週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

池澤あやかの自由研究:中国・深センのハードウェア企業「Seeed」にプチインターンした

2017年11月12日 10時00分更新

文● 池澤あやか 取材● 中山智 編集● 三宅/ASCII

「世界の工場」と呼ばれてきた中国・深セン。ここには、電子部品の問屋や製品づくりに必要な各種工場(プリント基板、金型、パッケージ、組み立て)が密集しており、長らく世界中のハードウェアメーカーの大量生産を支えてきました。

近年は製造を請け負うだけではなく、独自製品を製造するベンチャー企業のほか、プロトタイプ制作を支えるメイカースペースやアクセラレータも増えており、「第二のシリコンバレー」と呼ばれるイノベーションの中心地へと成長しています。

この新たな潮流の中心にいる企業のひとつが「Seeed」です。

Seeedは、深セン市に2008年に設立された「メイカーのためのハードウェアイノベーションプラットフォーム」を掲げる企業です。主に、プリント基板の製造サービスやキットの自社製造、さらにはメイカーが作り出した製品のプロデュースやプロモーションを行なっています。

Seeedのなにが新しい潮流なのかと言うと、ハードウェアメーカーに対してだけではなく、スタートアップやメイカー、さらには技術力はないがアイデアだけはあるドリーマーに対してもサービス提供を行なっているという点です。

具体的な活動を一部取り上げると……

・オープンソースハードウェアの製造
・プリント基板のWeb発注は1個から8000個まで可能(それ以上は問い合わせ)
・小ロットプロダクトのOEM・ODM
・生産した製品はSeeedが持つ販売網を通して販売可能
・深センではじめてのメイカースペース「柴火創客空間(Chaihuo Maker Space)」の設立
・ものづくりの祭典「Maker Faire Shenzhen」の初期主催、現在もメインスポンサー

といった具合です。

現在は、アメリカに支社があるほか、今年8月には日本法人も設立! 名古屋にオフィスを構え、グローバルに展開しています。

Seeedが主催したMaker Faire Shenzhenの様子。

Seeedでオリジナル基板を発注してみる

まずはお客さんとして、Seeedのサービスを体験してみることに。プリント基板を簡単に発注できるWebサービス「Fusion PCB」から、オリジナルのサイン入りユニバーサル基板を注文してみたいと思います。

まずはデータの作成です。私は「Eagle」というCADソフトを使用してデータを作成しました。

データを作成したあとは、Eagleに"Seeed用のCAMプロセッサー"を読み込み、発注用のガーバーファイルと呼ばれるデータを出力します。

データはボードデータを保存しているディレクトリに出力されるので、出力されたデータをzip圧縮します。あとは圧縮したデータをWebサービス上にアップロードし、フォームに必要項目を入力すると、あっという間に見積もりが出ます。今回は、およそ10枚注文して4.9ドル(約550円、輸送料別)。

私はこのページから注文したのですが、今年5月から"日本語ページ"も立ち上がりました。こちらからも注文可能です。また「Gerber Veiwer」というツールを使えば、Web上で仕上がりイメージを確認することも可能です。

もろもろ確認したら、決済を行なって発注! 1週間から2週間ほどでオリジナル基板が手元に届きます。

Seeedでのプチインターンに挑戦!

そんなメイカーたちを支えるSeeedに3日間、プチインターンと称して潜入取材を行なってきました!

1日目にお邪魔したのは、本社近くにある「AMC(Agile Manufacturing Center)」。プリント基板に部品を実装するための工場です。

実はSeeedでは、プリント基板をつくるだけではなく、部品実装も行なう「Fusion PCB Assembly」というサービスも提供しています。2個から100個までの部品実装済み基板の製造を行なえます。部品は「Open Parts Library」で定められている部品を使うか、Mouser ElectronicsやDigi-Keyから調達することも可能です。そして、このサービスで注文されたものは、こちらの工場で実装しています。

多くの部品実装は自動化されているため、たくさんの機械が並んでいます。

こちらは部品に対するはんだ付けを行なう機械。はんだのプールに浸すのではなく、必要なポイントだけにはんだをすることができます。

ほとんどの製品は機械を使って部品が自動で実装されますが、テスト作業などは手で行なっているようです。

自社製品であるオープンソースなスマートスピーカー「ReSpeaker」のテストをしているところ。

また、20個以下の製品に関しては、「Cell0」と呼ばれるプロトタイピング用のスペースで人の手によって実装していきます。こちらの作業を少し体験させていただきました!

ステンシルと呼ばれる型を使って、はんだペーストを基板に塗ります。

はんだペーストを塗ったところに、ピンセットを使って部品を載せていきます。

その後、この大きな機械ではんだペーストを融かして、はんだづけします。

はんだペーストでは処理できない足の長いパーツは、手ではんだづけします。

いろいろ教えてくださったSeeedの道超さん。

また、びっくりしたのはお昼寝の時間がしっかり確保されていること。昼食後約1時間は社内全体の照明も落とされ、工場全体がストップします。これはSeeedに限ったことではなく、ほかの企業でも見られることなのだそう。中国人にとって、お昼寝は欠かせない習慣なのだとか。

というわけで、私もお昼寝を……!

2日目と3日目にお邪魔したのはSeeedが運営するオープンな工場「x.factory」。こちらは工場レベルの機材とコワーキングスペース、コンサルティングサポートなどを提供するメイカーのための施設になっています。

会員費はひとり600元(約1万円弱)ほど。世界中からチームないしは個人が集まり、ものづくりを行なっています。現在は約60人の会員がおり、日本人も5人ほどいるのだとか。ちなみに、現在も"公式Webサイト"から会員募集をしているみたいです。

受付でパシャリ。

x.factoryの会員は、プロが使うような機材を使うことができます。

x.factoryの室内には、ところどころデジタルインスタレーションが飾ってあります。

このインスタレーションは人の表情を認識して、その表情に近い顔文字が光るらしい。

私はこのプチインターンで、Seeedから発売されているハックできるスマートスピーカー「ReSpeaker」を用いたインスタレーション製作のお手伝いをしました。

最終的には、ReSpeakerにSeeedのショップで扱っているプロダクトの名前を言うと、壁にとりつけられているたくさんの容器の中から、該当する部品の入っているものだけが光るというインスタレーションにしたいのだそう。

インスタレーションの外装も製作途中のようですが、最終的にはここにとりつけられるのだそう。

いろいろなSeeed製品をご提供いただきつつ、オープンスペースで作業していました。

3日間、あっという間のSeeedでのプチインターンでした。

現在もグローバルに拡大を続けているSeeedですが、若者が多く、すごく活気がある会社でした! 大手メーカーだけでなく、スタートアップやメイカーもプロダクトをつくる今の時代、彼らを支えるSeeedに勢いがあるのも当然なのかもしれません。日本法人も設立されたということで、日本での活動にも期待しています!

以上、池澤でした!

■Amazon.co.jpで購入
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事