2018年01月24日06時00分

日本企業が本当に事業を創出するためにすべきこと

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合田:では続いて村上さんに質問です。世界的な潮流としてイノベーションが必要になってきた。世界では今、何をやっているのでしょうか。

村上:そういう意味だと、社内教育や行動基準は全部変えていまして、とにかく実行という形ですね。一番大きく、ドラスティックに変わったのは、ハーバードビジネススクールでして、今の教育方針は、ノーイング・ドゥーイングギャップですよ。

 教育も社内の評価も、どれだけドゥーイングしたか、ということにシフトしているのは事実です。

合田:麻生さん、ドゥーイング、実行させるというところで、何か工夫していることってありますか。

麻生:まず、仕組み全体で言うと、新規事業って大体失敗します。1000件くらいやってると、997回ぐらいは失敗するのですね。確率論的に言うとほぼ失敗。その中からたまたま0.2、3%の確率で出るかもね、みたいなものなのです。ということは、ドゥーイングのときに重要なのはその失敗を許容できるというか、そういう仕組みにできるのかということです。

 あと、実際にやっている人にとっては、1000分のいくつじゃなくて、1分の1ですよ。失敗したときにレッテルを貼られちゃうような仕組みだと、だれも挑戦しなくなっちゃうので、そこの人事的な評価の思想とか、そういうところを若干いじって、修正する必要がある。全体としては、失敗するということを前提に置けるかどうかがすごく重要かなと思います。

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合田:日本の課題の本質的な原因は、何なのでしょうか。

村上:今の失敗を許容しないということ。なぜ失敗を許容しないのが問題なのかというと、偶然性を呼び込めないからです。偶然性を呼び込む人の行動、起業してうまくいった人のキャリアを調べると、話が長い。それは、頭が悪いから要約できないのではなくて、あのとき、あの人に出会ってとか、この人を紹介してくれて、どうのこうの。ずっと人つなぎなのです。

 今の日本のまずいのは、毎朝カレーライスを食べているとイチロー並の大リーガーのヒットメーカーになれるみたいな、全然因果のない毎日の行動が成功パターンだという物語を作っちゃっていることですね。

大橋:普通の会社ってどんどん失敗しなさいとか、口では言うものの、ほんとに失敗させられるかというと、違うのかなという気がします。会社に仕組み的に認めさせるのも、けっこう難しい。なので私の部は本当にやりたいと思ったことは、上に黙ってやるというふうにしています。

 絶対、このデザインで世に出したいと思ったときは、記者発表で記者がいっぱい来ている中で出す。そういう状況に追い込んでもやっていくというふうにしないと、やっぱりものごとは前に進まない。

合田:そこまで難しいのだったら、別にアントレプレナーになっちゃえばいいじゃないかという議論もあります。

村上:アントレプレナーになればいいじゃないか、ということには賛同しかねるところがあります。というのも日本の中で動かせるリソースを抱えているのは、ほとんど大企業です。そこのリソースを使ったほうが、でかいことが早くできる。問題はなぜ動けないかというところ。失敗を許容するという以前に、信頼感が欠けてるように思います。ぼくは新入社員のときに、2000万円くらい穴開けたんですけど、課長が「この書類は常務会まで行っているから、これに判子を押した常務が悪い。おまえは関係ない」って言ってくれました。そういうことがなくなっている。

合田:ではどうしたらいいのか、解決策や取り組みを教えて下さい。

麻生:大橋部長が言っていた「やっちゃえばいい」ということに尽きると思っています。リクルートの仕組みも、インキュベーション活動の前半戦の大半って、全部業務外なんです。その業務外の活動をどうやって担保するかみたいなことが、重要だと思っています。業務外でやりたいことをもっとやったらいいと思いますね。

大橋:やり方の前に、そもそもなんで仕事をしているのか、みたいなところを考えたほうがいいかなと思っています。新規事業はあなたがリーダーでやっていいですよということになると、自由自在に動かして事業ができる。それぐらい自由にできる権力が、実は与えられていますよということです。

鈴木:私はとにかく社内に異端児を増やしたい。われわれが今、大手企業の支援をしている中で、やっぱりカウンターパートになる人って異端児ですね。社内評価よりも市場を見ている。われわれの活動というのは、その人をどうやって活躍させられるかということにかかっている。そんな環境をつくりたいと思っていますね。

村上:大事なのは価値観をどう作っていくか。そもそも、なんのためにここにいるのかがメインのクエスチョンです。それぐらい共通した価値観って、人を動かす原動力になる。新規事業を「やらせてもらえる」ものなのか、自分で「やっていく」ものなのか。組織のつくり方が、今の課題じゃないかと思います。

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合田:では最後に、ひと言ずつお願いいたします。

麻生:ぼくやリクルートが持っているknowledgeとか体験が、プラスになるようなら、お気軽にお声掛けいただければなんでもシェアさせていただければと思っています。これまでリクルートが今まで交わったことのない方と、接点ができたら、イノベーションが生まれる速度が増すのじゃないかと考えています。ぜひ一緒に何かやりましょう。

村上:本質を考えていくということがすごく大事かなと思っています。今、この能力が落ちていて、大学で愛について語ろうとか言ったら、ちゃんと技術経営の授業やれよ、みたいな学生が増えている。これが最大のネックになっているかと思うので、ぜひ、ちゃんとそこを考えてほしいなというのがひとつです。

 2番目は実は人は定住している歴史が短く、定住できないということ。つまり、うろうろと動き回りたいのが本質なのです。そういう形の感情とか、心理的な側面というものをきっちり突いてやれれば、ブレイクスルーは来ると思います。

大橋:私は実は、新規事業部門に配属されたときに、何をすればいいかまったくわからなくて、創業者の歴史とかを紐解きました。創業者は日本で初めてキャラメルを作った人なのですけれども、まだ日本人が和菓子しか食べてないときに、洋菓子という新しい文化を持ってきた人だったといえる。じゃあわれわれは、次、何を提供すべきなのでしょうか。新しい、どういう体験を提供すべきなのでしょうか、みたいなことで新規事業を考えるべきだなというふうに思いました。

 そういうふうにものを考えていくと、たとえば取締役会で、なんでそれをやるのかと言われたときに「何を言ってるんですか。われわれの創業者は、日本に新しい文化を持ち込んだ人ですよ」と言えば、そういう反論は一蹴できるのではないかと思っています。

鈴木:日本の企業はみんな遅れていて、動きが鈍いよね、とよく言われます。でも、シリコンバレーとか海外とか行くと、日本企業って素晴らしいといつも思うのです。そう思わないと始まらない。日本企業全体はこれからもっともっとよくなります。みんな、元気よく頑張っていきましょう。

合田:ありがとうございました。それではあらためて、登壇者の皆さまに、大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。

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