのために熱設計をしなおした成果である.

 ただし、ファンが高回転になると、ボワ~~~ムと排出音が響くので、静かな場所でゲームをする時は気をつけたい.

 搭載していたSSDはSAMSUNGのSM961シリーズ「MZVKW512HMJP」で、PCIe接続のシーケンシャルリードが最大3200MB/sのモデル.CrystalDisdmarkによる計測値も、マルチのシーケンシャルで3500近い値で、モバイルノートとしては最高クラスである.

 バッテリーの持ちは、いつものとおりBBENCHをつかって、最高パフォーマンス、節電なし、液晶最高輝度で行ったところ、3つのモードで2時間12分/2時間26分/2時間59分だった.持続時間を比率に直すと1/1.11/1.36となる.

 S11のバッテリー容量は35Whで、13型モバイルノートの50~60Whに比べると小さいのだが、このMAXな条件で2~3時間もつのなら不便はない.ちなみにS13のバッテリー容量もS11と同じ35Whなので、液晶が大きいぶんこの8割の持ちと考えると、ちょっとココロもとない.

 充電時間も放電と同じ条件で計測した.ACアダプターはおなじみの45W出力でUSB端子を搭載しており、PCには10.5V3.8Aで40Wが供給されるものだ.

おなじみの充電用USB端子付きACアダプター.ここにオプションのルーターがささって一体化します.

 充電はVTPの3つのモードで50%までが43/42/39分、70%までが69/68/62分、90%までが125/115/88分だった.7割りあたりまではどのモードでも急速充電されるが、そのあとはいたわり充電するしくみのようである.バッテリー容量が少なめではあるが、利用しながら1時間で70%近く充電できるのでこれも不便はないだろう.

 このバッテリー充電テスト中、空冷ファンが回ることがあった.WEBブラウザーを動作させているだけなので他社PCではあまり体験しないことだ.充電時の電源部/バッテリーの発熱によるものかもしれない.

オレとしてはカバンに縦にはいる
11型がいいのだっ

 VAIOによると、S11/13ともにほぼ同じパフォーマンスが出る設計になっているそうなので、このベンチマークの結果はS13にも当てはまるはずである.全体として、CPUだけの最高速度はそれほどでもなかったが、GPUを加えた速度では8Gコア中でも最高クラスで、なおかつ、その速度を継続して出す冷却能力を持っていることがわかった.「VAIO TruePerformance」の威力である.

 ではS11と13のどちらを選ぶかという問題になる.横幅は37ミリ、奥行きは21ミリ違い、重量は220グラムも違う.2機種を並べると、コネクターの配置も同じなので、同じ内部設計で、バッテリー容量も同じで、ボディと液晶サイズだけが異なるという作りのようだ.

S11とS13を重ねると、端子の間隔が同じなのがよくわかる.

 13型ノンタッチで900グラムを超えると、日本では「軽量モバイルノート」とはいえなくなってきた.オレとしてはカバンに縦向きに入るS11がオススメなのである.小さくて軽いということは、よりPCを持ち歩きたくなるから、とっても重要なことなのだ.

 フラッグシップの「VAIO Z」は2016年2月のまま継続販売中である.実質的にVAIOで最新モバイルを買うということはS11/13を選ぶことになる.「世界最軽量」と「世界最高速」をあわせもったフラッグシップの新「VAIO Z」を望みたい.8GコアのGシリーズとか載せてみませんか??

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