2017年03月14日13時00分

麻倉×寺下対談、DSDとPCMで曲の表現に差はでるか?

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ホールで生の演奏に触れるより、音のディティールに迫れるかも

麻倉 記録する器の違いで、CDは少しドライというかデッドな場所で聴いている感じがあります。ハイレゾは響きが豊かで、ピアノもリッチですよね。ホールで演奏を聴くのともまた違う。ホールでは壁に音が反響し、混然一体となって迫ってくる感じがあります。ここまで細かく分析的に聴くことはできないのでは?

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寺下 ある意味、贅沢だし、楽しいですね。リニアPCMとDSDの音の違いも面白い。ピチカートなどの音の立ち上がりとか、躍動感みたいなものがすごく出ますね。少しびっくりしました。

麻倉 生々しいですね。カラフルな色彩感があって、2曲目のファリアのようにスペイン系の曲なんかは赤のフラメンコのイメージが色濃く出てくる。

寺下 2曲目についてはDSDのほうが好きかもしれません。ピチカートやスピカートといった奏法の違いも際立ちますし、平たんにならず立体感が出ています。

麻倉 抑揚があって、音の表面も波立っているようです。

寺下 演奏家として聴くと、こういう抑揚が欲しいと思いますし、私自身、線の細い音はあまり好きではありません。より倍音が鳴ってふくよかな音になるように心がけています。音を鳴らし、つぶさないように、沈み込ませないようにしています。弓の弦の押さえ方にもコツがあって、プレスしすぎると音が振動しなくなるので、強く押さえても弦が幅広く振動するように弾くんですね。ハイレゾの倍音は不可聴域だから意味がないなんて意見もありますが、普段の練習でもできることならそういう音を聴きわけるようになりたいと思っています。普段から聴こうと思っているのといないのでは、音に対する感じ方も変わるのではないでしょうか。

麻倉 前作の『AVE MARIA』から2年が経って、寺下さん自体の演奏にも個性や持ち味が出てきましたね。細くストレートな印象だった音が太くなり、抑揚もついてきました。表現力の成長を感じました。前作はフラットな感じでしたが、今作では単に伸ばす音でもそこにゆらぎやニュアンスがあるのを感じました。特にハイレゾではそう感じる。事前のメモには「華麗で、伸びやか。スペインの情熱と叙情が麗しい。音色がカラフルで、ヴァイオリンから赤青緑の色素が勢いよく飛び出すようなイメージだ。G線の偉容さ、E線の華麗な装飾感が、スペインっぽい」とあります。

寺下 演奏の際、一番大事にしているのが音色ですし、そこにこだわりがあります。前作の録音は2014年だったと思いますが、この2年間、常に練習を続けてきましたので、成長したと言われることは素直に嬉しいです。

麻倉 特に3曲目のエンリコ・モリコーネ『ニュー・シネマ・パラダイス』で、音と音の切り替わりのタイミングが印象的でした。フレーズが切り替わる際にも、前の音を残しながら滑らかにつながり、音が動いていく感じがありました。

寺下 モリコーネの曲はすごく好きですね。何を聴いても泣けてしまう。

麻倉 哀愁というかね。

寺下 天使の世界のような、少し違った場所に行く感覚があるんです。

(CD・ハイレゾの順に試聴)

麻倉 試聴している際に、ちょっとお笑いになっていましたが

寺下 いえ。かなり自分の息の音が入っていたので、それが気になってしまいました。

麻倉 映画の感情というか思いがよくのった演奏でした。ハイレゾになったとたん、感情が堰を切ったようにブレイクする感覚がありますね。

寺下 なんだろうな。ハイレゾになると、感情の見え方がちょっと違ってくる感じがありますね。ニュー・シネマ・パラダイスという作品は、恋愛ものではなく、人と人の愛をテーマにした曲なのですが、この曲はとてもロマンチックです。ラブストーリーのようにも思えます。私の中では美しい恋愛のイメージを持って弾いていますね。

麻倉 ピアノの音もいい。

寺下 いいですね。本当に素晴らしいピアニストです。須関裕子さん。

(DSD版を試聴)

寺下 なるほど。これもいいですね! 少し明るい感じがするのはなぜでしょう。きらびやかさも感じるし。

麻倉 それは一つのキーワードですね。きらびやかさ。音の粒がはじけてホールに広がっていく。そんな音場のドラマがDSDにはある。

寺下 一方でPCMには音の深さがありました。

麻倉 ふたつを替えて聴くのはいいことなんです。寺下さんの世界が、より立体的になるというか、同じ物体でも光の当て方で表情が変わるような感じがします。ハイレゾ音源はだいぶ増えてきましたが、DSDとリニアPCMの両方を用意している音源はまだまだ多くありません。DSDの録音はPCMに比べて編集がしにくい面があり、録音に手がかかるんです。

 ニュー・シネマ・パラダイスについて、私の感想です。「涙が出てくるほど情感豊かなヴァイオリンだ。名作映画のシーンの数々が思わず目に浮かんでくる。寺下は、エンリオ・モリコーネのこの名曲に深く共感して演奏しているに違いないと思わせられる、慈しみながに紡がれる旋律の美しいこと。レガートな運指が本曲の世界観を表しているようだ。麗しさとロマンティックさと、豊かな情感が心に染みいる。ピアノの歌わせ方も素晴らしい」

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