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スポーツシーンを盛り上げるアプリ「Clipstro」&「Spoch」

画像認識技術がスポーツを変える!アマチュアチームのレベルを上げるSPLYZA

2017年06月02日 07時00分更新

 『アマチュアスポーツマンの「もっと上手くなりたい」を叶える』というポリシーを掲げて、サービスを開発・提供しているのが株式会社SPLYZA(スプライザ)。静岡県浜松市に拠点を構えるベンチャーで、今年で6期目。代表取締役の土井寛之氏によれば、その社名の由来は、スポーツとアナライズを組み合わせた造語だという。

 高度な技術力を背景に独特なアプリを開発し、2020年に向けて盛り上がりを見せるスポーツ分野での飛躍を狙うスタートアップに、その展望を訊いてみた。

株式会社SPLYZAの土井寛之代表取締役

AppStore1位獲得のスポーツ関連アプリ「Clipstro」とは

Clipstro

 「Clipstro」は、スポーツなどの動きの残像を自動で合成してくれるアプリ。スノーボードやトランポリン、スケート、スケボーなどの一瞬を切り取り、パノラマ合成して連続写真として見せてくれるのだ。フォームなどをチェックでき、改善に活かせる。

ゴルフのスイングに特化した「Clipstro Golf」もリリースされている

 「Clipstro」のすごいところは、手持ち撮影でいいということ。三脚不要なので、同行者がいれば気軽に撮れる。スノーボードやスキーのフリースタイル系、クロスカントリーのジャンプ、ゴルフならスイングや弾道も確認でき、レッスンにも活用されているという。土井氏の想定外の使い方としては、野球のピッチャーを後ろから撮ってフォームをチェックするものもあった。

 「2014年のリリース当時は、スマホで動作する類似の製品がほとんどなく、日中英のAppStoreで1位(最終的には「Clipstro」は5ヵ国、「Clipstro Golf」は17ヵ国で1位を獲得)を獲得した。動画アプリなので口コミが広がりやすく、TwitterやInstagramに投稿されたりとか、AppStoreでフィーチャーいただいたりして。おかげで、アスキーやYahooニュースに載って、たまにテレビで紹介されたりと続いた」(土井氏)

スイング軌道

 「Clipstro」で話題になったSPLYZAだが、実は2013年末にウェブサービスを1回出している。ユーザー同士がお互いのプレーを撮影しあい、動画を共有し合うコミュニケーションサービスだった。

 「そちらは全然うまくいかなかった。そもそも僕らは、製造業のCAD/CATのソフトウェアエンジニア出身の企業。プロダクトは作れるが、コンシューマー系のスポーツとは分野が違いすぎて、さらにマーケティングや営業のバックグラウンドもなかった」(土井氏)

 SPLYZAは、製造業に強い静岡県浜松市に居を置くスタートアップだ。エンジニアであった土井氏だがウィンドサーフィンの趣味を持っており、20代は平日でもウェイトトレーニングをばりばりしていたそう。

 とはいえ、スポーツ業界に知り合いがいるわけでもなく、最初のサービスを作っても認知が広がらず、次に開発したのが「Clipstro」だった。浜松では、スポーツのネットワークが構築できないと判断した土井氏は外に目を向ける。「セミナー参加ひとつでも費用がかかるが、それをしないと何も始まらないということでやってみようとなり、そこから2年かけてスポーツ関係者のネットワークを構築した。そこでようやく、現場のニーズが見えてきた」(土井氏)

 「Clipstro」と「Clipstro Golf」はそれぞれ基本的に売り切りのアプリで、価格は480円だが、現在は合計で8万人を超えるユーザーがいるという。

失礼ながら、取材時にお会いした土井氏はまったくエンジニア出身に見えなかった。スタイルがよく日に焼けていて、営業のバックグラウンドがないとはとても感じられない

スポーツ関係者の意見を取り入れて生まれた動画分析サービス「Spoch」

Spoch

 「Clipstro」を広めていく中で、スポーツ関係者と多く話すようになった土井氏。個人よりもチームでやっている人と出会うことが多く、その中で最初に失敗したコミュニケーションサービスのことに触れた。すると、いくつものチームが「これチーム向けにしてくれれば使いたい」と言ってくれたという。

 たとえば、既存のウェブサービスを使っている小学生のスポーツチームでは、LINEだとすぐに投稿内容が消えてしまう問題があった。またYouTubeを使うと全世界に公開されるのでセキュリティー的に問題がある。しかし、非公開にすると、検索できず活用できない。

 そこでSPLYZAでは、Google+のような既存のSNSでの個人間の仕組みから、チームを作って管理者が招待するという構造に変えた「Spoch」というサービスを2016年10月にリリースした。現在、会社としてはこちらのサービスにかかりっきりだという。

 「Spoch」は、いわゆるチーム向けのクローズドSNSで、動画の共有や分析、管理ができる。SPLYZAならではの強みは分析・管理にあり、動画内の時間にタグ付けできる機能を備えている。イメージとしては、映像内にチャプターを自由に作って、そこにメタタグを埋められるような感じだ。何分何秒で一時停止し、誰がシュートしたとかを登録しておくと、後からそのシーンだけ共有できる。動画はスマホで撮影してもいいし、ほかのカメラで撮影したファイルをアップロードしてもいい。

 「これまではサッカーの試合なら何十分っていう映像から、セットプレーとか失点シーンといった問題点を集めて動画編集するのにすごい手間を掛けていた。ミーティングのために5分くらいの動画にまとめるのもとても大変。しかも、ミーティングで再生しても、選手はノートを取ってなければ、右から左へとおざなりな扱いとなる」(土井氏)

 そこで、時間に選手をタグ付けすれば、特定ユーザーのアカウントとも自動的に紐付く。選手側からは、自分やチームに関連したプレー動画が一覧で見られる。試合直前ではモチベーションを上げるためにいいプレイを見せてもいいし、試合直後のミーティングですぐに失点などの悪いところを振り返ってもいい。シーンごとに、Good/Badタグを付けておけば検索も簡単だ。

 Spochは2017年3月からサッカーのアマチュアチーム全国リーグに採用され、大日本印刷と協業することになった。大日本印刷はもともと、リーグから全試合の選手データ管理と公式記録の集計、および試合映像の管理を受託している。昨日の試合は○対○、何分何秒に誰が何をしたというのをすべて記録し、映像と合わせて参加チームに共有している。しかし、従来はこの記録データと映像データはリンクしておらず、映像閲覧時の利便性が悪かった。

 「僕らと連携すればデータ付きの映像を直接配信できます、と持ちかけた。3月から、前日の試合がデータ付きで配信されるようになっている」(土井氏)

サッカーの試合での利用例

 映像とその中のデータが管理されている大会やリーグであれば、「Spoch」でのタグ付けがそもそも不要だ。とても簡単に、映像の分析機能を利用できるようになるのだ。

 「Clipstro」はコンシューマー向けだったが、「Spoch」はBtoBでの展開を見込む。こちらは月額課金制で、1チーム当たり月額3000円/6000円/1万2000円といった形でSaaS型のサービスになる。

 「Clipstroのような買いきりのアプリよりも、ビジネスでの可能性がある。選手の映像が紐付くので、ゆくゆくはスカウトに動画を簡単に見せるようなリクルーティングにもつなげていきたい。もしくは、スポーツ選手だけではなく、その周りの親やOB、サポーターのような方達もサービス対象となる広がりもある」

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