2017年05月06日15時00分

ハイレゾプレーヤー「CurioSound」でCDスペック音源が復活する話

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90年代後半のJ-RockときんモザのEDテーマの原曲を聴いてみる

 では実際の音を聴いていきたい。リファレンス環境は常用しているVAIO Z(Core i5/16GBメモリー)で、DACにはAK380、イヤフォンはラディウスの「ドブルベ ヌメロ4」に純正のバランスケーブルをあわせた。用意した音源は下記のラインアップで、フォーマットはいずれも44.1kHz/16bit。ハイレゾ音源はレビューの対象外としている。CD音源を聴き直すという趣旨をご理解いただければ幸いだ。

     
  • GLAY「HOWEVER」
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  • 中塚武/土岐麻子「Your Voice」
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  • クリストファー・ティン「Sogno di Volare」
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  • クリストファー・ティン「Baba Yetu」
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  • スティーヴン・ミード/ブリーズブラスバンド「ジョン・ゴーランド ユーフォニアム協奏曲第1番」
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  • ニコライ・ペトロフ「フランツ・リスト パガニーニの主題による超絶技巧練習曲」
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  • 水樹奈々「Eternal Blaze」

 北海道出身の4人組ロックバンドGLAYは1990年代の音楽シーンを代表するグループで、彼らが1997年に初めてミリオンセラーを達成したのが代表曲でもある「HOWEVER」だ。メンバーのTAKUROが当時の恋人に宛てたと言われているバラードは、今聴いても胸に来る歌詞の力を持っている。

 だがCDをかけてみると、きっと現代の高音質に慣れた耳ではガッカリするだろう。44.1kHz/16bitで再生したところ、ギターがなんだかジャカジャカしていて悲しくなってしまった。当時はまだMD全盛期。J-PopはMDに入れてウォークマンで連れ出し、付属のイヤフォンで聴くのが当たり前のスタイルだったため、低音と高音が強調された、いわゆるドンシャリサウンドが基本だった。そんな環境で聴感上の迫力を出すため、コンプレッサーをガンガンかけて音圧を上げまくっていた、それがこの時代のJ-Popという文化だ。現代のハイレゾ機器で再生するとどうしても粗が目立ってしまう。

 それではおもむろに「ハイレゾサウンドで聴く」スイッチを入れて、96kHz/24bitサウンドで再生してみる。もう驚きだ、なにせ第一声の「や」の音からまったくもってヴォーカルの出音が明らかに違い、声に存在感がある。ジャカジャカ鳴っていたギターにも芯が通り、スネアのリムショットは「カツーン」とよく通る。アゲアゲでブーミーだったベースがうるさくなくなり、ストリングスもキレイに整った響きになった。とにかく音に不自然な感じや耳障りなところがなくなり、飽和感がなくなって音楽全体にメリハリが出たのである。曲の流れとパワー感で押していたような単純な音から、様々な表現による豊かな色彩が楽曲を彩った。同時に当時の思い出さえも鮮明に呼び起こす、そんな音楽の力を感じた。

Image from Amazon.co.jp
GLAYの名曲「HOWEVER」を収録したアルバム「GLAY;WHITE ROAD」。名曲は今聴いてもやはり名曲で、同じアルバムに収録されている「Winter, again」も捨てがたい。GLAYというバンドはメロディーメーカーだったと感じる

 次にチョイスしたのは中塚武プロデュース・土岐麻子ヴォーカルの「Your Voice」。アニメ「きんいろモザイク」1期エンディングテーマの原曲で、いわゆる“きらら系”らしい女の子的な可愛らしさのRodanthe*版と比べると、こちらは土岐麻子の大人の女性の落ち着きが漂っている。

 実際のところ僕の好みは、音楽としては土岐麻子版、録音としてはRodanthe*版だ。というのも土岐麻子版は音が少し硬く、リズムセッションや低音などが切れ切れになって痛く感じる。今回の試聴でも44.1kHz/16bitでは同じ感想を抱いた。特にハイハットやトロンボーンなどのブラスセッションがブツブツ切れるのがどうにも耳について仕方がない。それでいて土岐麻子の歌い方が伸びやかなものだから、音楽としてみるとどうにもチグハグなのだ。要するに伸びが足りないというわけである。

 こういった悩みは96kHz/24bitで見事に解決する。面白いほど音が滑らかになって土岐麻子のヴォーカルも響きが増え艶が出て、彼女が持つ色気を感じる。聴き取れる音数は明確に増えて賑やかになり、音楽全体が明るくなった。問題だったハイハットも程よくいなされて小気味良くなり、音楽を前進させる力を生んでいる。そこへ乗るアンビエントを担うストリングスのハーモニーが実に心地良い。楽曲の前向きな曲調と合うのは間違いなくハイレゾだ。

Image from Amazon.co.jp
「きんモザ」で有名になった「Your Voice」が収録されている、中塚武の「GIRLS & BOYS」。余談だがこのアルバムには「北の国から」のサンババーションが収録されているが、これはどう聴いても“南の国から”だと感じるのは僕だけだろうか……?

クリストファー・ティンによる新旧“廃人のテーマ”をハイレゾにしてみた

 ハイレゾ化できてうれしいのは古い音源だけではない。僕がどうしてもハイレゾ化したかった音源のひとつが、音楽家クリストファー・ティンが手がける「Sogno di Volare」だ。人類史をテーマにしたストラテジーゲームの金字塔「Civilization」シリーズ最新作のテーマ曲で、英国ロイヤル・フィルハーモニックオーケストラの演奏をバックに、レオナルド・ダ・ヴィンチが認めた大空を飛翔する憧れの詩をコーラスが歌い上げる壮大な楽曲である。

 コレの音源は作曲者のホームページでダウンロード販売している44.1kHz/16bitのFLACファイル。残念ながら大スケールを表現する響きが足りず「もっと響くはず」と思わせる音だ。

 ところが96kHz/24bitに変換すると激変。1音目からヴァイオリンの細かいパッセージの鳴り方が違う。響きが豊かになってコーラスはゴージャスに、ハープは存在感が増し、低音はコシが増している。ストリングセッションの響きは芯がしっかりしていて、モゴモゴしていたチェロなどの刻みもしっかり聴き取れる。お粗末だった木管セクションのワンポイントもグッと楽器の存在感が出ていて、ロングトーンによいアクセントを加えてくれる。オーケストラがちゃんとアンサンブルしていて、音から音楽になる、そんな決定的な違いを感じた。

curiosound
万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの遺した大空へのあこがれに曲を乗せた「Sogno di Volare」。Civilization VIの登場時は日本文明の指導者がまさかの北条時宗ということで、かなり話題になった

 こうなるとクリストファー・ティン氏の出世作でもある「Baba Yetu」も聴きたくなる。多くの人を夜のない世界へ引き込んだ罪深い傑作ゲームのオープニングテーマで、ゲーム音楽として初めてグラミー賞を受賞したことでも有名だ。聖書の一節をスワヒリ語に翻訳した歌詞をゴスペルで歌い上げるという文化の多様性を体現した曲で、今では合唱曲として米国で受け入れられ、国連本部会議場では合唱が披露されている。

 音源は先ほどと同じく、作者のサイトでダウンロード販売している44.1kHz/16bitのFLACファイル。素の状態ではゴスペルのベースの支えやテノールのインパクトなどが少々薄く、盛り上がりに欠ける。声の伸びがイマイチで、Sogno di Volareでも感じた響き不足がまたまた顔を出し、抉り込むような音の力がない。これでは楽曲のテーマである雄大さが今ひとつ伝わりきらずもったいない。

 そんなモヤモヤを抱えながら96kHz/24bitに変換してみると、こちらもやはり激変した。楽器も声も実態感がまるで違って音に力があり「これぞハイレゾ」と手をたたきたくなる。なんと言っても音の粒立ちが良く、マラカスやカサバ、コンガなどのラテンパーカッションの響きが弾ける。ゴスペルは雄大でバックのコーラスも演奏に埋もれることはない。各楽器とヴォーカルがつぶし合うことなく音楽を創っていて、どのパートも雑音になりはしない。

 また、ビット数の増加でダイナミックレンジがより細かくなった効果だろうか、音が大きくなってもうるさくならず、小さくなってもしっかり細部のシェイプがしっかりしている。ピアニッシモからフォルテッシモまで、低音から高音まで聴き取りやすく、フルートやオーボエの哀愁を誘うフレージングに心をつかまれる。総じて44.1kHz/16bitよりも気持ちボリュームを上げるのが楽しい、これがハイレゾ化による大きな恩恵だと感じた。

curiosound
クリストファー・ティンの名を一躍有名にした「Baba Yetu」が収録されている「CALLING ALL DAWNS」。プレイヤーの間では“廃人のテーマ”としてすっかり定着した(?)

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