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ユーザーとセミプロをマッチング 増加する特化型クラウドソーシング

2017年06月01日 07時00分更新

 皆さんこんにちは、トーマツベンチャーサポートの納富隼平(のうとみじゅんぺい)です。BtoCのベンチャーのいまを紹介する本連載第5回は“特化型クラウドソーシング”について。特化型クラウドソーシング×BtoCのサービスを紹介したいと思います。
 なお、本記事における意見は筆者の私見であり、筆者が所属するトーマツベンチャーサポート株式会社およびその関係会社の公式見解ではないことをお断りさせて頂きます。

 アスキースタートアップをご覧になられている方々なら、“シェアリングエコノミー”という言葉は馴染みがあるかと思います。今回はその中でも“クラウドソーシング”に注目します。

 さて、まずは本稿におけるクラウドソーシングの位置づけを確認します。ここではクラウドソーシングを「モノやサービス購入にあたり、インターネット上の不特定多数の人から取引を募集すること」とします。ちなみに、私はシェアリングエコノミーを以下のように整理することが多いです。下図にベンチャー企業をプロットしてディスカッションしています。

特定分野のクラウドソーシング

 さて、何か特定の分野に特化したクラウドソーシングを特化型クラウドソーシングと呼んでいます。特化型クラウドソーシングでは、プロやセミプロの方の活躍の場が増えます。どういうことか、カメラマンのクラウドソーシングを例にとって解説します。

 従来、雑誌などのプロカメラマンとして活躍できるのは、プロの中でもほんのひと握りの方だけでした。逆に言えば、写真を撮影したいのに仕事がないプロの方が多数存在するわけです。また、写真が趣味という方の中には(少なくともユーザーからみれば)プロと見紛うようなスキルを持っている方もおり、できることなら写真を副業としてみたい、という方もいるようです(便宜的にこのような方々をすべてセミプロと呼びます)。

 一般ユーザーからすればこのようなセミプロのカメラマンの方の写真でも十分に綺麗なものです。しかも今はInstagramに代表されるように、写真が必須なSNSの全盛期。綺麗な写真を撮って欲しいというニーズも十分にあるのです。そこで登場するのがカメラマンのクラウドソーシングです。

 あるベンチャー企業には、厳選された全国のカメラマンがクラウドワーカーとしてこのベンチャー企業のサービスに登録しています。たとえばユーザーが沖縄に旅行に行ったときには、沖縄のカメラマンが旅行中の写真を撮影してくれる、というわけです。

 はたして綺麗な写真を撮ってほしいユーザーと、セミプロのカメラマンがマッチングされます。このように、クラウドソーシングを使ってユーザーとセミプロをマッチングするようなサービスが増えています。以下ではこのような会社を紹介していきます。

スキルはあるけど仕事が見つからない縫製職人を探し出す

 縫製と聞くとBtoCからは縁遠く感じるかもしれませんが、たとえばコスプレ衣装を思い浮かべてみてください。矢野経済研究所の調査“「オタク」市場に関する調査を実施(2016年)”によると、オタク文化の広がりやハロウィンの定着などで、コスプレ市場が盛り上がっているようです。しかし、コスプレ衣装も凝ったものをつくろうとすると、相当のコストや時間がかかってしまいます。

 他方、勤めていた工場が閉鎖したり、旦那さんの転勤の都合で退職せざるを得えなかった職人さんが、日本にはたくさんいるのです。このようにスキルがあるのに働く場所がなかなかみつからない職人の方々は、仕事を探していないわけではなく、探しているけどなかなかみつからないというのが現状だそうです。

 そこで登場するのが、縫製職人のクラウドソーシング。コスプレのような一点物の洋服を作りたい方と、縫製職人をマッチングするサービスです。職人さんからすればコスプレ服のような一見難しいものもお手の物。基本的には縫うものならどんなものでも作ってもらえるそうです。近年はファストファッションや既製品が流行する反動でか、自分だけのオリジナルの洋服を望むような声も高くなっているそうで、そんなときにもこのサービスは役立ちそうです。

時間のあるシェフが自宅で豪華な料理を

 続いて紹介するのはシェフのクラウドソーシング。飲食店の中には夜だけ営業していて、昼間は営業しておらず時間のあるシェフの方がいます。他方で、家でホームパーティーをしたい、小さな子供がいたり高齢な方がおり外出はしづらいけど記念日のお祝いはしたい、など自宅でシェフの料理を食べたいというニーズは確かにあります。そこでクラウドソーシングの仕組みを使って、シェフとユーザーをマッチングするわけです。

 マッチングをすると、指定の日に自宅にシェフの方が来てくれてお店のような料理をつくってくれます。しかも食材は買ってきてくれるし、片付けまでしてくれるので楽ちんなところもユーザから好評のようです。

プロゴルファーが自分のフォームをスマホで指導してくれる

 プロスポーツ選手の中には、プロといえど本業だけでは十分な収入が得られない方も少なくありません。プロゴルファーの中にはゴルフスクールで教えている方もたくさんいますが、このようなスクールは都市にあって、地方や離島の方などはスクールに通うのにも限界があります。

 そこでクラウドソーシングの仕組みを使ってプロスポーツ選手とユーザーをマッチングします。プロからの指導はスマホを使ってできるようにしているので、遠方の方でもプロの指導を受けることができます。教えるスキルのあるプロスポーツ選手と、オフラインでは教わりたくても教わることができないニーズを満たしているわけですね。

 以上、カメラマン、職人、シェフ、プロスポーツ選手を例に挙げて特化型クラウドソーシングを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。この他にもイラストレーター、クリエイター、保育士、ハウスキーパーなど、様々な特化型クラウドソーシングがユーザの困り事を解決しています。皆さんも、何かお困りごとがあれば是非このようなサービスを探してみて下さい。

納富隼平(トーマツベンチャーサポート)

著者近影 納富隼平

2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人で大手電機メーカーを中心に会計監査に携わった後、2014年にトーマツ ベンチャーサポート株式会社に参画し、ベンチャー支援に携わる。毎週開催早朝ピッチイベント"Morning Pitch"、BtoCベンチャープレゼンイベント"sprout"、ベンチャーとベンチャーで働きたい人のマッチングプラットフォーム"faces"を責任者として運営。得意分野はファッションを含む衣食住等のライフスタイル関連のBtoCサービス。

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