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「iPhoneでは弱かったこと」を強化したのが「iPhone 7」

2016年09月08日 14時51分更新

 日本時間9月8日、アップルのスペシャルイベントが開催された。今回ハンズオンで実際にiPhone 7に触れた、フリージャーナリストの西田 宗千佳さんからコメントが届いたのでご紹介する。

iPhone 7から見える「守るアップル」と「攻めるアップル」

 「iPhoneでは弱かったこと」を強化したのが「iPhone 7」、一言で言えばそういうことだと思う。日本におけるFeliCa対応も、ステレオスピーカーの搭載も、防水も、Androidではよくあるものだ。だが、おそらく重要なのは「iPhoneでそれができること」なのだろう。もはやiPhoneは世界で10億台を売り、日本で半分のシェアを持つ、堂々たる横綱プロダクトだ。iPhoneを選んでいる人が次にもiPhoneを選んでくれること、本当はiPhoneが欲しかったけれどなにかの理由で他を選んだ人を引きつけることがまず重要、と、アップルは考えているのだ。それを保守的と笑うなかれ。アップルはもはや「守る」立場なのだから。

 全世界で同じSKUを採用することにこだわった企業が、FeliCa対応のために日本でだけ独自のモデルを用意したのは、なにがあっても日本の顧客を失いたくない、ということなのだろう。長く交渉してきた(おそらくはApple Payのビジネスがスタートした頃から)結果が今回につながった、とはいうものの、今の日本市場におけるアップルの位置付けにはフィットしている。

 一方で、攻める所は攻めている。カメラは、ハンズオンで触っただけでも大幅な改善が感じられる。「ソフトでいい絵を撮るカメラ」を標榜してきたiPhoneのやり方を進化させた、アグレッシブな作りのカメラだ。ライバルメーカーが対抗するのは大変だろう。

 逆に、コーナーギリギリのボールに思えるのが、ヘッドホン端子の廃止だ。パーツコストを下げた上で他のパーツ、例えばバッテリーに回すための策だろうが、薄くなっていないボディでは、ユーザーは納得しづらい。だがそれでも、「ワイヤレスの快適さ」の未来へと賭けた、ということだ。これもまた、「数で押す」会社でなければ採れない策である。

 2016年上半期、アメリカでは別売ヘッドホンのうち54%がBuletoothのワイヤレス型になった(調査会社NPD調べ)。そして、そのトップシェアはアップル傘下のBeats。そこまで見ると、「ワイヤレスへの移行」も、ユーザーの支持を受けつつ「数で押す」やり方なのだ。少々アメリカを向きすぎている、とは思うが。


西田 宗千佳(にしだ むねちか)

西田 宗千佳氏

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。


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