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病院の待ち時間から考える電子カルテの必要性

2017年01月16日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第2回テーマ:電子カルテ x 患者のメリット

 今回は、一般の患者側にとって電子カルテがどのような働きをもたらすかということについて考えてみたい。

 紙カルテを使用している、一般的な医療機関にありがちな患者からの不満点の1つに、「待ち時間がとても長い」ことがじつは挙げられる。1冊の紙カルテを、受け付け・診察室・会計へと都度搬送しなければならず、作業の流れが煩雑になってしまうということが原因だといえる。

 体調の悪い患者を長く待たせてしまうことで、風邪などの感染症がひろがってしまうリスクも無視できない。

 また、患者からの視点では、自らのカルテを見ようにも、紙カルテの確認をそもそもしたことがある人がまれだ。中身を読んでもわからないし、確認のしようもない。

 電子カルテを導入済みの医療機関では、第1回でも解説したとおり、事務作業の迅速化によって待ち時間短縮を実現できるほか、2次感染を防ぐことにも寄与する。

 クラウド型の電子カルテであれば、患者はネットでいつでもカルテを見ることができる。わざわざ医療機関に行かなくても、自宅で自分の診療状況を確認できるのだ。

 そのほか、検査値の増減などをわかりやすくグラフで見ることができたり、カルテの内容が専門的なドイツ語/英語表記やくせのある手書きではなく、多くが日本語で書かれていて理解しやすいという利点もある。

 医療者が患者に診療の目的や内容を十分に説明し、同意を得た上で治療にあたることをインフォームドコンセントというが、電子カルテはそれをより質の高い形で実現させる手法の1つだ。

 以上が基本的な部分だが、ここからはクラウド電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


医療者と患者の距離を縮めるクラウド時代の電子カルテ

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 近年、多くの診療所で電子カルテが使用されていますが、患者さんからは『お医者さんがパソコンばかり見ていて、こっちを見てくれない』『入力することに夢中で、体に指1本触れずに診察が終わってしまった』なんて声もよく聞かれます。電子カルテの導入は、肝心の患者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

 従来の設置型電子カルテでも得られるメリットとしては、「カルテを探す時間が省けるため診察待ち時間が短縮される」「医師がカルテに記載した内容が直接レセコン(医療費を計算するためのコンピュータ)に送られるので会計待ちの時間が短縮される」「スタッフ間の情報共有がスムーズになるため、患者が同じことを何度も伝えずに済む」などが挙げられます。

 上記のようなメリットに加えて、クラウド時代の電子カルテは、インターネットに繋がることを活かしたメリットを患者さんに提供できるようになります。具体的には、パソコンやスマートフォンなどから「予約が取れる」「問診票を記載できる」「処方された薬剤を確認できる」「自分の検査結果を確認できる」「自分のカルテを閲覧できる」などが考えられます。

 クラウド時代の電子カルテは「診療記録をデジタル化するためのソフトウェア」の域を超え、「医療者と患者の距離を縮めることができるインフラストラクチャー」としての役割を果たすようになると考えられています。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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